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国外追放されたので『魔王』に成った  作者: くろふゆ
第四章 魔の森の王
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034話 変わり果てた王子の心

「だからです。私はあなたのことを慕っていた。だから、私がこの魔の森に派遣されたのかもしれません。ヒツギ様の妹君はあなたの生存を心の底から信じており、あなたがここにいることをついには突き止めた。モニカ様はヒツギ様の帰りを今も待っております」

「……ありえない。俺は自らの居場所を探られないように、常に闇属性の《結界術》を用いている。…………あのブラコンめ。どうやって、俺の所在を突き止めた?」


「モニカ様が十五歳のときに目覚めた固有魔術は《探知魔術》。対象の私物、もしくは体の一部を持っていれば、それに対する理解や思い入れが深いほど、正確な位置情報と保有魔素のおおよその量が把握できる。しかし、二年前とはヒツギ様の魔素の量と質が大幅に、いえ異常なほど変質していたため、本人かどうかの確信は持てなかったと……」

「そうか。あいつの誕生日は遅い。固有魔術が発言してからあまり時間は経っていないな。もう己のものにしたか。さすがだな、我が賢しき妹、アーガス王国第一王女モニカ」


 ヒツギには一つ年下の妹、モニカ・フォン・アーガスがいる。


 ヒツギと違い、母親であるアーガス王国王妃、へレス・フォン・アーガスそっくりの金髪碧眼で、髪は長く、昔から三つ編みのハーフアップにしている少女だ。闇属性と土属性の魔術が得意なヒツギに対し、モニカは光属性の魔術を極めていた。その一点においては兄であるヒツギをすら凌駕していた。単純に属性の適応率の問題ではあるが。


「そのモニカ様がピンチなのです。現在、アーガス王国はカルトガルド公国との国境付近で戦争をもう三週間近く続けており、多くの兵が疲弊しています。この危機に珍しくアーガス王国第一王子ベントレー様も出陣なされているのですが、そろそろ限界です」


「ふん、ベントレーなど死んでも構わんが、モニカが死ぬと分かっていて、それを無視することはできんな。アーガス王国はこれ以上北に兵力を割きすぎると、南の《ハイスヘイム共和国》に隙をつかれる。ただでさえ、アーガス王国のさらに東には《ヴィルヴィ山脈》を挟んで軍事国家《ドルムント帝国》があるのだからな。これ以上、戦力の一点集中はできない。だから多少は友好関係にある、我々、《ミッドヴァルト》に協力を求めてきたといったところか」

「……はい、お察しの通りです」


「《束縛する鎖レストレイントチェーン》」


 ヒツギの両手のひらから大量の黒い鎖が出てきて、マルスの体を縛り付ける。マルスの目の前に、ヒツギが瞬間移動で現れた。闇属性の空間移動系魔術、《ショートジャンプ》。


「今日は仮面をつけていないんだ。素顔を見られた以上、生きて帰すわけがないだろう」


 怖気が駆け抜ける。ヒツギの背後に、無限に呻く亡者の群れが見えた気がした。


(こ、声が……出ない。息が……苦しい)


「支配者が行うのは、戦争などではなく、ただの一方的な蹂躙になるが?」


 ヒツギの鋭い双眸に射抜かれた途端、強烈なプレッシャーが体の自由を奪う。


「お前からすべての情報を抜き取る。判断を下すのはその後だ。なぁに、心配するな」


 手も足も出ないマルスに、黒い霧のようなオーラを纏ったヒツギが両手のひらを向ける。


「《審判の目ジャッジメントアイ》。お前の思考と記憶を読み取る」


 ヒツギの両手のひらに一つずつ、不気味な黒い大きな目玉がぎょろりと浮かぶ。


「ああ、そうだ。すべての情報を手に入れれば、マルス――お前は用済みだ。なるべく痛みのないよう、楽に殺して俺のアンデッドにしてやる。精鋭の王国兵だ、少しは役に立つだろう。死後もこの俺に仕えられることを、誇りに思うがいい」


 ヒツギの瞳はなんの感情も窺わせることのない泥のようで、彼はただただ無表情に、苦悶するマルスの姿を見下ろしていた。その声を最後に、マルスの意識は深い闇へと飲み込まれ、二度と自我が目覚めることはなかった。

第四章完結。

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