032話 屍術師の問い
「そこのお前、お前は俺を愛しているか?」
「……はい?」
ヒツギに指を差されたウィルは、意味が分からないという呆けた声を出す。
「二度も言わすな。お前は俺を愛しているか?」
「そ、それは……。……そんな、そんなわけないでしょう! あなたはすでにアーガス王国を追放された身。その上、こんな得体の知れない魔物や亜人を率いて、この魔の森で何をしているのですか! 今、アーガス王国は北のカルトガルド公国と戦争を――」
「もういい、黙れ。目障りだ。穿て! 《グラウンドスピアー》」
ウィルの背後の地面から岩の槍が生まれ、勢いよくウィルの心臓を串刺しにする。
「がっ……! な、なんで……ヒツギ、さま……あなたは……こんな、ところで……」
「お前如きに、俺の人生を否定する権利はない」
胸から鮮血を噴き出したウィルが、その場にうずくまり、死に絶える。
それをすぐ側で見ていたエマは半狂乱になり、足をガクガクと震わせながら後退した。
「どうした? アーガス王国兵、お前たちの力はその程度か? だとしたら失望だな。だが、お前たちを寄越した奴も、お前たちがここで死ぬことを承知の上で選別したはずだ」
背後には圧倒的な存在感を誇る巨竜、タイラントレックスが退路を塞いでいる。
「次はお前だ。そこの若い女兵士。お前は俺を愛しているか?」
「い……嫌ぁあああ、嫌だ! まだ死にたくない! 私はまだ死にたくないっ!」
あろうことか、エマは右手のひらをヒツギに向ける。
「やめろ、エマっ!」
「《ファイアボール》!」
マルスの静止の声を無視し、エマは火属性魔術の火球を放った。
「ふっ……《シャドウボール》」
ヒツギの指先から出た小さな紫黒色の球体が、エマの《ファイアボール》に直撃する。
結果は相殺。粉塵が晴れた後のヒツギは、眉一つ動かしていなかった。
「ほう、お前は火属性に適応がある魔術師か」
「ダメだ……これじゃあ効かない。なら、これで! 《ブレイズボルト》ッ!」
エマが持ち得る最強の魔術。火属性をベースに、雷を加えた二属性上級魔術。
「俺は火属性魔術の適応率が低いのだがな。まぁいい、焼き尽くせ、《インフェルノ》」
今度はヒツギが右手のひらから大火球を放つ。
やがて二つのエネルギーは衝突。周囲の木々を吹き飛ばす威力だった。
しかし、エマの渾身の《ブレイズボルト》は、ヒツギの手心を加えた《インフェルノ》に焼き尽くされ、そのままエマの体を高温の塊が包み込んだ。
「ぎ、ぎゃあぁあああぁあッ! あ、あああ……ああッ! あつ、熱いッ! がっ、た、たすけ、て。……お願い、殺さないでぇえ! なんでもするから! お願いしまっ――」
「うるさい」
怠そうにヒツギが右腕を振り下ろす。その手のひらから先程とは桁違いのサイズを誇る紫黒色の球体が生まれ、エマの全身を一瞬にして骨も残さず消し飛ばした。




