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国外追放されたので『魔王』に成った  作者: くろふゆ
第二章 異世界に転生、アーガス王国での日々
13/38

013話 三年後、『師』VS『弟』

 ◇ ◇ ◇ 


 あれから、およそ三年の歳月が過ぎた。


「――って時間飛び過ぎでしょ! 私と若様のイチャイチャシーンをカットするな!」


 三日後、ヒツギはとある王立魔術学園に、筆記、実技ともに『首席』で入学することが決まっている。というか、地の文に突っ込むな、変態。……自由すぎるだろ。


「こらーっ! 無視ですかぁ? そうですか、無視ですかもうっ!」


 三年経ったものは経ったのだから仕方ない。時の流れとは無常なのだ。


 でもまあ、イチャイチャしていたことを否定はしない。若干、一方的ではあったが。


 何度かヒルデの部屋に通ったが、こう見えて、彼女の部屋は滅茶苦茶いい匂いがする。アロマとかではなく、ヒルデ自身の、甘い……女の香り立つ匂いがするのだ。


「あんなにあどけなく可愛かった若様も、今ではすっかり色っぽくなってしまって……清楚な中にも隠しきれない香しい色気……開きかけの蕾のようです。私が剥いて差し上げましょうか? 剥いて愛でて散らしてしまいたいです」

「……はぁ、あなたはまったく変わりませんね、先生」


 今、ヒツギの対面にいるのは、ヒルデガルド・エーベルだ。

 下心に満ち満ちた、いつもの下卑た笑みを浮かべている。相変わらず気持ちが悪い。

 ちなみに未婚。というか、彼氏すらいない。いたことがない。


「ホント、若様ってエロい躰していますよね。なんかいい匂いするし」

「おっさんみたいなこと言わないでください。気持ち悪いです」

「小さくてぷりっとしたお耳。柔らかそうな唇……」

「ヒルデ、通報するぞ」


 ヒルデはこの三年間、散々ヒツギにセクハラを繰り返しては殴られていた。本当に懲りない奴だ。そのせいで魔術師のくせにヒルデの耐久力は異常に高い。次第に《勁力》の加わった打撃にすら耐性がついてきた。この変態は本当に恐ろしい。いろんな意味で。


 気安く頭を撫でる。勝手に髪を触って匂いを嗅ぐ。唐突なハグに頬擦り。耳かきと称してセクハラ。マッサージと称してセクハラ。脱衣所のパンツを盗む。風呂場に乱入。寝室に侵入からの夜這い。勝手に添い寝。エトセトラ、エトセトラ。やりたい放題やってきた。


 なぜ、こいつは逮捕されないのだろうか? 本気で疑問だ。


「それでは、今日は一時的な卒業式を執り行いたいと思います。俗にいう決闘というやつですね。このヒルデちゃんから一本取れれば免許皆伝。晴れて我が同士、選ばれし本物の魔術師となるのです」

「この日のために、とっておきの切り札を用意してきました。今日は俺が先生に授業をして差し上げます」

「へぇ、それは楽しみですね」


 ヒルデの笑みが深まる。普段のゲスな笑みではなく、闘志を滲ませたもの。


「魔術が絶対的な力だと思っているのなら、それは大きな勘違いですよ」

「それを仮にも魔術の『師』である私に言いますか。つけあがることと成長することは、別だということを教えて差し上げましょう」


 ヒルデはスッと眼鏡を知的に上げる。変態のくせに生意気だ。


「ついでに若様の私に対する負のイメージを360度ひっくり返してやるぜぇえい!」


 ドヤ顔のお手本のように、彼女が豊満な胸を張る。ぷるんっと悩まし気に揺れた。


「おい、一周回って元の場所に戻ってきてんぞ、変態教師」


 しかし、おふざけもここまで。次第に二人の間で魔力の火花が散る。


『師』と『弟』の本気の闘い。静かに熱く対峙する両者。


 周りに被害をもたらせないため、今日は王城から離れた誰もいない岩場に来ている。

 だから、これから起こる戦いは、一切の手加減なしだ。


「では、決着方法は、相手に大きな一撃を入れるか、気を失わせるか、参ったと言わせれば勝ちということでよろしいですね、若様」

「いいでしょう。乗った」

「互いに高め合える、誇りのある戦いであらんことを」


 そう言って、ヒルデはヒツギに背を向けて歩き出す。自分もそれにならって反対側へと足を進めた。そしてどちらともなく両者が同時に振り返る。三年間で培った呼吸はバッチリだった。二人は互いのことを深く理解し合っている。だからこそ、この決闘でまだ見ぬ魅力を互いに披露しようとする。それが一定の域を超えた《魔術師》の性。


「いざ尋常に――――――ッッ!」

「――――――勝負です、若様!」


 開幕速攻。ヒツギは中国拳法の秘門歩法――《箭疾歩せんしっぽ》で一気に間合いを詰める。


「やはり、接近戦で来ましたか。見え見えですよ」


 ヒルデが薄く笑う。しかしその予測はこちらも予測していたことだ。


「《音越え》」


 ヒツギは《肉体機能増幅フィジカルエンチャント》によって倍加した瞬足移動で、ヒルデとの距離をゼロにする。


「甘いですよ、《空間転移シフト》」


 その寸前、ヒルデが高度な無属性魔術で宙に飛ぶ。それをヒツギはジャンプで追い、


「《空踏からふみ》」


 虚空を空中蹴りでさらに上昇。ヒルデが目を見開く。


六華剛極りっかごうごく! 《天破星砕てんぱほしくだき》」


 力任せの強烈な殴打が炸裂。だが、ヒルデは瞬時に多重魔術障壁を張って防いでいた。


「やられたらやり返す、三倍返しです! 《ブースト》からの《水神拳》!」


 高密度な水を纏った、身体強化済みのヒルデの拳が、ヒツギの腹にめり込む。


「がっ……は……っ!」

「若様のおかげで、私も少しは肉弾戦もイケるようになったのですよ」


(過程はどうあれ、ヒルデと俺は、互いに高め合える存在だったということか)


 地に叩き付けられる前に受け身を取り、ヒツギはヒルデから距離を置いた。


 向こうは接近戦で来るのを読んでいる。だからというわけではないが、ここは中間距離での魔術戦に挑む。近距離での肉弾戦では、自分のほうがヒルデより強いのはすでに分かりきっている。彼女が見たいのは、距離を開けての、魔術師同士の魔術の撃ち合い。


 ヒツギのその技量。この三年でどれだけ成長したか。それを今から見せる。


「行くぞ、先生! 《シャドウボール》」

「その程度の魔術では、私には勝てませんよ! 《インフェルノ》」


 紫黒色の光球が、ヒルデの炎弾に吹き飛ばされる。火の粉がこちらまで飛んで来た。


 ヒルデが得意な闇属性と水属性だけでなく、火属性でもこの威力。


「チッ……なら、これで……捉えろ! 《千影手せんえいしゅ》」


 闇から生まれた、千本の影の手がヒルデに襲いかかる。

 しかし、ヒルデは空中でそれを巧みに躱しながら捌き、体勢を整えて次の術に移る。


「水光混合魔術! 《青の閃光アジュールフラッシュ》」


 蒼い煌めきが無数の影の手を消し飛ばし、強烈な光でヒツギの目がくらみ、一瞬意識を失いかける。たたらを踏んだところに反撃の一手が襲う。


「ふふのふ♪ 隙ありです☆ 《石弾ストーンショット》」


 速度重視の小魔術で、ヒツギの肩を石の砲弾が撃ち抜く。体勢が崩れたところを、


「これでお仕舞い! 《皇帝鮫エンペラーシャーク》」


 巨大な鮫型の蒼い魔素エネルギー弾が襲いかかる。絶体絶命のピンチ。だが、


「まだだ! 光を飲め――《ディストーション》!」


 強烈な魔力の放出で空間を歪ませる。ピンポイトでの魔術の無効化。


「いつの間に……そんな離れ業をやってのけるように! ……これが、これが切り札ですか。成長、しましたね」


 ヒルデが驚きに目を見張る。その後、感慨深く目を細め、笑みを浮かべた。

 範囲は狭いが、完全に魔術を打ち消したのだ。常識では考えられない大技である。


「それでも、この大規模魔術は打ち消せないでしょう。多少の怪我は覚悟してくださいね、若様! 砲火ほうか――《天火爆撃てんかばくげき》!」

「そちらこそ、しっかり守りを固めてくださいよ、先生。消し去れ! 《暗黒凶星ダークディザスター》」


 火属性の極大魔術と闇属性の極大魔術が衝突。大きな爆発が起こり、辺りの岩を破壊し削り吹き飛ばす。粉塵が濛々と立ち込め、付近の瓦礫すべてが粉々になり更地となった。

どうやら小説家になろうでは拙作は受けないようですね。

異世界転生ハイファンタジーでは、転生直後の話が1話、もしくは2話に、

そして主人公の隠された力などが遅くとも5話までには読者に提示されなければならないようです。現在の私の作風とは合わないと判断致しました。

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