95話 亀さん
魚人族を一声で止めたのは、ぱっと見亀だった。いや亀だ。髭を生やし杖をついて二本足で立っている亀だった。
「皆の者そやつらがどうこう言っている場合じゃないぞ??あれを見れ!!」
そう言って亀は、プルプル震える杖を魔人へと向けた。
「やはり貴様らが帝国の魔人をまた呼んだのか!!」
「ほぉ!!それはちがーうのぉ!!もちたちも魔人を止めるっ!!たぶんっ!!」
「やかましいっ!!とにかくシーチが今『海の神』と同化しはじめたのだ。ここであの忌まわしい魔人の足止めをしなければならぬっ!!」
そこにやっとアピスとレオグがたどり着くのだが、なにがなにやら。ユキツグとハクリの隣へと合流した。
「も、もっちーなにがどうなってるんじゃ?」
「んっとねーあの亀さんが、魔人が来てるからって魚人さんたちを止めてくれたのだけども。シーチが神様と合体中だからどうのこうのーって。」
レオグは頭をボリボリ描いて聞いている。ユキツグは戦闘態勢が解除された魚人族を未だ警戒するように構えている。
「おぬしら!!帝国の者でないならば、あの魔人を止める時間稼ぎを手伝ってくれ!!」
「いゃいゃ!!亀さんっ!!シーチは『海の神』を使うと死んでしまうって本当なのかえ!?」
「ぐっ…。」
アピスの放った質問に、取り囲んでいた魚人たちが混乱しはじめた。どうやら皆が知っていることではなかったようだ。
「この娘の言葉に耳を貸すでない!!魚人の民!!この国を守るんだ!!おぬしらも余計なことは言わず魔人を止めるために力を貸さぬか!!」
「ええいっ!知ったことかぁ!!拙者はぁぁぁあああ!!サケ殿をシーチ殿の元へと送り届けるまでっ!!どけぇぇえいっ!!」
話の着地点がないまま、ユキツグがなにもかも切り裂くように言い放ち神殿へと走り出す。
「なっ!!おい!!まてい!!」
亀も魚人たちも『魔人』やら『シーチの死』やらで混乱して立ち往生している。
「おいっ!!アピス、ハクリ!!わからんが今しかない!!ユキツグおっかけて乗り込むぞ!!」
「ほぉぉ!!」
「んぁぁあ!!」