87話 コーンバター
魚人族の彼女の名前は、『シーチ』という。そして倒れている彼は、『サケ』という名前だそうだ。
「でっきたぁ!!コーンバタァ!!」
『シーチ』の話を聞いているうちに、ハクリが料理ができたとニコニコしながら運んできた。作った料理はとてもとてもシンプルなもので、コーンをバターで炒めただけのものだった。
「ワシそれ好きじゃ~!!」
「これをのぉ。。。パンにのっける!!」
「なんじゃって!!やったことないのぉ!!」
『シーチ』の話などそっちのけになってしまった。しかし駆け落ちってなんだろうか。パンにのっけたコーンバターを頬張りながら考えていた。
「うまぁ!!これうまぁ!!」
「だろぉぅ??はっはっは!!」
「シーチさんよぉ。大体話はわかったんだが。。。おそらく呪術がかけられている。」
「まさか!!そんな。。。外へ出られないのですね?」
「あぁ。。。そうだ。」
レオグに『呪術』のことを明かされてシーチの明るかった表情が一気に暗くなる。なにかを考えているようだが、申し訳なさそうに『サケ』へと視線を落としていた。
「お二人さんはなにかしたのか?オレの考えだと、二人のうちどちらかが呪術をかけられている。」
「。。。恐らくですが私がかけられているのだと思います。」
「なにか心あたりがあるんだな。。」
『シーチ』は、また考えこむようにして『サケ』を見つめる。
「んおっ!!もっちー!!コーンが鼻についておるじゃ!!」
「えっ!!どこどこ??アピちゃん!!どこどこ!!」
「鼻のあたまじゃ!!」
「えっ!!」
欲張りにも両手にパンを持っているハクリが鼻のあたまを見ようとして、より目になっていたのでアピスはおかしくてお腹を抱えて笑ってしまった。
「ひどいのぉ!!アピちゃ~ん!!」
「ごめんのぉ!!」
そんなやりとりを見ていたシーチがクスクスと笑った後になにかを決心したようだった。