86話 火がないっ!!
「ほぉ…。なんで呪術なんてかけたんだろぉね!!ってゆーか誰がかけたのだろぅ。」
ハクリの言うとおりだ、自分達はただ【カイダル】へ行きたいだけなのに。
「なんか変じゃのぉ〜。通したくないのなら、ワシなら入口を塞いじゃうのぉ!!」
「もちも〜!!なんで出られないような呪術なんてかけるんだろぉね!」
「ふむ。入って来る者達へではなく。誰かを外へ出したくないんじゃござらぬか?」
「「あっ!!」」
「この二人を出さない為の呪術なら納得いくな。」
まだ意識の戻らない二人の魚人族はレオグに担がれたままだった。
このまま歩いても元の場所へと戻ってきてしまうのなら二人が目を覚ますのを待とうということになり、少し開けた場所で休憩をとることにした。
レオグが背負っているバックから色々な物が出てきて、ハクリと一緒になって覗き込んでいた。
「ほぉっ!!アピちゃん!また出てくるよっ!!」
「なぬっ!!なんじゃ!!次はなんじゃっ!!」
ほっぺを押し付け合いながらグイグイとやりあっている。
レオグが一通り出し終えた頃にはそこで3日は寝泊まりできそうな感じになっていた。地面にはマットが引かれ、鍋やらフライパンやらもあって食材も結構ある。
ハクリは、もうレオグがバックから物を出さないとわかると少し残念そうにしていたが、今度は食材を手にしてなにを作ろうか考えているようだった。
「この二人になにがあるんじゃろぉ…。まだちゃんと手を繋いでおる…。」
寝かされた二人は気を失っていても手を繋いだままだ。
「アピちゃん!!みてみてっ!!バタァだよぉ!!」
「バタァ!!」
バターの話題をハクリから振られて一気にお腹が減ってきてしまった。バターを使った料理は本当な香りもいいし、味もいい。
「もうお腹減ってしまったのぉ…。」
「ハッハッハ!!もちがバタァでなにか作るのぉ!!」
「んったく、お前達はどこでもおもしれーなー!!ガハハ!!」
状況は変わらないし、抜け出せる見込みのない呪術の中なのだ。確かにそうかもな、とアピスも可笑しくなってきてしまった。
「アピちゃん!!火がないっ!!」
ハクリがフライパンを持って右往左往している。
そこへレオグがランタンを集めて蓋を取った。
「こいつで調理してくれや。あんまり火力は強くねぇけどな。」
「ほぉ!!レオグん凄いのぉ!」
ランタンで作ったコンロにフライパンをのせてハクリは別の作業に入ったようだ。
「ん…。んんんっ!?…。あなた方は!!」
声を聞くに女性のようだ。
「んおっ!!レオグ〜!!魚人さん目を覚ましたよ!!」
「おう!!よかったなぁ〜!俺らは【カイダル】へ向かうとこなんだけどよ?お前さん達は何処へ向かってたんだ?」
「えっ?【カイダル】へですか…。私達は…。外へ向かってました。」
「外??」
「はい。私達は結ばれることを望んで外の世界へと逃げようとしていたのですが…。」
「出れなかったんだな…。」
「そうです!!歩いても歩いても…。でもっあなた方が来たといことは出口が近いのですか??」
そう言うと彼女はパッと明るい表情になった。とてもキレイで暗い洞窟が明るく見えそうなほどだった。