83話 二人の手当
「こいつらぁ…魚人族だな…。」
レオグが倒れた二人の側でしゃがみ、そう言った。
近づいていくと外見はあまり人と変わらないが耳と手がヒレのようになっていて少し鱗が見える。
「もっと魚なのかと思ってたのぉ…。」
「ハッハッハ!!魚人族は初めてみるのか?まぁ…そうだよな。こいつらぁ街なんかにゃ滅多に顔出さない奴らだからなぁ…。」
レオグはそう言いながら倒れた二人の具合を見ていた。
「ほぉ…。アピちゃん。この魚人さんカップルかのぉ?」
よく見ると手を繋いでいるし、短髪と長髪の二人なのできっとそうかもしれない。
しかし二人ともキレイな顔立ちでどちらも女性と言われても納得いくほどだった。
でもどうしてここまで来たのだろう。
「レオグ〜。魚人族って街に滅多に出ないんじゃろう?」
「おうそうだ。…。ん〜ユキツグー!!薬あっただろう?2つくらい持ってきてくれや〜!」
「その魚人族がこの入口に向かって歩いてきて…。倒れてしまうって…。」
「ほぉ!!もち。わかったよ!!…。」
「こいつらの里でなにかあったのかもな…。」
ハクリはレオグに先を言われて口を開けたまま何度もコクコクと頷いた。
ユキツグが薬をレオグに手渡すと、それを手際よく魚人族二人へと塗っていく。
「魚人族の噂があったけども、魚人族って怖い種族なの??手当しておるけども…。大丈夫なのじゃよね?」
「ん〜…。そうだなぁ…。多種族とあまり仲が良くないというか、仲よくしない感じの種族だな…。よしっできたぜ。」
流石もと冒険者、手際良く手当を済ませるとレオグは立ち上がりなにか考えているようだ。
「ほぉ〜。何処かで休んでゆく??」
このまま二人を放置するのは、アピスも気が引けるのだが、二人が逃げて来た洞窟の中へと進む不安が拭いきれずにいた。
それもこれも『氣』も『魔法』も使えないからかもしれないけれど。
「進むぞ。」
「んがぁっ!?」
レオグが二人を担ぐと暗い洞窟へと進んで行ってしまう。
「ほぉ〜!!レオグん、力もっち〜!!」
「ユキツグ…。ワシ不安じゃ。」
「…。アピス殿。」
ユキツグが頭を撫でてくれた。ちょっとビックリしたけれど落ちつく温かい手だった。
レオグはどうしてそこまで急ぐのか少し疑問にも思った。
きっと【帝国】の侵略となにか関係があるのか?あるとしたら【アストルム】は大丈夫なのか?セレンのことを思いつつユキツグと一緒にレオグとハクリの後を追うことにした。