77話 紫色の宝石
目を開けると真っ暗で何も見えない、まだ目を閉じているのかと不安になるほど暗い。たしか滝をドラゴンと一緒に落ちたような気がしたのだが、なぜ真っ暗なのかアピスは考えてみる。
「ん?手足が動く…。でも浮いてるのかの?」
水の中に似たような感覚がする。ひょっとして滝に落ちて溺れてしまって、死んでしまったのだろうか。
そんなことを考えていると、目の前に紫色の小さな光り輝くが見えた。その光は星の光に似ていて瞬いて見える。
「綺麗じゃの…。」
「ーーーー…。」
思わず言葉を口にした時に、返事が聞こえた気がしたのだが聞き取れない。もっと近づいてみようと泳ぐように光へと向かう。
「お〜い、なんか言ったのかの〜??」
「ーーーー…。」
返事ではない。なにかをずっと言葉にしているようだ。アピスは、光が手に届くところまで近づくことができたのだが、その声は聞き取れない。
「むむむ。なんじゃ!!聞こえぬぞ〜!?」
「ーーーーー…。」
光を手のひらに乗せ、耳を近づけても聞こえない。この暗闇も光も聞き取れない言葉も何一つ分からないままで、アピスは段々泣きそうになってきた。
「もっち〜…。レオグ〜。ユキツグ〜。なんじゃ〜ここ〜…。」
「「助けて!!」」
光の言葉とアピスの言葉が重なり、光はアピスの胸元で膨れ上がった。
「ぬぁぁあ!?」
膨れ上がった光の眩しさに目を瞑り、なにがあったのか恐る恐る目を開けると、そこは船の部屋の一室だった。
「んえ?夢??…。ん…。汗びしょだの…。」
相当うなされていたのか、メイド服も部屋のベッドも汗でびっしょりと濡れてしまっていた。
とりあえず着替えることにして服を脱ぎ、下着に手をかけたときだった。
「ん…??なんじゃ…。え??」
胸に紫色の綺麗な宝石が着いている。
「いやいやいや…。こんなネックレス持ってたかの…??それとも誰かがくれたのかの??…。カリカリ…。」
取れない。ネックレスではなく体に半分埋まっているようだ。
「な…。なんじゃこれぇぇええ!!!!」
アピスが思わず声を荒げると、レオグが部屋の扉をまるで蹴破るようにして入ってきた。
「アピス!!どうしたっ!!なにかあっ…。」
「レオグの変態がぁぁぁあああっ!!!!」
アピスは下着だけだったので、レオグを見た瞬間に飛び蹴りをくらわせていた。吹っ飛んだレオグの後にハクリがのぞき込んでいる。
「アピちゃん…。起きたのかの〜??怒っているの〜??」
「ふぅふぅふぅ…。いや…。ワシ下着だったからの…。」
胸の宝石のことを相談しようかとも思ったが、半分体に埋まっているのが気持ち悪くて、ハクリにも見せられなかった。
急ぐようにして、着替えを済ませるとハクリにどうなったのか聞きながら部屋を出る。
「もっちー。ワシら滝に落ちてどうなったんじゃ〜??」
「ほぉ!えとねー。もちもあんまり覚えてないのだっ!!気がついたらベッドでスヤァーだったよ!もうお日様登ってるし良い天気だよ〜!!」
「んがっ!…。ぐふっ!…。」
ハクリに引っ張られてレオグを踏んづけながら船外へ出ると、船は穏やかな川をゆっくりと進んでいて、振り返ってもあの滝は見えなかった。
「おお〜!!良い天気じゃのぉ〜!そいえば…。ドラゴンは、やられたのかの?」
「ドラゴン!!大魔法でどっかーんだものね!!どこにいったのかなぁ??」
「ドラゴン…。」
アピスは、胸の宝石が少し震えた気がして宝石を撫でるのだった。




