75話 夜と雨と濁流と…
「こいつがよ〜魔力でしか舵がとれねぇんだよ!!たのむわ!」
そういってレオグは、また船をバシバシ叩いている。渋々と船内へと入ると部屋がいくつかあって突き当りが操縦室となっていた。
「ここに座ればよいのかの??」
操縦室に入ると、椅子が5つあり先頭の椅子に腰掛けると、いくつか棒が飛び出していた。
「おう!そこのな?股の間の杖が操縦用の杖だ!それと椅子に着いてるベルトでちゃんと縛っておいてくれよ?」
棒だと思ったのは杖だったようで、これで船を操縦出来るようだった。
「ほぉ!レオグー!ベルトこうでよいの〜?」
「オッケーオッケー!ユキツグもいいか??」
「う…うむ…。」
「よっしゃ!行くか!!」
レオグも椅子へと腰掛けベルトを縛ると、アピスに頭の上にあるレバーを引いてくれと声を掛けた。
「ん…?これかの??引けばよいの??」
「思いっきり頼むぜ!」
レバーに手を掛け下へと思いっきり引っ張ると、そのままレバーは抜けてしまった。
「ん??抜けちゃっ…!!??」
「「!!!!???」」
「ひゃっほー!!!」
ガクっとした瞬間に船が落ちていく。椅子からお尻が浮いてベルトが体に食い込んで痛いし、お腹の辺りがキュ〜となる。ハクリが堪らず声をあげていた。
「ほぉおおおおおおおっ!!!」
「ぎゃぁぁぁあぁあ!!」
つられるようにアピスも悲鳴をあげた。ドラゴンに負けない声が出せたんじゃないかと思うくらいに驚いた。
川へと着水すると安心したような不安なようなで気が動転していた、頭の整理が着かない内にレオグが笑いながらアピスへと話かける。
「よっしゃ!杖に魔力を頼むぜ!こっからが本番だ!」
「ん…?んぁぁあい!」
アピスが杖を握り魔力を込めると、船の進路を灯りが照らした。夜に雨に増水した川の流れで、操縦室の窓から見える景色は、まともな視界がほぼない。
「ぎゃ〜!なんも見えぬよ〜!?」
「こいつは…。本当だな…。」
「うっぷ。拙者気分がすぐれぬ…。」
「ほぉ!!なになになになに??今川なの??」
もう訳がわからない内に船はどんどん流れていく。アピスはほとんど杖を握っているだけで、どう舵をきればいいかもさっぱりわからなかった。
「れーおーぐー!!なんとかしてじゃー!!」
「ガハハ!!なんともならねー!!」
「…。げふげふっ!!」
「ほあっ!!ユキツグが!!」
「ぎゃ〜!!」
操縦室は、お祭り騒ぎになりながら激しい川の流れによって上下左右、時々軽く浮きながら流れていくと突然視界が真っ赤になり景色がはっきりと見え始めた。
「次はなんじゃ〜!?見えるけど真っ赤じゃぞ〜!?」
「ほぉぉお!?」