73話 メイドの鍛冶屋の利益
両脇に並ぶ受付の中央にアーチが掛かっている。そこを4人は行き交う生徒を掻き分けてくぐっていく。するとそこに聞き覚えのある声が聞こえた。
「はーなーしーなーさーいー!!変態教師!」
「リアちゃんヌっ!!イァーーン!離すわけがナァアイだろう??マイハニィーっ!!君だけでドラゴン倒す、ナァーンテまだ…ゴフっ!!」
「なぁーらアンタが倒しなさいよっ!私の為に竜石くらい手に入れてみせなさいよっ!このっ!このっ!!」
「今っ!グハッ!!のは…!ガハッ!なかなかっ!!ンヒッ!気持ち良かったぁー!」
「変態!!早く離しなさいよ〜!!」
リアとシャギだ。リアはドラゴンを倒すつもりらしいがシャギが身をていして止めている、のだがリアは、シャギを引きずりながらこちらへと歩いて来ている。
「もーわかったからーっ!!倒しにいかないからー!離してーー!!」
「ナァーハッハッハッ!!もう離さないよ〜っ!リアちゃんヌっ!!」
「おい。シャギ。避難船1隻頼むわ。」
「ごふっ!!………。ん…。避難…船??」
リアに蹴りを食らわせられてやっと離れたシャギは、床にうつ伏せたままレオグに答えた。リアは4人をチラっと見ただけで生徒の中に混じっていった。
「ほれ。こんだけあれば1隻くらい良いだろ?」
レオグは、ジャリジャリと音のする大きめな袋をシャギの頭に乗せた。
「ん?…。ほほ〜!!流石レオォンッグ!これなら3隻くらい作れそうだよっ!それに考えたねー!今なら川も増水していて良いだろう。ウンッ!流石レオォンッグ。案内するよ?ナァーハッハッハッ!」
頭に乗せられた袋を開けて、シャギはケロっと案内まで買って出た。
『なんじゃ…。ゴールド好きなのかの…。』
それにしても、船3隻分のゴールドとはどれくらいなのかわからないが、レオグが大金を叩いたのだ。
「レオグ。ゴールドそんなに使って大丈夫なのかの?」
「お?アピス、そんなの気にすることねーぞ?お前達が働いてくれたからものすげー儲かったんだ。もう【獅子の鍛冶屋】じゃなくて、【メイドの鍛冶屋】っつーくらいにな!」
「ほぉ!!知らなかったのぉ!!流石アピちゃんっ!」
「いやいや…。もっちーもメイドじゃったろうに…。」
「あっ!そっかー!!デヘヘ!」
シャギに案内されて通路の突き当りまで進むと、綺麗な装飾の入った大きい扉をシャギが開けた。
「デカイな…。」
無口なユキツグがボソっと口にするほど大きい昇降機がそこにはあった。
「ナァァニセッ!避難する為の昇降機だーかーらーねっ!!それじゃー船は好きな物を選ぶといいよ!サァァ入りたまえ!」
4人は昇降機の中へ入ると、シャギが変な笑顔で手を振って扉を閉めた。ガゴッと大きい音がするとゆっくりと下へと下がって行く。
「しかし…。ここまでドラゴンの声が聞こえるの…。都市は大丈夫なのかの??」
「んー。デカイ見たいだしな。やっかいかもしれねーけど。都市には防御だけの大魔法しかない訳じゃねーからな!」
「ほぉ…。攻撃するの??」
「魔法学院の全員の魔力で攻撃するんだ。ドラゴンだろうとひとたまりもねーだろうよ?」
昇降機に吊るされたランタンの灯りが振動でユラユラと揺れていた。