70話 雨の中で
2人は店を出ると、ユキツグと出会った。これから【獅子の鍛冶屋】へと行くところだと言う。
「ワシらは、明日ワ国にゆくじゃ!」
「!!…。ふむ…。そうか。では、拙者も同行させてもらうとするかな。どうやらあまり平穏ではない話が都市の中で広まっているからな。」
「ほぉ!!ドラゴンのこと??」
「まぁそれも噂になっているし、お主らの国の戦況が良くないのだろう?その話題で宿も酒場も口論じみている。」
都市内でもアピス達が聞いた情報が広まっているようだ。都市の皆は避難をするのだろうか。ハクリと話をしているとユキツグが教えてくれた。
「いや、避難する住民は少ないようだ、魔法都市にも強い魔法使いはいるし、都市自体にもなにか防御策があるようだから。旅人や避難して来た人達がまた移動するような形になるようだぞ?」
「なるるる…。わかったじゃ!ちょっと文書鳥店へ急がないとならぬ!また後での〜ユキツグー!」
「ほぉ〜。あっ!待って〜アピちゃん!」
ユキツグに手を振り、広場を抜けていく。外灯がポツポツと光初めていた。
階段を降り、文書鳥店を目指す。
「ユキツグもワ国へゆくなら心強いの!!」
「もち。ユキツグにカタナ教えて貰おうかなー!」
「おぉ!よいのぉ!!ワシも教えて貰いたいー!!」
「えっ!アピちゃんには魔氣があるでわないか〜!!」
「そうじゃけども〜…。全然ダメダメじゃ〜!!」
文書鳥店の扉を開けると、ムーケが出迎えてくれた。相変わらず鳥が忙しなく飛び交っている。
「ホウ。よく来たね。今日も手紙の確認かい??」
「まぁワシには来てないと思うけど。この手紙をお願いしたいじゃ!」
「ホウ。では預かろう。」
「カルーナのセス宛て。でよい!」
「ホウ。承知した。」
「ムーケん!!ムーケんは避難するの??」
「いいえ、私はこの都市へ残って文書を管理運営しなければ。なにかと軍事的な面でも文書鳥は使われるからのでね。」
「でわ。しばらくお別れかのぉ…。魔法都市絶対守ってのぉ!!」
「任せたまえ。」
ムーケは、羽をバサバサさせて答えた。
「ホウ。雨のようだ。2人とも帰り道は気を付けて帰るのだぞ?」
「ありがとうじゃ!ムーケん!」
2人は店を後にして、階段を上がると雨が予想外に強く降っていた。風が周りの家の窓を揺らしてギシギシガタガタと音がなっている。それに加えて雷までピカっと光って、雷鳴が響いていた。急に天候が変わるのは珍しい。
「ギャー!!土砂降りじゃないかー!!」
「雷凄い!!ほぉ〜〜〜!!!風で飛べそう!はっはっは!!」
2人は、上層へ上がると土砂降りの雨の中を走り始めたのだが、なにやら空が時々、紫色に光っているのに気がついた。
「もっちー。空って紫に光ることある??」
「ん??ほぉ…。確かに光っている!!なんか綺麗だのぉ!!」
次の瞬間、雷鳴に混じって凄まじい音が聞こえた。それは生き物の声だと言うことだけわかったのだが、声の大きさが雷鳴に負けていなかった。
「なんじゃっ!なんの声じゃ!!」
アピス達は広場へと向かって走っている。時折眩しいほどの雷が空一面に広がり。同時に紫色に空が光る。
「ほぉ!!!!なんか心臓に悪いのぉ……。えっ!!アピちゃん…。アピちゃん!!」
ハクリが突然足を止めて空を指さしている。
「なんじゃ!!」
アピスがハクリの元へと引き返し、ハクリの指さした空を見た。
「え…。ほぉ…。ドラゴン…?」
「…。なっ…。なんじゃあれ…。」