64話 路面店のオススメ
翌日、午前中の仕事が一段落し昼食を済ませると、レオグから声をかけられた。
「そろそろゴーレムを倒す武器決めて準備してくれやー。」
「ほぉ!ん〜と…。」
「ワシは…。大剣にするじゃ!!」
「えっ!じゃ〜もちも!!」
家を出るときに、持つことが出来なかった大剣。『氣』を使えるようになって今ならちゃんと振れるし、デカイ敵にはデカイ武器。そんな考えで選ぶことにした。実際これでゴーレムが斬れるのかは、やってみなきゃわからない。
「おう。大剣だな!じゃーこいつと、こいつな!2人とも、『氣』を上手く武器だけに乗せられたら、50号でも斬れるはずだ。アピスは一回乗っけられたみてーだから、それを身につけな。まぁそれで一時的に体の『氣』がなくなるわけだから、色々と不便もある。その辺もちゃんと考えてな!」
「レオグー、50号で変わることとかないかえ?出来れば教えて欲しいじゃ。」
「う〜ん…。しょうがね〜。サービスだ!がはは!まれに丸いだけのゴーレムが出るらしい。玉だ玉。コイツは気をつけたほうがいいかもな!コアが表面に出てこねーんだ。んでもって、玉の中心にコアがないこともあるらしいぜ?」
「ほぉ…。ゴーレムんにも色々いるのだの…。」
「玉って腕も足もないのかの?」
「おう!転がってくる!!」
「なんか…。悪い予感しかしないの…。」
2人は、またメイド服に大剣という格好で店を出て昇降機へと向かう。昨日と同様に視線を集めながらになってうつむいて歩くアピスだが、ハクリはニコニコしながら歩いていた。
「アピちゃん!受付しよ??」
昇降機のところまで辿り着くと、受付で【獅子の鍛冶屋】の店員であることと、50号に挑むことを告げるとあっさりとネックレスを受け取ることが出来た。
「なんだか一回レオグに着いて来ただけなのに完全に覚えられてるの…。」
「はっはっは!アピちゃんカワヨイからの!」
「ないないないない。」
昇降機を降りると、魔法学院の生徒たちがまた西側に集まっていた。セレン達がいるか探してみたのだが見当たらない。
50号ゴーレムと戦える部屋は1番多く用意されていた。それに路面店が並んでいて飲み食いしている学院生徒も多かった。
「ほぉ!!なんか美味しそう…。いいの…。ジュルリ。」
「もっちーヨダレ垂れている!!」
「ほぉ…。ジュル。」
ハクリはやたらと路面店の料理が気になっている様子だった。50号ゴーレムの部屋の順番を待っている最中は魔法学院の生徒から声を掛けられたりもした。なんでメイド服?大剣重くないの?とか魔法使えるの?とか、などなど。ハクリはあまり質問に答えることなく、逆に路面店の美味しものを聞いて情報を集めていた。アピスが生徒達にゴーレムをどうやって倒しているのか聞こうとした時ちょうど案内係に呼ばれてしまった。
「はい。次の方どうぞー。お二人ですね?でわ50-5の部屋へお願い致します。」
「もっちー?行くよ〜??」
「ほぉ…。アピちゃん!絶対にモチモチスポンジケーキを食べよう!!ねっ!!」
「う…。うぬ。ゴーレム終わったらの!!」
ハクリは、いつになく気合いが入っている。アピスは昨日のゴーレムの硬さから50号がどのくらい硬いのか不安で仕方がなかった。