62話 レオグの剣と脇差し
郊外の森の中、脇差しの刃を上に向けて台にのせる。
「レオグーこれでよいかの?」
「おうよ!ちょっと離れてな!」
「うむっ!」
アピス、ハクリ、不思議な客の3人が5メートルぐらい離れたところから、その様子を見ていた。
レオグは剣を振り上げると毛が逆立つように見えた。それはもう獅子そのものが獲物に食いつくような姿に見える。
「おりぁぁぁあっ!!!」
レオグの雄叫びと共に振り下ろされた剣が一瞬見えなくなって地面へと突き刺さる。風というより突風のような風が吹き、3人は目を眩ませる。
「ほぉぉぉ!飛ぶっ!飛ぶっ!」
「なぁぁ!!」
風がふきやみ、レオグは頭をボリボリとかいていた。レオグの剣は無事のように見える。近づいてみると剣が刺さっていた地面は5メートルほど先まで亀裂が走っている。
「いや…。凄いの!!レオグ!!レオグの剣の勝ちじゃろ?」
「ほぉ…。ワキザシが真っ二つだのぉ…。」
「いやオレの負けだ。折れはしたが、斬れちゃいねぇ…。それに見ろよ。」
レオグの剣の刃が欠けている。それに脇差しを見せてきた、途中まで綺麗な切り口なのだが、そこから先は強引に割ったような切り口になっている。
「すまねぇ…。脇差しを無駄にしちまった。」
「否。なかなかよい太刀筋を見せて頂いた。これまでも挑んだ鍛冶屋がいたが、主ほどの太刀筋、ましてや脇差しを折る鍛冶屋などいなかった。そこでだ、研ぎは諦めることにするが。主に脇差しを打ち直して見て欲しいと思う。」
「おいおいまじかよ?いいのか?もとには戻らねーかも知れねーのに。いや、戻らねーぞ?」
「主ならいずれカタナを越えるものを作ると拙者…。この『ユキツグ』が確信した。その脇差しは主に委ねよう。」
レオグは感極まったのか、少し泣いているように見えた。がすぐにいつもの笑顔を見せると、任せろと胸を叩くのだった。
ユキツグは、王都へと向かうと言っているのだが、戦争のことを聞くと表情を曇らせた。いざこざに巻き込まれるのは、嫌なのだろう。
「ユキツグさんよ!ワ国からどこの港へ着いたんだい?」
「うぬ。たしか【カイダル】と言う港だったはずだ。」
「なるほどな〜ありがとよ!これからどこへ向かうんだ?」
「…。しばらくは滞在する。少し向かう先を考えたい。」
「えっと…、ユキツグさん?ランゼスって名前を聞いたことがあるかの?」
「ランゼス…殿…。んーすまぬ聞き覚えがないな。」
ユキツグもアピスの父親のことはわからないらしい。ガックリと肩を落とすとハクリが慰めてくた。
その日の夜は、80号ゴーレムの話題で盛り上がった、なんであんなにデカイのかとか、最終的に色が変わっただとか。
レオグによると、恐らく70号番台の硬さまで行ったんだろうと言うことだった。なんでもゴーレムの赤い玉がコアになり、そのコアにも鉱石の好みがあるという。どのゴーレムも基本的にはコアを破壊しない限り鉱石を喰らって復活する。80号の部屋は何度復活してきても鉱石の好みから70号までは固くならないんだとか。
「魔法使うとあれが簡単なんだよな。水属性で余分なものを落とすと最初の段階でコアを見つけて壊せるからな。」
「なんじゃ…。使わせ手くれたら良かったのに…。それにあんなにデカくなるとか!復活するとか!!教えてくれたっていいじゃろ〜!」
「まぁまぁ!!がはは!でもハンマー担いで帰ってきたようすじゃ、だいぶ『氣』を使えるようになったみてーじゃねーか!」
「ムムムム…。まぁそうじゃけど。」
「アピちゃんの最後の一撃凄かったのぉ!ゴーレムんがドカーンて爆発したみたいだった!!」
「おー!そいつわ…アピス、『氣』をハンマーだけに集められたのか?やるなぁ!」
「いあ…。シナラセルのをハンマーでやってみたら。そうなったじゃ。」
「お…。おう…。がはは!まぁ『氣』が使えるようになったんだ!モリモリ使って鍛えりゃいいさ!よし!明日からまたゴーレム頼むぜ?」
「ほぉ!もちも。がんばろっと!!」
「えー!またゴーレムやるのぉ〜…。」
次は50号にチャレンジすることになってしまった。今度のゴーレムには武器はハンマー以外でやるという条件までついてしまった。さらに。
「そうだな…。今度は魔法オッケーだ!」
「おっ!!じゃー楽ちんになりそうじゃ!」
「ただし、水属性は禁止だ!がはは!」
「え〜〜〜〜〜…。」