61話 カタナ
「この剣はカタナと言うのか?ずいぶんと不思議な剣だ、ナイフがデカくなったような。色もなにやら黒いし。片方だけに刃があるんだな!」
「あぁ…。やはりこちらの大陸ではまだ珍しい物になるようだな…。こちらに来て何本か剣を振らせてもらったがあまり良い感触がしなくてな。お主のとこを紹介された。」
「おぉ!どこでオレの噂なんぞ聞いたか知らねーけど鼻がたかいってもんだ!ありがとうよ!確かにな…。持っただけだがなにかスゲーもんを感じるぜ?ちょっと試し切りさせてもらっていいか?」
「構わぬ…。」
「ハクリー!!ちょっと厚みのある盾持って来てくれや!」
「ほぉ!!わかったー!」
アピスは、不思議な客へと茶を出すと、その剣の様子を見ていた。
「なんかかっこよい剣じゃの!!」
「ズズっ…。ん〜…。変わった茶だが上手いな…。」
レオグは、目をキラキラさせて子供のようだ。ハクリの持ってきた重量級の盾、結構な厚みがあるし、この店では高いものだった。
「こいつで試そうと思うんだが…。いいか?」
「ふむ…。ならば拙者が切れ味を見せよう。カタナはこう見えて折れやすい。」
「折れやすいの??」
そう言うと不思議な客はレオグからカタナを受け取り、腰元に構えた。なんだろうか、『氣』と似ている。
「参るぞ…。」
風が一瞬吹いた。かと思えばカタナを鞘にしまうところだったのでこれからなのだろうと思っていたのだが、終わったらしい。
「まだまだ拙者は未熟…。」
ブツブツなにか言いながら、茶を飲みはじめた。
「ん??終わったのか??」
「あぁ…。斬った。」
レオグが盾を持ち上げると、綺麗に真っ二つ横一線に斬れていた。
「がはは!!こりゃすげぇや!アピス!ハクリ!見てみろよ!!」
「なんじゃ…。これならなんでも斬れそうじゃの…。」
「ほぉ…。凄い…。なにこれー!!」
詳しく話を聞くと、ワ国という島国からこちらの大陸へと渡り修行をしているのだとかで、斬れ味が悪くなり腕のたつ鍛冶屋に研ぎを頼みたいのだとか。これのどこが斬れ味が悪いのか疑問なのだが、不思議な客はそう言って聞かなかった。
「まぁ…。話しはわかったがよ。どう判断するんだ?研ぎの腕前を。」
「そうだな…。この脇差しを主の剣で斬ってくれ。脇差しが斬れたら研ぎを願いたい。」
「おいおい、それもカタナってやつだろ?それに折れやすいって言ってたじゃねぇか!いいのか?全力でやるぞ?」
「構わぬ。」
「よぉし!おもしれー!」
レオグは、なんでか嬉しそうに見える。本気って言うが『氣』を使うのだろうか?レオグの『氣』ってどんなだろう?と興味が湧いた。レオグは脇差しと、店で1番高い剣を握り外へと出た。
「ん〜。町の中もなぁ…。いっちょ外でるかね!」
「えー!?どんだけ本気なんじゃ??」
「だってよ〜?自慢の盾をあーもスパっと斬られてだ、斬れ味が悪いって言いやがる!負けちゃられねーだろうが!がはは!店ちょっと閉めて皆で行こうぜ?」
そう言って4人は、都市の外へと向かうのだった。