6話 ピピオカ団子はモチモチ!
辺りがすっかり暗くなった頃、母が戻った。泥だらけの家の中を見て血相を変えて抱きついて来た母にアピスは目を丸くした。
「アピス!!!なにがあったの!!!」
「母、落ち着いて〜!あと、この距離でその声は耳がおかしくなるじゃ〜!!!それに、この人が起きちゃうじゃ〜!んぐぐぐ……」
抱きついたまま、例の大声を出すのと同時に母の力が強く、息が止まりそうになっていた。母の腕を何度も叩き、やっとのことで開放されたあとも質問攻めにあったが、学校を終えた後の経緯をなんとか伝えることができた。
「はぁ〜…で、この緑の髪の子はなんだろうね?」
「いや、ワシが聞きたいじゃ…。」
「まぁ…わかったわ!!とにかく泥だらけのままじゃ汚いから、アピス、お風呂に入って来なさい。この子は母さんが見ててあげるから。ね?」
「わかったじゃ。」
母さんに任せることにし、アピスは風呂へと入る、どっと体が重くなったように感じた。緑の髪の子は寝ていたもののやはりどこか気を張っていたのだろう。なんだか湯船で寝てしまいそうである。
『どこから来たのだろう。』
アピスは村の外の情報については、魔法都市がどこかにあって〜…程度しかなかったのである。
風呂からあがると緑の髪の子は布団の上に寝かされていた。着ていたものはほとんど脱がされ、泥は綺麗に拭われていた。
「その子、女の子だったのね〜。泥まみれで汚かったからわからなったわ〜。」
「んおっ!そうじゃったのか〜!」
「まだ起きる様子がないし、というかね〜母さんが何したって起きないんだから。あはは!」
「母、なに…したじゃ…」
母はなにやら意味深なことを言い、笑いながら夕食の準備をしている。
「まぁまぁーいいじゃない。今夜はアピスの好きなピピオカ団子よ?」
「ピピオカ団子!?はよ〜っ!!食べよ〜!!」
ピピオカ団子はたいした料理ではない、ピピオカの木の実をすり潰した粉で団子を作り湯でただけの物なのだ。しかし、なかなか美味しくアピスの好物である。
「はいね、お待ちどうさまー!」
「うほ〜!頂きまーすっ!…んむんむ…モチモチがたまらないじゃ〜。」
アピスがピピオカ団子を食べていると、突然背後から声がした。
「ほぉっ!!!」
「「…っっ!?」」
アピスと母が見た先に、ムクっと起き上がり首をかしげ、2人を見つめる緑の髪の少女。
そして一言。
「もちのこと?」