55話 メイドのいる鍛冶屋
その日の夜は、ハクリが『氣』を使えることもあり、バケツの穴の修行や鎧の破損箇所の修理を『氣』を使ってやってくれとレオグが鍛冶をやらせていた。あとは慣れだとか、数をこなさないと上手くならないと言うことでハクリは『氣』を使ってバケツの修理からがんばっていた。
「注意しなきゃいけないのは、どっちにも『氣』を流すことだ、ハンマーにだけ『氣』を流したらどうなるかわかるだろ??」
「ほぉ…。もち。頑張るのぉ!」
ハクリは、カンカンと音をならし鍛冶の練習をしはじめた。アピスは、店の中の剣を色々振ってみていた。
「剣にすればもっと色々できたのになぁ…。」
「どうしたよ?アピス剣なんぞ振って。」
「ん〜レイピアってツンツンしかできぬじゃろ?じゃから剣にすれば良かったかなぁって。」
「がはは!まぁそう考えるのが普通だよな!いいか?レイピアはシナラセルんだよ。ちょっと借りるぞ?」
そういうとレオグはレイピアを振って見せた。その瞬間レイピアの剣先が消えたように見えたのだ。
「わかるか?レイピアでも斬ることができるんだよ。まぁ普通の剣より細い分、まともに剣を受け止めたら壊れちまうかもしれねーけどな。斬る、突くに関しちゃある意味、普通の剣よりスゲーところもあるんだぞ?」
「な、なんじゃ今の…。シナラセル?とそんなになるのかじゃ…?」
「シャムナがレイピアを使った時は、もうあれだムチのように見えたくらいだ。」
「ムチ…。」
それから10日は、鍛冶屋の仕事を手伝いつつ『氣』の構えをやり続け、夜はレイピアを振り続けた。ハクリもまた、もうほとんど工房で作業することの方が増えてるくらいで、風呂に入ると魔法の練習をした。
結局、メイド服はアピスだけが着ることになってしまい、寂しくもあったが。【メイドのいる鍛冶屋】と、いつの間にか噂になり、店に様子を見に来る客も増えた。
アピスは、来る客に『ランゼス』のことを知らないか聞いたのだが、何一つ情報は手に入ることはなかった。
そして今日も、ゆっくりと日が暮れてゆく。
「もうすっかり鍛冶屋だな、がはは!オレのすることがねーよ!」
「えっ!レオグーいないと困るのぉ!もち、へなちょこだから鍛冶まだまだ教えて欲しいのぉ!」
「ワシもじゃよ!レオグに強くしてもらわないと!」
「あいよー!任せろってんだ!そうだ。そろそろ鉱石が減って来ててよ。いつもなら学院ギルドにクエストとして出すんだが、アピスとハクリでやってみるか?いい経験になると思うぜ?」
「ほぉ!アピちゃんどうする〜?」
「ワシやる!どんなことをするんじゃ?」
「魔法都市の1番下の階層でゴーレムを倒すのさ。」
「「ゴーレムつよそぉ…。」」