5話 薬草じゃなかった
喋った??薬草をビックリして手放すと、塊はべちっと音を立てて地面に落ちた。
「ぶふっ…」
アピスが用心深く布をめくると、塊はどうやら頭だったようで…薬草だと間違えたのは、緑色の髪の毛だったことに気づいた。
「なっ…だれじゃ?どうして?ん?」
「…ほ…ぉ…」
問いかけに対しての返事?だろうか。ボロ布を纏っているし、あちこち泥だらけで自力では動けないのだろうと察しがついた。
「大丈夫かえっ!?…。とりあえず連れて帰るしかないの…死んじゃいそうじゃしの…」
薬草もそこそこに、緑の髪の人を抱き起こす。髪の長さは首元くらい、でもモワっとボリュームがある。
身長は大体同じくらいだろうか?しかしなにやら重い!抱き起こして見てわかったのは、腰に剣を左腕に小さめな盾を装備していた。重さはこれか…?ますます何者?と疑問が沢山だが、重さの原因となっている装備品を外し、なんとか引きずれるまでとなった。
「待って!…おれっ!…んよっ!…もうすぐ家じゃからのっ!…んっ!」
魔法使いの村【ユミール】には、外からの訪問者はほとんどこない。出入りする人は大体が村出身の者で、外部の者といえば村の出身者が帰省するタイミングで友人や旅仲間を連れてくるくらいである。それこそひっそりと暮らしている為、たいした貴重品などなく、盗賊すら目当てにしない村である。
なんとか庭を抜け、家の中に引きずり込むと、アピスは回復薬を水に薄めたものを飲ませてみることにした。
ぺちぺち!「生きておるじゃかぁ??」
「ほぉ…」
ほっぺを叩きながらの問いかけに返事があるもののやはり弱っているようだ。
「これ飲むじゃ。」
緑の髪の人を少しお越し、薄めた回復薬を飲ませる。
「じゅるじゅる…。」
少しずつだがなんとか飲めているようで安心した。
家の中は泥だらけになってしまったし、母もまだ帰ってこないが、夕暮れのオレンジ色が濃くなってきている。
『もうすぐ帰ってくるじゃろう。』
母が帰ってくれば…と思っているうちに、グゥ〜グゥ〜と寝息が聞こえてきた。
『寝てるしっ!!』
緑の髪の人はアピスにもたれ寝てしまっていた。