45話 魔法学院アトラ
3人はまず魔法学院へと向かうことにした。受付を済ませた後に目に入ったのは大きなアーチ状の入口。建物は全て白色で統一されているが、植物があちこちにあって、どこか温かみがあった。
時刻は夕方、アピスとセレンは人の多さにビックリしていた。
「なんじゃ〜…。建物はでっかいし…。」
「人がウジャウジャいるにゃ〜…。」
入口から真っ直ぐ歩いていくと、噴水のある広場へと出た。それを囲むように色々な店がグルっとあってとても賑わっている。
「そういえばゴールドって…。ワシら持ってないの。」
「ほぉ!もち。少しならあるよ?」
「にゃ!盗賊から頂いたシルバー3枚があるにゃ!」
ここで過ごすには、ゴールドがないと宿も食事も出来ないことを今さらになって考えだし、アピスの頭の中を『どーする?』の言葉がぐるぐる走っていた。
「まぁ、なんとかなるのぉ!!」
ハクリの根拠のない前向きさは、アピスがいくら考えても理解できないのだが。ハクリが笑顔で言葉を言うと、不思議と信じられてしまう。
広場から、それほどかからない内に【魔法学院アトラ】と書かれた大きな塔のような建物へと着いた。セレンは、飛び上がって尻尾を振りまわしながら走ってゆく。
「んお〜。これが魔法学院…。なんでもかんでも大っきいのぉ…。」
「ほぉぉ…。イテテ、首イテテ。」
セレンは塔の入口を開けて手招きしている。どうやら中に受付があるようだ。
中へ入ると螺旋階段が壁側を登っていて。真ん中に丸く光る玉がいくつもブラ下がっていた。
受付をしているものには、魔法使いが並びなにやら手荷物を差し出したりしていた。
「あそこかにゃ?」
3人は、いくつもある受付の端っこに入学に関しての受付があるのを見つけたのだが。誰も並んでいなかった。
「すいませんにゃー?」
「はいはい〜?おや珍しいのね?入学をするのかしら?」
「はいにゃ!!」
受付に座っていたのは、随分とふくよかなオバサンだった。
「猫ちゃんだけ?そこの2人も?」
そこの2人と言われて、アピスとハクリは反射的に首を振った。
「にゃ?アピにゃんもこないの??」
「ワシは、魔法飛ばせないからのぉ…。」
「あらっ。それじゃ難しいかもしれないわね…。入学には試験があってね。筆記と魔法の習熟度と魔力量を測るテストがあるのよ?」
「望むところにゃっ!!あ、あの…。ゴールドとか必要…。にゃ?」
「ゴールドは必要ないわ。ここには生徒の寮もあるし、食事も支給されるわ。ただし、魔法学院ギルドへ登録されてノルマとして依頼をこなしてもらうようになっているのよ?」
「にゃるほど…。」
「入学担当も今は時間を持て余してるところだから、ここにサインしてくれればすぐ試験が受けられるわよ?」
「やるにゃ!」
セレンは、渡された書類にざっと目を通してサインをした。
「アピにゃん達は…。どうするにゃ??」
「もち。もちパパ探してみる!」
「ワシは…。ユミールの人達がいないか探してみるじゃ!」
「わかったにゃ…。アピにゃん、これあげるにゃ!」
そう言ってシルバー3枚をくれた。セレンは受付のオバサンに呼ばれている。
「せれにゃーなら、受かるじゃ!試験頑張っての!!」
「うにゃ!!父様と母様に立派になったワタシを見てもらうにゃ!!」
「ほぉ!せれにゃー…。」
ハクリは流れで抱きしめようとしたが駄目だった。
「シャーッ!!やめるにゃ!!」
「えーーー!よいでわないかぁ!!」
「行ってくるにゃ!アピにゃん達はしばらくここにいるんでしょ?ワタシに出来ることがあれば手伝うにゃ!」
「うん!わかったじゃ!」
「ユミールの人達によろしくにゃ〜!」
セレンは手を振りながら、受付のオバサンのところへと走っていった。