41話 チルチの盗賊団
チルチに起こされたのだろう。扉の向こうでハクリの声が響いていた。
「いゃっ!!チルるんのスープは美味しかったのぉ〜!!」
「ありがとう!もっちー!」
「いゃいゃっ!!もちらこそっだのぉ!!」
『もちらこそってなんじゃ。』布団の中で笑いを堪えてまた腹が痛んだ。しばらくねむってしまっていたようで、セレンが起こしに来てくれた。セレンもまた、ワンピースを着ていた。
「アピにゃん。具合どうかにゃ?」
「んぁ…。せれにゃーかの?ワシはちょっとお腹が痛むのぉ…。」
「無理しにゃいで休むにゃ!お婆さんと色々話てきたにゃ!」
チルチと出会った経緯や、ザーレルとのこと。【ユミール】に魔獣が流れ込んで避難してきたことなどを話てきたという。お婆さんは、盗賊団のことを話てくれたらしいのだが、ザーレルは実の息子だと言う。盗賊団の旅で、酷い扱いを受けたりすることもあって、その度にお婆さんは頭を下げ続けてきた為か反抗心のような物が芽生えてしまったのではないかということだった。
「考えもしにゃかったけど、悪い奴にも親がいるにゃよね…。」
「そうじゃのぉ…。」
「一度盗賊団皆を集めるから、ワタシ達にお礼をちゃんと言いたいって言ってたにゃ!でも痛むならもう少し待ってもらうにゃ!」
「んっ…。まだ少し痛むけど動けそうじゃ。ゆこう。」
体を起こしてみたときに、痛みが少なくなっていたので歩けそうだ。セレンに手を引かれて部屋を出ると、まさに洞窟そのもので迷路のようだった。それが途端に広くなった、アピスの寝ていた部屋の4倍くらいありそうな部屋だ。
中央に刺繍の入った敷物がひいてあり、真ん中にお婆さんが座っている。すぐ隣にチルチがいる。お婆さんの後ろ側に8人くらいの大人が立っているのが見えた。
「ほぉ!!アピちゃん!!大丈夫かのぉ!!」
ハクリが先に来ていたようで、肩を貸してくれた。3人はお婆さんの前に座ると、チルチが話初めた。
「3人とも本当にありがとう!お婆さんも無傷だしっ!これでまたやり直せるよ!!」
「チルチや、まっておくれ。私にも礼を言わせておくれ?私が盗賊団の長『ベーラ』と申します。助けてくれて本当にありがとう。ザーレルには本当に手を焼かせられた。今ではここにおる者しか生きておらん。悲しいことだ。そこの可愛らしいセレンに話は聞いた。なんでも魔法都市へ避難しているんだって?」
「そうじゃ。」
「ひなーん!!」
「うにゃ。」
「私らもまた、旅に戻ろうと思う。北へは向かわずにの。助けてもらってろくに礼が出来ないのが困ったものなんじゃが。良かったらチルチを連れて行ってやってくれんか?」
「えっ!まってよ!!お婆ちゃん!!」
「ほぉ!」
「にゃ!」
「ふむ。」
「チルチにも迷惑をかけた、もっと自分の為に生きてほしい。助けてもらってお願いごとをする老いぼれのワガママを聞いてもらえんか?」
「いやだっ!あたしは、お婆ちゃんを守るの!そして皆をもう死なせたりさせたくない!!」
「チルチや…。」
「チルるんがそう言うんじゃ、それが1番よい。」
「ほぉ!!もちもそう思うのぉ!!」
「うんうん。それがいいにゃ!チルるんが助けようと1番頑張っていたしにゃ!」
ベーラや、盗賊団の人達は泣いていた。身寄りのない人達で血のつながりもないけれど、チルチを見ているとベーラはチルチのお婆さんに見える気がした。
そして、そのままそこで夕食を皆でとることにし、盗賊団のみんなと仲良くなった。料理は『ホーンピッグ』の丸焼きが何匹も出てきて驚いた。
「明日また魔法都市へ向うじゃ。」
「えっ!!明日!?早くない??もっとゆっくりしていけばいいのに!」
アピスは唐突に言ったのをチルチが止める。
「ここにいたら、ワシらも盗賊団に入ってしまいそうじゃ。」
「ワタシは、上級魔法を勉強したいにゃっ!!」
「ほぉっ!えっ!もち。もちパパを探す!!」
「じゃから魔法都市へゆかないとじゃ。きっとまた会えるじゃ。」
「みんな〜。絶対だよ〜っ!!」
チルチは、会った時とはまた違う泣き方で強引に3人を抱きしめた。