39話 テントから脱出
アピスは全力で走って2人のもとへもどった。もう、戦うとか逃げるとか考えることもなかった。とにかく2人のところへ。
「もっちーっ!?」
ハクリが片膝を着いていた、左腕は盾を持つ力もなく、ぶらんとしていた。それでも右手で剣を構えていた。
「へっ!ガキのくせに本当よくやるぜ!なぁお前ら仲間にならねーか?」
「ハァハァ…。お断りにゃっ…。」
セレンがこんなに疲れているのは初めて見た。
アピスは、考えるよりも先にレイピアを抜き、ザーレルへと走っていた。
「なんだぁ?逃げたんじゃなかったのかぁ?」
「逃げるわけがないじゃぁぁぁああ!!!」
レイピアを今までにないくらい踏み込んで突き出したのだが、体をひねるようにザーレルは攻撃を避けた。
「んなぁぁぁあぁあっ!!」
左手に『ファイアボール』を作り押しあてようとした瞬間。アピスは腹に強い衝撃を感じ吹っ飛んだ。
「威勢だけか…。そろそろ終わりにしますかねー??」
アピスは、痛む腹をおさえて、ジーナスを睨む。そこでようやく自分が蹴り飛ばされたのだとわかった。たった1回蹴られただけなのに、もう立てそうもない。口の中で血の味もする。
「ザーレル!!ザーレル!!やべえよっ!!」
「なんだよ?これからスカッとするとこだったのによ?」
「あれだっ!あれっ!」
「あぁ!?もう暗えからよく見えねーわ。」
手下の盗賊がなにやら焦った様子で森の方をゆび指している。なにか黒い塊のようなものがグニャグニャしながらこちらへ向かって来ている。それはテントへとぶつかって、盗賊達とギャーギャーやり合いはじめた。
『チルるんだっ!!』
テントが燃えて辺りは炎で明るくなる。アピスは、ぱっとザーレルに目をやると後ろにチルチが、忍び足で近づいているのが見えた。
「なんだ?あの塊は!?」
「『ゴブさん』だよぉ!!これっどーぞ!!」
驚いているザーレルの首にかけられたのは、綺麗な石が連なったネックレスだった。黒い塊の先頭から、普通のゴブリンの3倍はあるかもしれない大きいゴブリンが、丸太のような棍棒を持って飛び出してきた。
「なっ!?なんで『ゴブリンキング』がここまでっ!?」
ジーナスはかけられたネックレスよりも『ゴブリンキング』に目を奪われていた。
「みんな!!遅くなってごめんっ!!今のうちに!!」
「ほ、ほぉ…。」
「に、にげるにゃ…。」
「う、うぐ…。お婆、さんはあっちに…。」
口から血を流しているアピスにチルチが肩を貸し、頷いている。セレンとハクリはなんとか歩けるようだ。
「なんでこっちにくんだっ!!くそ『ゴブリン』がぁっ!!」
「ガァァッ!!ギャギャギャッ!!!!」
ザーレルとゴブリンキングがやりあい初めた。ゴブリンキングの雄叫びが響き渡っている。
4人は、ノソノソとお婆さんのところへと向かった。お婆さんは相変わらず縛られたまま動きがない。とにかくお婆さんを運んで逃げなければ。
「誰か、アピちゃんをお願いっ!!」
チルチはそう言って、お婆さんの縄を斬り。おんぶした。セレンがハクリとアピスのバッグから回復薬を3つとり、1つずつ飲む。それだけではアピスは動けそうもなかったので、セレンが肩を貸すようにして、大騒ぎになっているテントから離れて行くのだった。




