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38話 長髪の男

 アピスとセレンは慎重にテントの入口を開け、中へと入る。まだ長髪の男が起きる様子はない、大きくイビキをかいている。


 お婆さんの近くへと2人は辿りついた。セレンに手伝ってもらいながらお婆さんを運び出そうとしはじめた。その時。


 「がぁ〜。がぁ〜。ぐっ!!ごっ!!ゲフッゲフッ!!」


 長髪の男が、咳き込んだ。2人はカチコチに固まってカクカクと2人揃って長髪の男を見る。


 「がっ!ん??なんだ!?テメーら!!」


 「「デスヨネー!!」」


 慌ててテントを飛びだしてハクリに声をかける。


 「もっちー!!バレた!!逃げよ!!」


 「ほぉ!!やゔぁ!!」


 「にゃー!!」


 しかし、お婆さんを担いだままじゃ全然走れない。気がつくといつの間にか長髪の男が目の前に立っていた。


 「はっはっは!傑作だぜ。俺様からババアを盗むなんてなぁ!お前ら、この俺『ザーレル』の部下にしてやってもいいぜ??」


 やはり、この長髪の男が『ザーレル』だった。にしても、逃げようがないし早くしないと囲まれる?いや、盗賊団の中で1番の実力者なのだ、子供3人でなんとかなるだろうか?


 「もち。お守りする。」


 「おうおう、お前は剣士か?寝起きの体操にもならなそうだけどな!!」


 「ほぉ……。」


 ハクリ(もち)は、『氣』を体に満たしているようだ。少し髪の毛が膨らんでいるように見える。ジーナスはそれを見て驚いているようだった。


 「おーっ!こいつは驚いた!お前『氣』を使えるのか。そういや下っ端2人帰って来ないんだが、もしかしてお前が殺ったのか??」


 「もち。寝ていたから。知らないの。」


 ハクリ(もち)の口調はいつもより、トーンが低くかった。集中しているのだろう。


 「はっはっは!そっち子猫ちゃんは魔法使いか!こいつはおもしれー!しかし、下っ端のやつらも恥ずかしいねぇ!ハッハッハ!!」


 セレンがいつの間にか『ファイアアロー』を構えている。もう戦うしかないと判断したのだろう。アピスも覚悟を決めて、お婆さんを降ろし、レイピアを抜いた。


 「ヒュー。3人ともやる気満々だね〜。で?そのババアをどうするってんだよ。」


 「決まってるにゃ!助けるにゃ!!」


 「やってみろよっ…。っと!!」


 ガキィッン!!


 ザーレルが踏み込むと、目で追うのがやっとのような勢いで攻撃してきた。ハクリは盾で短剣をガードしたが。肩の傷から再出血してしまっている。


 「おっと…。いい目してやがるぜ!…っ!?あぶねーあぶねー!!オワオワ!!まだくんのか!?」


 距離を取ったジーナスにセレンが『ファイアアロー』をビュンビュンと撃ちまくっている。


 「当たれにゃっ!当たれにゃっ!」


 ジーナスは『ファイアアロー』をほとんど足捌きだけで躱している。その中をハクリが、斬りかかっていった。


 「ほぉぉぉああっ!!」


 「おっと!!ヤバイヤバイ!流石に『氣』の入った剣は受け止められねーっ!」


 アピスは、レイピアを構えたまま様子を伺うしか出来なかった。なにせ、ハクリとセレンの攻撃が上手く連携していて、自分がどのタイミングで攻撃していいのかサッパリだった。


 「当たれにゃっ!!うにゃー!!アピちゃん!!お婆さんを遠くへ!!」


 「わかったじゃ!」


 セレンからそう言われて、アピスはレイピアを鞘へ納めて、お婆さんを運びはじめた。流石のジーナスもハクリとセレンの連携攻撃に避けることばかりが続き、攻撃に手が回らないようだが、やけに余裕そうだった。


 「おうおう!なかなかやるねぇ!だが…。まだまだ!」


 ガキィン!


 また、ハクリの盾へ短剣がぶつかる音がした。肩の血が地面へと滴り落ちている。


 「ハァハァ。もち。守るからっ。」


 一撃当てるとジーナスはまた距離をとる。その間にも、セレンがジーナスへ狙いを定め『ファイアアロー』を連発しているのだが、避けられてしまう。


 アピスは、お婆さんをテントからある程度離した場所へ置くと。2人の元へ引き返そうとした時だった。


 セレンの放った『ファイアアロー』がテントへ当たったのか、テントが炎を上げて燃えている。


 「やばいじゃ!!他の盗賊に気づかれる!!」


 このままじゃ、お婆さんを助けるどころか全滅しちゃう。頭が真っ白になりかけながら、アピスは2人の元へと走っていった。

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