36話 テントへ向かう前
模擬戦をしてみて分かったことがある。レイピアは、剣や短剣と違い。突きが主な槍の戦い方に近いのかな?と感じた。短剣の間合い、つまり懐に入られると、レイピアで攻撃するのがとても困難だったからである。距離をとって戦う方がレイピアでの攻撃がしやすい。
短剣の間合いなら、魔法玉をぶつけた方がよっぽどいい。あの盗賊の男達にやったように。
今のアピスでは、攻防するというより、やられる前に意表を突いて魔法玉を当てるくらいの戦法しかない。ハクリ相手にも、チルチ相手にもアピスのレイピアは通用している感じではなかった。ハクリに指摘されるまで気がつかなったけれど、レイピアで剣を防御したら折れてしまいそうだと言われて本当だと思った。
『このレイピアの持ち主、シャムナはどうやって戦ってたのだろう…。きっとなにか戦い方があるんじゃろうけど…。ん〜普通の剣にすれば良かったかの…。』
ハクリが『レッドベアド』へ打ち込んだ一撃についても教えて貰った。『氣』も使用していたというが、剣先に体重を乗せるのがコツなんだとか。腰がストンと落ちたアレのことなのかな?と思案する。
『レイピアは普通の剣と使い方違うしのぉ…。』
模擬戦の合間に休憩をいれた後、地下の部屋に皆で改めて調べに行った。地下の部屋は片付いているというより物が少ない。盗賊の男達が飲み散らかしっぱなしであったが、それだけであった。
「この先に女神様の像があるにゃ!とっても綺麗にゃ!でもそこでゴツンッとやられたにゃ…。」
「ほぉ!もち。見てくる〜!!女神様おがむのぉ!」
「ちょっと待ってじゃ〜!もっち〜!」
ハクリを追いかけるようにして、女神の像のある場所へと来た。セレンの言う通り凄く綺麗だった。丸く中庭のようになっていて、中心に池があり、池の真ん中に像が立っていて。木漏れ日が池の水に反射してキラキラと光っている。花がいくつか咲いていて、なんだか死後の世界?を見ているような気持ちにさえなるほどだった。
「んお?これ薬草じゃないかの??」
「やっくそーやっくそー!!」
「んにゃ!お薬作れるにゃ!」
「えっ!薬作れるんですか??」
「作れるじゃ!まだ時間もあるし、薬補充するかの!!」
「あっ!あたしっこのまま『ゴブリンの巣』の場所だけ探ってきますね!」
「んにゃっ!気をつけてにゃ〜?」
チルチは、走っていく。でも凄い、あまり音がしない。あれも盗賊の技なのだろうと感心する。
「じゃ〜!お薬作るかの!!」
薬草を採って地下の部屋にもどる、鍋があったので助かった。水はさっきまで休んでいた所の水を使えば問題ないだろう。
「そうじゃ!!もっちーの傷のとこ。交換しとこ?」
「ほぉ!ありがとうのぉ!」
「お薬作っておくにゃ〜!」
アピスとハクリは、残りの回復薬1つを使いきり、セレンが補充をした。浄化作用のある薬草もあったので、解毒薬も1つ作ってくれた。ブドウジュースを1つ皆で飲んだので、回復薬が4つと、解毒薬が1つ、ブドウジュースが1つとなった。
「にゃ〜もち〜。これあげるにゃ!」
「えっ!?せれにゃーのプレゼントー!?」
「浄化作用のある薬草余ったにゃー!食べて?」
「ほぉ!!頂くのぉ!!パクパク…。ニガっ!!ニガっ!!ニガっ!!にがー!!」
「にゃははははは!」
部屋の扉がノックされて、開けられた。
「なんだかたのしそー。ただいまー!もどりましたー!」
「おーチルるん!おかえりじゃ!」
下調べも、準備もこれで整った。やれることはやれたはず。早めの夕食をとって、4人はそれぞれ支度を済ませた。
「そろそろ、出発じゃ。チルるん…。必ず来ての…。」
「絶対にゃ!!」
「もち。待っているから!!もちランタン必ず返しにきてのぉ!」
「うんっ!必ずゴブリンを連れて行く!!皆も…。あまりに遅かったらちゃんと魔法都市へ向かってね??」
「…。わかったじゃ…。」
4人は地下の部屋から、女神の像のある庭を抜けて。木々のアーチを潜ってゆく。アーチを抜けると草原が広がっていた。
「このまま真っ直ぐ進むと、テントがあるはず。アピちゃんたちも気をつけて!!」
そう笑顔で言い残しチルチは、森へと入っていった。
チルチと別れたあと、3人はテントを見つけ見つからないように、身を低くしていた。
チルチが来ることを願って。
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