34話 盗賊団
チルチはしばらく思いっきり泣いた後、何に困っているのか1言で言った。
「あたしのっ…。お婆ちゃんを助けて欲しいっ!!」
3人は、なにがなにやら分からないけども、チルチのお婆さんがピンチなことだけは、その一言で理解できた。
詳しく話を聞くと、チルチの属しているのは盗賊団だというのだが、その盗賊団の中で勢力が二分化したという。
物を盗み人を殺し、悪事に手を染める集団と。冒険者家業や農業に商売、町で職について稼いだりして、悪事には手を染めない集団。もはや後者は盗賊とは言えないだろう。
盗賊団の成り立ちは、チルチのような『逆さ耳のエルフ』など、国外追放されてしまった子供や孤児、家のない人や訳有の人など様々な人を受け入れ旅をしながら生活をしていた。その盗賊団の長がチルチのお婆さん。
二分化すると同時に争いが起き、長のお婆さんが拉致された。それをチルチが属する悪事をしない盗賊達は逃げ腰になってしまっていて助けに行かない、行けないで手詰まりなのだという。
その理由に、二分化の発端であり盗賊団で一番の実力者『ザーレル』が悪事万歳側のリーダーとなり、力や金が全てでルールもへったくれもないのがいいのか、素行の悪い輩が大勢集まってしまった。
争いもほぼ戦闘にならず、一方的にお婆さんを拉致されるほど戦力差も大きい。
「お婆さんの命が惜しければゴールドを出せ。そしたら命はとらないでいてやる。なんて『ザーレル』が言うもんだから、残ったあたし達はまっとうに稼いだゴールドを毎日渡してるんだけど…。あたし助けたくて!1人で乗り込んで…。そしたら捕まって…。」
チルチは、訳を話終えるとうつむいてしまった。
「その盗賊団ってどのくらい人がいるじゃ??」
「大体が大人ばかりだと思う…。30人くらいかな…。」
「えっと…。チルるん側の人達は?」
「10人くらい…。」
「ほぉ…。」
「やばいにゃ…。やばやばにゃ…。」
本当に人数でも戦力差があり過ぎる。それはチルチもわかっているのだろう。けど誰にも頼むことができなくてアピス達へ話すしかないのだ。
「ワシら4人じゃ、流石に30人の大人相手に勝てないの…。」
「…。ごめんなさい…。無理を言ってしまって。」
「にゃ…。『ザーレル』側の盗賊団はどこにいるのにゃ?」
「えっと…。ここは遺跡後なんだよね??北側の丘にテントを貼ってると思う…。」
「にゃるほど…。」
4人は、考え込んでしばらくなにも言わなかった。ハクリが思いついたように顔をあげ、ボソッと言った。
「ほぉ…。戦力を増やせば勝てる??」