32話 おつかれさま
扉を開ける前にセレンにやっつけた2人の男についてと、残りの男どもが1人か2人はいる、と思うのだが見当たらなかったのことも説明をした。セレンはコクリと頷くと、思い出したかのように杖を探し始め、ささっと部屋をのぞき机の上に置いてあった杖を取って戻ってきた。
「杖あって良かったにゃ…。一応、後ろの警戒は任せるにゃ…。今度は油断しないにゃ…。」
しかし、頭を殴られた痛むようで、頭の上を手で撫でていた。アピスは、謎の子供を背負うと扉を開け階段を登りはじめる。男の死体には目をやらなかった。
幸い、男が転がったお蔭か階段は滑りにくくなっていて助かった。
「うぇぇ〜…。」
セレンが後ろで声を漏らしている。
ハクリのもとへ戻ってくると、離れた時と変わりなくスースーと寝息を立てていた。セレンは、警戒モードのスイッチでも入ったのか、耳をピョコピョコさせて辺りに気を配っている。
背負っていた子供をおろすと、どっと疲れがきて眠気が襲った。魔力を結構使ったのだろう。あれこれと話をしたかったのだが、そのまま倒れるように眠ってしまった。
「んにゃ!?アピにゃん?アピにゃ………」
セレンが心配してくれてるようだった。段々と声が遠くなり聞こえなくなった。
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「…。ほぉ!!大変だったのぉ…。もち。役立たずで、ごめんのぉ…。」
「にゃ〜…。みんな無事で良かったにゃ〜!」
なにやら話声が聞こえる。アピスはゆっくりと起きると、すっかりと夜が明けていた。
「ほぉー!!アピちゃーーんっ!!」ガシッ
「んがぁっ!もっちー!おはよー。」
ハクリが勢いよく抱きついた。
「あれ?もっちー!肩は??」
「ん?まだ、ちょびっと痛いけど、平気だのぉ!!」
「あっ!あのっ!!『チルチ』と申します…。えっと…。助けて頂いて…。ありがとうございます!!」
「アピにゃんが背負ってた子にゃ!」
アピスは、チルチが丁寧に頭を下げているので、どうすればいいかわからなかった。
「アピスというじゃ。チルチちゃん無事でなによりじゃ。」
とりあえず簡単に自分の自己紹介を終えると、バッグから食料を4つ取り出した。これでハクリとアピスの持ってきた食料が残り数にして6つ、足りるだろうか…。そんなことよりも。
「結局、昨日の夜ご飯食べてないじゃ!お腹ペコペコー!みんなで食べよう??」
アピスは、みんなが無事なのが心底嬉しくて。ニコニコしながらそう言った。