3話 広場での授業
広場へ向かう廊下の途中、アピスのとなりに並ぶ少女がいた。彼女の名前は『セレン』猫族である。耳と尻尾があり、綺麗な白色をしていてショートカット、皆『せれにゃー』と愛称で呼んでいる。
「なんじゃ〜、せれにゃ〜張り切っておるの〜?」
セレンは目をキラキラさせ、スキップまで踏んでさらには尻尾がグルグルとリズムよく回っている。
「だってアピにゃん!属性魔法混ぜられるにゃよ??もうはやく混ぜ混ぜしたいにゃ!!」
セレンは同時に2属性を扱える優等生である。
「せれにゃ〜なら、でるきるのぉ〜…」
「広場へ出たら混ぜてやるにゃ〜!!にゃははは!!」
セレンなら成功させそうなのが恐ろしい。村の学校へ通う子ども達は卒業したあと、魔法都市にある魔法学院に入り勉学を積むのが魔法使いの一般的な流れである。
卒業後の進路は各々自由で、村に残る者も入れば魔法学院を目指すも者もいる。今よりもっと魔法についての鍛錬や勉学、試験等が厳しいというが…アピスには遥か彼方のことに感じざる得なかった。
「広場にゃ〜!」
「やるぜ〜い!やっほ〜!」
セレンに続きダンケが勢いよく飛び出して行く。広場での授業は、先程の固定イメージを作り、それを的へ当てるというものだ。
「はい!皆さん今回はこの弓矢と玉をイメージして魔法を作って下さいね〜」
そういうと実物の弓と弓矢、ガラスで出来た玉を生徒に見せている。実際に見たり触ったりした方がイメージをより強く出来るということらしい。
セレンは早速、火属性と水属性で作りあげた弓矢を2本手のひらに乗せていた。なにを思ったかそのまま合掌し、弓矢が煙をたてて消えた。早速2属性の混ぜ合わせをやろうとしたようだが、先生に見つかり軽く叱られている。
アピスは弓を触りながら、サクサクと魔法を完成させて的に当てる皆を傍観していた。『これ、形に出来ても絶対届かない自身あるんじゃが…』渋々と自分用の的の前に立ち、火属性の弓矢をイメージしてみる。
「弓矢〜弓矢〜むむ〜っ!!」
両手の中で段々と弓矢の形を成してゆく、我ながらいい感じだと手応えを感じ。片手で弓矢を立ててみる…ま、まがった。へにゃ〜と曲がった…。
その瞬間どっと笑いが立ち、アピスもびっくりしながら曲がった弓矢を見て笑うしかなくなってしまった。
「アピスや、形はとてもよく出来ているね。先生も初めて曲がった魔法矢を見たよ。ある意味で凄いのだけれど、弓矢としては…」
「わかってるじゃ!がんばるじゃ!」
なんとも言い難い先生の言葉を振り切るように、玉を作り出し始める。今度は水属性。
「むんっ!!」
おっ?綺麗に出来た!それも難なく!玉を作ることに関しては中々才能が…と思っていた矢先に、ダンケが魔法玉でお手玉をやりはじめたので自信なんてボキボキに折れてしまうアピスであった。
しかし、アピスのこれまでの魔法は作り出すのに時間がかかっていたのに、玉になるとスポっと産まれるような速さで出せるのがアピス自身とても嬉しかった。『優等生に比べたら…あれじゃけども、これは進化と呼べるに等しい…』などとオーバーな自画自賛で自分を励ますのだった。
魔法玉をさらに的へと考えたのだが、届かないとまた絶望に襲われるので、アピスは片手での魔法玉作成を練習し続けていた。
「「ファイアアロー!!ウォーターアロー!!」」
固定イメージへの名前はシンプルにと言うことで、完成させた魔法弓を皆そろって的へ向けてビュンビュンと放っている。アピスにはかっこよく見えて仕方がなかった。
片手でなんとか魔法玉を作ることに成功した頃には、眠気が強くなっていた。それはアピスだけでなく生徒皆が同じようで、ピンピンしてたのはセレンだけである。
「はいっ!ここまでとしましょう!皆さん昼食をとり、お昼寝にしましょうねー!」
先生の授業終了の合図があり、セレン以外の生徒達はフラフラ〜と教室へ戻るのだった。