25話 突撃!!
『ゴブリン』達の、宴会のような騒ぎと川の勢いの音の中。3人は、岩影に隠れて緊張しながら顔を見合わせていたが、セレンの合図と共に岩影から飛びだす。
「うにゃっ!!ファイヤーアローにゃぁあっ!!」
セレンは、杖を弓代わりにして、火属性の弓矢を片手で4本も握り。岩向こうの『ゴブリン』達へと放った。
「4本も!!凄いじゃ!!」
「ほぉ!!」
「まだまだにゃっ!!」
セレンは、連続してファイヤーアロー4本をバシバシと放っていく。さっきまでの楽しそうな宴会音とは違い、明らかに悲鳴のような声や、なにかひっくり返すような音などが聞こえてくる。
「いくにゃっ!!」 「「うんっ!!」」
3人は、岩向こうへと走りだす。
こちらからの攻撃に気がついたゴブリンが、槍を持って岩から顔を覗かせているところへ、ハクリが先陣を切って走ってゆく。
「ほぉぉおおおおおおおあ!!」
「がぎゃーぎゃーぐぎゃー!?」
ゴブリンは、ハクリの雄叫びにビックリしたようで怯んでいる。ハクリはそのままの勢いでゴブリンの頭を盾でぶん殴った。
ゴンッ!!「まだいるっ!!せれにゃっ!!」
盾で殴られたゴブリンは、首が変な方向へ曲がり吹っ飛んだ。岩の向こうに3人が踏み込むと、5匹のゴブリンは魔法矢が直撃したようで倒れている。コップのようなものや、鍋、釣り竿なんかもあるが。それら全ては混乱と共にひっくり返り、ごちゃごちゃと散らかっていた。
そこへ、盾と剣を持った3匹に槍を持った3匹のゴブリンが武器を構えていた。残りのゴブリンは森へと走って逃げている最中だ。
「邪魔するにゃっ!!」
ファイヤーアローを構え放つ。6匹に放った4本の魔法矢は、盾を構えたゴブリン3匹に撃ち落とされてしまった。
「防がれたにゃっ!?」
武器を構えたゴブリン達は、きっと戦士なのだろう。逃げているゴブリンを守っているようだ。
武器を構えているゴブリンは、顔や身体に傷痕がある。身長は高くなく、アピス達とあまり変わらないのだが、体格に似合わない厳つい顔をしていた。
ハクリは、剣を構え息を整えている。アピスも剣を抜き構えた。魔法が撃ち落とされたのを見たセレンは、ハクリとアピスの後ろへと下がる。
体制を整え終えたゴブリン6匹は、そろって3人へと突撃を始めた。
そこへ迎え撃つようにハクリが駆け出した。
「せれにゃっ!!もっちーの援護お願いじゃっ!!」
「わかってるにゃっ!!」
アピスも、無我夢中でハクリ(もち)を追いかける。セレンは、ファイヤーアローの本数を減らし狙いを定めている。
「「「グギャーッ!!」」」
ゴブリン達の雄叫びの中、ハクリが飛び込むように斬りつけてきた盾持ちゴブリンを交わすと。残り2匹の盾持ちゴブリンへと剣と盾で体当たりするように攻撃をする。
「ほぉぉおおおお!!」
「そこぉじゃぁああっ!!」 ブスッ!!
アピスは、ハクリの交わした盾持ちゴブリンへと勢い良く踏み込み、レイピアを突き出した。体制を崩していたので上手く攻撃が命中し、ゴブリンの目から後頭部へとレイピアが突き抜けた。
ハクリの2匹への攻撃は、盾に防がれ力比べの様に押し合っている。その後ろから槍を持ったゴブリン2匹が盾ゴブリンの脇からハクリを攻撃しようとしている。
「もちっ!!槍がくるにゃっ!!!」
セレンはそう言いながら槍持ちゴブリンへとファイヤーアローを撃ち込んだ。1本になったセレンの矢は、槍持ちゴブリンの頭へ見事に命中すると4本の時とは違い、威力が凄かった。体毛のないゴブリンの頭でもボワっと炎が立ち肩まで真っ黒になった。
ハクリはセレンに注意されて、盾持ちゴブリンを蹴り飛ばし距離をとるが、槍のリーチが長く。左肩へ直撃してしまう。
「がっ!!」
「もっちーー!!!」
「アピにゃんっ!!前っ!!前にゃっ!!」
槍持ちの残り1匹は、アピスへ向けて攻撃しようとしていた。
「んなぁぁっ!!」グチャ。
串刺しにしたゴブリンの頭からレイピアを引き抜き、槍の攻撃に備える。槍ゴブリンの攻撃は単調だった。剣と盾を持ったゴブリンと同じように、飛び込むようにして槍を突きつけてきた。
「むおっ!!あぶなっ!!」
単調で似たような攻撃だったが思ったより早かった。けれど、外した槍を引き戻しているゴブリンへアピスは強く踏み込み、またゴブリンの目を突き。後頭部まで貫通させた。
セレンは、魔法矢を4本にして、負傷したハクリを守るように迎撃している。ハクリは肩から血を流してしゃがんでいる。
「んにゃぁあ!モチ!!はよぉっ!!」
盾持ちが2匹と、その後ろに槍持ちが1匹。セレンの魔法矢を盾持ちが防御している。ジリジリとハクリへと詰め寄っていた。
「ほぉ…。イテテ…。せれにゃっ!!上から撃ってっ!」
ハクリがそう叫ぶと、セレンは上に向けて矢を放った。盾ゴブリンは降ってくる魔法矢を防ぐ為に盾を上に上げた瞬間。姿勢を低くしたハクリが2匹めがけて横斬りをした。
「ほぉぉぉあ!!!」
魔法矢は盾に防がれたが、それと同時に横斬りが2匹を襲う。剣で防御をしたように見えたが、2匹はそのまま吹っ飛んだ。
ズガッ!!「グギャァアッ!!」
盾持ち2匹が同時に吹っ飛んだのを見た槍持ちゴブリンは、拍子抜けして慌てている。
それをセレンは見逃さなかった。ファイヤーアローは、槍持ちの頭へ刺さり肩まで燃えた。
吹っ飛んだ2匹が倒れ込んでいるのを見て、トドメをさすよりも先にハクリへ駆け寄り。肩を貸す。
「アピちゃん…。ごめんのぉ…。」
「せれにゃ!トドメお願いじゃ!!」
「任せるにゃっ!!」
出来るだけ早く遺跡後へ向かわなければ、ゴブリンの増援がくるかもしれない。トドメを刺し終えたセレンは、2人の元へ走り合流するのだった。