20話 セレンとハクリ
木々に寄りかかりながら進むアピス。村の色々な音もだいぶ遠く聞こえる。そして下りだった道が、いつの間にか平坦になっていることに気がついた。セレンが立ち止まり紙をランタンで照らし、何かを読んでいるようだった。
「アピにゃん!どこか具合でも悪いのかにゃ??というか、その子は…。見たことない子だにゃ??」
アピスは、木から木へフラフラと歩いていたので具合が悪いようにも見えるようだ。
ハクリとセレンは、初めてまともに向き合って自己紹介を始めた。
「ほぉ!!もち。ハクリという!どぞよろぉー!!」
「ふむ。ワタシはセレンにゃっ!!」
「ほぉ!!耳!!ネコ!!かわゆいっ!!」
ガバッ!!
「なっ!!なにするにゃっ!!やめるにゃ!!離れろにゃっ!!アピにゃん!!助けてにゃぁぁああああーっ!!」
ハクリは、なにを思ったのか。セレンに抱きついた。アピスはヘトヘトで、2人を苦笑しながら見ていることしかできなかった。
「2人とも仲良しになれて、良かったじゃ…。」
そう言いながら回復薬が効くかも?と思い、その辺に腰掛けて、水袋に口をつけ初めていた。心なしか足の疲れが和らぐ感じがした。
「にゃぁっ!!んにゃぁぁあああーっ!!!」
「ほぉっ!!」
「ゼェゼェ…。変態にゃっ!!」
「変態じゃなくて、もちだのぉ!!」
セレンは何とかハクリ(もち)の腕の中から脱出したが、なにやら訳の分からない、攻防が始まってしまったので、アピスは間に入ることにした。
「もっちー!!ストップストップ!」
「シャーーっ!!アピにゃん!この変態はなんにゃっ!!」
アピスはセレンにハクリと出会った経緯を話した。ハクリ(もち)であること、剣士であること、【カルーナ】の町から来たことなど。
「にゃるほど…。って来るにゃぁあーー!!」
「だめかぁ〜…。」
ハクリ(もち)は、へこんだ。アピスは話をすり替える。
「せれにゃ〜は、さっきなにを見ていたのじゃ??」
「えっとにゃ。【アストルム】への案内図、見たいなものかにゃ?ワタシは学院に行くつもりだったしにゃ〜。ばっちり教えてもらっていたにゃっ!本当は、他の親子について行って楽しようと思ったにゃけど…。これじゃ〜…。」
そこそこの人数が村から森へと入ったはずなのに、ランタンの灯りすら見えないのだ。別の道があるのだろうか。
「せれにゃーは、感覚鋭いし方向ずれることもないじゃろう。大丈夫じゃ。」
「ありがとにゃ!でもそんな難しい道じゃないにゃ!もう少し行くと崖に当たるはずだにゃっ!」
ハクリは、しょぼくれているが、セレンの隙きを伺うように目を離さなかった。
三人は平坦になった森を歩きはじめる。だいぶ時間もたっていて。眠気も強くなり始めていた。
目を擦りつつ歩きはじめた頃、ようやく森を抜けた。
「崖にゃっ!!」
セレニャが、そう叫ぶと。アピスとハクリの目は一気に覚める。夜が明けて、朝日が顔を覗かせていたから眩しい。
崖の下には、大きな川が流れていて、目で追って行くと、遠くに小さく建造物の影が見えた。
「あそこに見えるのが【アストルム】にゃっ!!」