16話 頭の中は大混乱
「母…。もう会えないの??」
アピスは、沢山の情報を噛み砕くように質問をした。自分達が避難するのは、わかったようなわかんないようなだけど、母が村を守る為に残る。離れ離れになるのだ。
「また会えるわ。大丈夫よ?アピス。これでも母さんは昔冒険者だったんだから!!必ずアピスが帰ってこれる村を守ってみせるわ。」
「んえ!?」
「それと。アピスの父さんはね、大剣を使っている剣士なのよ。あまり話さなかったけど、まだ世界を旅している…はずだわ。」
「なぁぁぁんっ???剣士…生きて!?えっ!?冒険者??」
「ごめんごめん余計混乱させちゃってるわね!でも、あの『レッドベアド』にあれだけの火傷を負わせたんだから。卒業試験で倒す『ホーンピッグ』なんて問題ないわ。進路のこともあるし、父さんのことは合格したら話そうと思っていたの。」
「ん?んあ?ん〜?うん。」
「じゃ〜避難の準備しましょうか!あっそうそう。卒業試験に合格したら色々とプレゼントがあったのよ〜?受け取ってくれるかしら?とその前に着替えないとね!」
母は、2人に着替えをくれた。長袖のシャツに、スカートと膝の中間より上まである長い靴下。レザーのベストと肘と膝を守るプロテクター。
『プレゼントは嬉しいんじゃけど〜。あーごちゃごちゃするのぉ…。』着替えながらアピスは、嬉しいやら嬉しくないやらで、また増えた情報に戸惑うばかりで、心底喜ぶことができなかった。
着替え終わると母がプレゼントをアピスへ渡す、父と母の写真が入ったブローチと、ウサギの耳の付いたフード付のローブお尻のところに尻尾を模したモコモコがある。
「武器もあるけど。ちょっと来なさい?」
ブローチを首にかけ、ウサ耳フードをガバッとかぶると母についていく。ついて行った先は母の寝室だった。
「ほぉ…。アピママの匂いがするのぉ。でへへ〜。」
アピスはソワソワしていたのに、マイペースなハクリを見てなんだか落ち着くのだった。
母が本棚を横に滑らせるように動かすと、そこには短剣から大剣まで、魔法使いが使う杖が何本かあり。全部で20本ほどの武器がズラッと並んだ壁が出て来た。
「さぁ、アピス。好きな杖を選んでね?ハクリちゃんも欲しいのがあればいいわよ〜?あっハクリちゃんはこの2つをプレゼントするわね。」
母は、尻尾のようなモコモコした装飾のついた帽子と、丈夫そうなポンチョをハクリにプレゼントするのだった。
「ほぉ!!アピママ!!申し訳なし…。」
「こら、ハクリちゃん!プレゼントは素直に喜ばなきゃ駄目よ??」
「ほぉ!!わかったぁ!ありがとぉアピママー!」
ハクリ(もち)は、母へ、ペコッと頭を下げるとクルッと回ってみせ、ニコニコするのだった。
アピスは、ズラッと並ぶ武器を見て考えている。
「…。ゆっくり考えなさい。そんなに時間はないけど、母さんはあっちで支度しといてあげるから。」
「アピママ、もち。手伝うのぉ!!」
「ウフフ。じゃーハクリちゃん。お願いしちゃおうかしら。」
「おまかせあれっ!!ほぉ〜!!」
母とハクリは、寝室から出て行ったが、アピスは、まだ武器を見つめ続けるのであった。