15話 母の帰宅
3度目の『氣』のポーズをとっていると、足がパンパンになっていた。ハクリは、あちこち家の中を見て、ほぉ!と言っている。
「ただいま〜!帰ったわよ〜!」
「んお。かえ…ってきたのぉ〜…。ンヌヌヌヌ…。」
「ほぉ!お帰りアピママ!!」
ハクリは玄関へ走っていった。この打ち解け具合は何だろう?ハクリが家族のように感じてしまうほどだった。
「ふぅ〜…ちょっと2人とも良いかしら?」
「「???」」
母は椅子に腰掛けると2人を呼んだ。
「まず、アピスなんで木の棒を割らなかったの??あれは緊急事態でしょ??」
「ごめんのぉ…。いやっ!!すぐ割ろうとしたんじゃ!でも、ビックリして落としてしまっての…。どこか草に紛れて拾えなかったんじゃ。」
「はぁ〜…2人とも無事だったから良かったけど。よく『レッドベアド』を倒せたわね。火傷もあったけど、頭への一撃が決めてね。あれはハクリちゃんがやったのね?」
「うん。もち剣でやったのぉ。」
「剣術…。潰れたようになってたから『氣』で叩き割った感じかしら?懐かしいわね〜!まぁそれは置いといて、『レッドベアド』は、この辺には出ることないのよ?1つ山向こうの荒野に生息しているの。森を見てきて、そのまま村長へ話をして、村の大人達に話をして回ったものだから、遅くなってごめんね。」
『レッドベアド』は、あの赤くなるクマの名前のようだ。この辺りに出ることのない生き物が出るのは、なぜ?とアピスは考えたが想像がつかなかった。母は、2人を交互に見ると想像もできない事を言った。
「これから支度をするわよ。2人は、村の人達と一緒に魔法都市【アストルム】へ向かいなさい。」
「へ??なんでじゃっ!?母は!?」
「私は村長たちと、村を守る為に残るわ。安心しなさい。避難するのにダンケやセレンも一緒だし、他の家族や大人達もいるから。」
「いやっ。守るって…。なにがどうなってそうなるじゃ!!」
突然すぎる母の話に声が大きくなってしまった。母は、ため息をつきながら話はじめた。
ハクリの来た町【カルーナ】は、3つ山を超えたところにあるのだが、方角で言うところの北東に位置する。冒険者ギルドがあるにも関わらず、寄せ集め剣士達が【カルーナ】から出発したのは、なにか少なからず2つの問題が起きているのでわないかということだった。
ハクリが村へ迷い混んだこと、『レッドベアド』が北側の森に現れたことから寄せ集め集団は、【カルーナ】から西の方角へ向かったのだと考えられるらしい。
つまり、普段はこの辺りに生息するはずのない魔獣が北から南方面へ逃げて来ている。数が増えたら村の人たちに死者が出る可能性が高い。ある程度チカラのある魔法使いで村を守り、子供達を南へ位置する魔法都市へ避難をさせよう。と村長との話し合いで結論が出たようだった。
「ほぉ…。アピママ…。もちは、【カルーナ】に帰れないの?」
「それも考えたわ、ただ冒険者ギルドも寄せ集めの剣士達も恐らく町を守る為に、それぞれの問題に立ち向かっているじゃないかと思うの。今から戻っても、町でも同じように避難を初めてるんじゃないかしら?」
「ほぉ…。カルーナ…。」
「ハクリのお父さんも、ひょっとしたらだけど、魔法都市へ避難しているかも知れないわよ?」
「ほぉ…。そうだのぉ!!もち。モチパパ探すのぉ!!」
2人は、情報を整理しきれず、顔を下へ落とし。固まるのだった。