14話 『氣』と『魔法』
お風呂でハクリに魔法を教えるというアピス。『氣』の説明を受けた時に、『魔法』に置き換えて説明するとどうなるのか考えながら、少しずつハクリ(もち)に話し始める。
「もっちー、『氣』は、お腹の下辺りなんじゃろ?『魔法』はの、頭の真ん中の少し上のイメージじゃ。そこでイメージを強くして、イメージが手から出てゆく感じ。」
「ほぉ…。アピちゃん。それだけなの!?『魔法』って。」
「それだけじゃ。」
「ほぉ…。じゃ〜足からも出せるの??」
「足から??魔法…。で、でるんじゃないかの??考えもしなかったけども。」
いくらユニークな発想を持っている生徒達でも、足から魔法出すなんてことをした生徒なんていなかったし、大人の魔法を見て育っているので、手もしくは杖の先。がアピスの中の常識だった。足から魔法が出てなにができるかなんてわからなかったけど。アピスの中でなにか弾けるような気がした。
「もっちーの足から魔法出してなにをするのじゃ??」
「えっ!!とくに考えてないのだけど…。出るのかなぁ?ってのぉ〜。はっはっは!!」
「なんじゃそれ〜!まぁやってみるじゃ。水のイメージを頭の真ん中の少し上で作るんじゃ。」
そう言うとハクリの両手をとり、水面に置く。水を感じながら、水のイメージを強めていく練習。
「ほぉ…ほぉ…ほぉ…。ほぉ…。」
「目を閉じたほうが効果的じゃぞ〜。水のイメージを強くするんじゃ。」
「ほぉ…。」
なにか、身体の内側で作った物を、身体に流す。この点については『氣』も『魔法』も似ていると思ったアピス。『しっかし、もっちーの頭の毛洗ったのに、なんでホワっとしてるんじゃ?しかも薬草と間違えたあの毛…。癖っ毛過ぎるのぉ。』薬草と間違えた毛が立っていて湯気と一緒になってユランユラン揺れている。
「アピちゃん。このまま、ずっとこのままなのか??」
「すまぬ、見とれていたじゃ。えっとイメージを強くして、手で水を持ち上げるじゃ。」
「見とれて?えっ!?なにに??」
水を持ち上げようと、ハクリは水面をペチャペチャさせていたが、魔法の練習をしているうちに、手がふやけてシワシワの上にのぼせそうになったので、お風呂を上がることにした。
母は、まだ帰って来てないみたいだ。あのクマがそんなに問題なのだろうか?2人は寝間着を着て夕食を取った部屋にいる。ハクリの寝間着はアピスの物だ。
「よしっ!!」
「んっ!?なんじゃ?」
「今度は、もちが、アピちゃんに『氣』を教えるのぉ!!」
「おー!お願いするじゃ〜!」
「『魔法』と違って、練習大変かものぉ。」
「むはぁ…。がんばるっ!」
『氣』の練習は、背筋を伸ばしたまま腰を下げていき、両手でナニカを抱えるポーズだった。
「そ〜!アピちゃん上手だのぉ!!」
「じょっ。じょうずって〜。ポーズだけじゃ。ろ。ぐむむむ…。」
「そのままーそのままー。あの暖かい感じをお腹の下に感じるようになるまで〜のぉ。」
アピスはプルプルしていた。あちこち既に限界近い。魔法と全然違う。少しでも気を抜くと背筋も曲がるし腰も上がってしまう。いつになったら暖かい感じがするのか。簡単に出来れば苦労はないのだが、この姿勢は大変だ。
「ぐぁぁっ…げ、げんかいじゃ〜…」
「ほぉ!これから隙あらばこれをやるのだっ!」
アピスは、その場でグニャっと倒れ込む。色んな意味でグニャっとなった。
「魔法より、大分しんどいじゃ…。」