11話 剣術
『なんじゃろ、お腹の辺りまで暖かい。それに上の方へ流れている感じがする。』
真っ赤になったクマは凄い勢いで走ってくるが、ハクリからは力みと言うより、脱力に近いことが感じ取れた。
強張るより柔らかいような、でも力強い。
「もっちー!!来てる来てる来てる来てる来てる!!」
「ほぉぉ…。」
剣を振り上げたまま動かないハクリを見捨てて逃げることなんて出来ないので、ハクリの腰にしがみつきながらクネクネしていた。
息を荒くし、雄叫びを上げて真っ赤なクマはアピス達へ向かって突っ込んだ。
ズガジャッ!!!
ハクリの体が急にストンと落ちた様に感じた瞬間、なにかが砕け飛び散るような気持ち悪い音がしたかと思ったら衝撃が2人を襲った。
「んがぁ!!」
2メートルほど飛ばされたようだが、ハクリは立っていた。アピスにしがみつかれながら。
「アピちゃん大丈夫??」
「え??大丈夫じゃけど…もっちーは?クマは??」
「もちは、頑丈だからのぉ!!はっはっは!!クマはのぉ…やっぱ、もち剣じゃ切れなかったのぉ!へなちょこだのぉ!」
クマを見てみると、頭の真ん中がグチャッと変形している、赤く染まった毛も今は真っ黒に戻っていた。斬られたような傷ではなく、とても重たいもので潰されたような傷。
「もっちー…。すごぉ…。」
「凄くないのぉ!!アピちゃんの魔法のが凄い!!でも、凄い怖かったのぉ!!はっはっは!」
ハクリは剣についた血を払い、腰に収める。アピスは、しばらく地面にペタンと座ったままだった。
「アピちゃん!どこかケガしてないか??」
「大丈夫。なんか腰抜けちゃったじゃ。」
「ほぉぉ。」
クマからの攻撃を盾で防ぎ、突っ込んで来たクマの頭へ剣で一撃。アピスは頭でハクリの攻防を何度も思い返していた。
「もっちー。わしに剣を教えて。」
「えっ!?えっ!?」
アピスは、隣に座ったハクリに。星空に少し欠けた月を見ながら、ポロッとお願いしたのだった。