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異世界諜報員  作者: 東北 なすの
魔法の国の塹壕戦
3/3

(2)魔法の国の事情

長らくお待たせして、すみませんでした!

孤独で、死の危険と隣り合わせだった森を抜け、坂本の心には少しばかり、余裕ができていた。

石畳で舗装された道をコツコツと踏む音があたりに響く。

しかし、その音は、やがて、賑やかな街の音で即座にかき消され。

坂本は辺りを見渡しながら、木造住宅の木のいい匂いを楽しむ。

台車の上に作った、移動可能の屋台など、今の時代の日本では見れないものが、異世界という雰囲気をかもし出している。



「これは驚きだな。本当に。来てしまったのか…。この異世界に」

坂本がいた地球上で、このような風景は、探そうと思えば見つかるのかもしれないが、ここは、紛れもなく異次元に位置する国。日本にもないし、地球上にも存在しない。

坂本は、子どもの時、家族と行った初めての海外旅行のことを思い出した。今、その時と同じようにドキドキでワクワクだった。

ーーあそこは……、フランスだったかな。当時ハマってたアニメの聖地だった。石畳みと木組みの家があるのは同じような世界観だが、この世界と、そこは、全然違う。



坂本は、時計を見た。この時計を見る限り、この世界は、日本と約4時間遅れていると推測できる。

この時計は12時を指している。つまり、今の時間は、およそ、朝の8時だ。

ーー朝から活気ある街だな。まあ、とにかく、近いうちに、時計をここの時刻に合わせておく必要があるな。



そこで坂本は、当初の目的を思い出した。

ーーそうだ。どこかの安い宿で、この服を洗わないとな。

坂本は宿を探した。

ーー宿といっても、1日や2日、いるわけじゃない。この地の金も持ってないし、首都も、軍事施設の場所も分からない。長居することになる。まずはここで、しばらく、働らきながら、この世界について学ぶしかないな。



坂本は、そのことを念頭に置き、街の散策をしながら、お手頃な宿を探し始めた。

坂本がいるこの村は、大きめな商店街みたいなところだった。

食堂、武器屋、修理屋、各種売店、そして宿。いろんなお店が軒を連ねていた。

中心部には、地下からくみ上げた水が噴水で吹き出ていた。ここから各建物に水が送られるらしい。



ーー宿を見た限り、結構豪華な宿から、庶民向けのお手頃価格のもあったな。だが、今は、一文無しだから、後払いのところがいいのかもしれないな。なら、さっき行ったあの宿なんてどうだろう。

坂本は、途中に見つけた宿へと、向かった。

そこは、宿というより、喫茶店みたいな雰囲気が強い建物だった。

坂本がドアを開けると、ベルの心地よい音が坂本を迎えた。



ーーやはり、1階が喫茶店か。

客が数人、新聞や小説に目を通し、コーヒーをすすっている。

人間とは異なった種類の者もいた。

ーーこの者から、後で話を聞きたいな。

宿は、1階の部屋の隅にある、小さな階段で行けるみたいだ。


「いらっしゃいませ!」


店の1階には、2人の店員がいた。親子だろうか。そのうちの親にあたる人が、挨拶をしてくれた。


「こんにちは、宿泊をしたくてきたのですが……」


「宿泊でございますね。何泊にいたしましょうか?」


「………、じゃあ、7泊にしておきたいと思います」


「7泊ですか?……分かりました」


「7泊だといくら位になりそうですかね?」


「そうですね……、7泊ですと、14000フラスになります。ですが、お客様は、軍人ですので半額の7000フラスですね」


「おぉ……。分かりました。ありがとうございます」

ーー軍人の人はこんな優遇までされるなんて、結構な軍事国家なんだな。



「お部屋は、二階に上がっていただいて102号室になります。後ほど、おしぼりとお茶をお持ちしますので、お待ちください。」


坂本は、鍵をもらった。


「分かりました。……あと、もうひとついいですか?」


「はい?」


ここで坂本は、モーリスの服をカバンから取り出した。


「この辺りで、警備をしてた兵士の遺品なんですが…、洗ってもらうことってできないですかね……?」


「……はい。承りました。すぐに洗ってお部屋にお持ちします」


「ありがとうございます」


「それでは、ごゆっくりどうぞ〜」



坂本は階段を登って2階に行った。

木製の階段は、一段一段踏み込むたびに、ミシミシと音を立てる。

ーーふう。これでとにかく、一安心だな。宿も見つけたし、服も洗ってもらえる。それに、8日もあれば、お金も貯まると思う。しばらく休んだら、仕事を探しに行こう。



「102号室…ここか」


坂本は、自分が泊まる部屋の前に着いた。

鍵を開け、ドアを開けた。

部屋は、狭くなく、1人で泊まるのには丁度いい広さだが、1人で泊まるのには多すぎる設備があった。窓が2つあり、冷蔵庫、金庫、洗面台、そしてシングルのベッドが部屋の中に鎮座している。



ーー……思ってたよりも、豪華だな。建物が狭いから、ベッドしかないと思っていたけど。日当たりもいいし、少しの間泊まるなら丁度いいな。

坂本は、部屋に置いてある金庫に、荷物を入れ、上着と重い軍服を脱いだ。

坂本の肩は軽くなり、袖や首から伝わる、若干の涼しさが坂本の体力を回復させる。



坂本は窓から、村を見下ろした。

大きく、太い杖を持った人や、剣をブンブン振り回している人。たくさんの人がいた。

どれも日本、いや、地球では見ることができない人種である。

ーー本当にたくさんの人がいるんだな。洗濯物を取りに行くついでに喫茶店にいたあの者に話を聞きに行こう。

部屋を出ると、階段を下り、目的の人へと直行した。



「どうも、こんにちは」


皮膚が、人間よりもゴツゴツしており、茶色である。体型も人間よりも大きく、背が高そうである。

その人は、低い声で言った。


「こんにちは。兵隊さんの方ですか。お疲れ様です」


ーーやはりここは軍事国家なのか。兵士への礼儀がとても良いな。平和そうな日本と比べると、違和感を感じる。


「ありがとうございます。ところで、聞きたいことがあるのですが、」


坂本は、単刀直入に聞こうとした。


「この世界には、人間の他に、どのような種族の方がいらっしゃるのでしょうか」


「兵隊さんが疑問に思われるには、不思議なことですね、この国の兵士は、高度な知識の持ち主だと聞いていたのですが…」


「すみません。任務の遂行途中で記憶障害を起こしまして」


ーーここは、嘘をつくことにした。


「そうでしたか。では、常識的な知識について話します。この世界には、あなたのような人類種、私のような重獣種、小人の軽獣種、生存歴史の長い神龍種、高度な知能を持つ才類種の5種が今は生存します。知能面でも運動面でも人類種は劣っているのですが、各国を統治してるのは、人類種の人が多いんです。ちなみに、この国も人類種の指導者がいます」


「なるほど。聞く限り、種族別で国を作るのではなく、5種の生き物が種族の関係が無く共に国を作ってるという事ですね」


「そうです。数百年前は、5種の生き物が別々で国を作って行ったのですが、ある時、戦争が起こり、それが集結以来、種族の壁が無く国を作っていけるようになりました。」


「戦争、ですか。」


「はい。この話は、各種の能力にも関係してきます。運動能力は重獣種が一番優秀で、肉弾戦に長けています。銃弾が当たっても、余裕で生存ができるほどの体力もあります。知的能力では、才類種。科学を味方につけ、戦争で優位に立ちました。しかし、それを凌ぐものを人類種は持っていました。それが、アレです」


その人は、そう言うと真上を指差した。

そこには、電球が光っている。

「照明……?」


「そうです。照明は、魔力で光ります。人間は、昼間、太陽から降り注ぐ膨大なエネルギーを魔力という形で保存できる力があったのです。あらゆる物理の法則を揺るがす魔力の前には、重獣種のパンチも、才類種の弾も歯が立ちませんでした。魔力を操れるという事が、人類種があらゆる国を統治することができた理由と言えるでしょう」


ーーその人の話はとても興味深かった。しかし、あまりにも話に熱中した事で忘れていたことがあった。それは、この国は、魔法の力で成り立つ「魔法の国」である、ということだ。

「エージェント」と「スパイ」という、よく似た言葉があります。

エージェントとは自分の国の諜報員で

スパイは敵国の諜報員なのです。

坂本で例えると、日本のエージェント。パラテュールのスパイ、という意味になります。

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