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異世界諜報員  作者: 東北 なすの
魔法の国の塹壕戦
2/3

(1)異世界にやってきた諜報員

プロローグで切らず、1話のページに来てくださり、ありがとうございます。

ーーそれにしても。異世界にやってきて、いきなり警備兵に攻撃を受けるとは、思ってもみなかった。


彼の名は、坂本翔。日本から、この異世界に送られた、諜報員だ。


坂本は、もう一度、モーリスから奪い取った身分証を、自分のズボンのポケットから取り出した。

名前の下には、年齢25。性別、男。出身地、アーミード地区。という、個人情報が書かれていた。


そして坂本は、身分証に貼られている写真をにらんだ。

坂本とモーリスは、似てるといえば似てる。似てないと言われれば似てない。という微妙な顔だった。


顔をしかめながらこう呟いた。

「まあ、もし、この国の奴にいろいろと言われたら、その時は、任務中の事故やストレスで輪郭や目つきが変わったとか、言い訳すればいいかな」


ーーさてと。俺は、この国の情報を諜報をするんだから、この、モーリスというやつになりすまして、軍に近寄ったほうがいいのか。


この森に出てきて、既に約9〜10時間という時間が経過していた。


モーリスと戦った時から既に1時間から、1時間30分くらい経っていた。間も無く、日もくれるのではないかというところだ。


ーーもうそろそろ、どこかの村とか街に出ればいいんだが…。日本から持ち込んだ備蓄食料は、多くはないのに…。


坂本は、目を細めて辺りを見渡したが、この森が終わりそうな気配がなかった。


坂本は、持ち物を確認した。

日本から持ち込んだものは、拳銃、ダガーナイフ、防寒具と軍手、ライター、懐中電灯、無線機、双眼鏡、調査用紙と筆記用具、備蓄食料2食分。

この持ち物。どう考えても、サバイバルには向いていないのだ。

それは、坂本の任務と関係がある。坂本の任務は、この国の軍部に潜入し、諜報を行うことであり、サバイバルという行動は予定されていないのだ。


ーーこの分では、今夜は、この森で眠らないといけないのか。

坂本は、今日は、この森を抜け出すことよりも、寝るために安全な場所を探すということを目的とした。


ーー寝ると言っても、地面に寝るわけにはいかないからな、丈夫な木の枝とかで寝るか。

坂本が探していた丈夫で寝るのに安全な木はすぐに見つかった。

今夜は、そこで、防寒具をつけて寝ることにした。


ーー今の気温では、おそらく、夜はもっと冷え込む。そうなれば、今後の任務にも影響が出るからな。その後は、火だ。小さくても、火を木の下に炊けば、動物はやってこないはずだ。寒くなったら暖も取れるだろうし。

火をつけるライターは、幸いにも、持ち込んでいた。

手で風を防ぎ、ライターで落ち葉に火をつける。2〜3回、点火のボタンを押した。その後、小さな木から徐々に引火させていく。

その後、問題なく、火は木に着火した。

ーーこういうところは、あっちの世界と同じなんだな。


綺麗なオレンジ色になった炎を見下ろし、坂本は、言った。

ーーこんぐらいの火力でいいよな。あと、木もまだストックがある。

あとは、寝床の設定。寝ていても、毒を持った虫や、凶暴なシロアリ、野生動物への対処は心得なくてはならない。坂本は、そういうところは、何度も訓練を受けてきた。


ーーさてと、次は、飯だ。

どんな状況であっても、飯は人の心に安心をもたらしてくれる。

坂本が日本から持って来た食料は、水がなくても、熱がなくてもたべれるものだ。小さいクッキーだが、高カロリーなのだ。

サクッ。

クッキーを咀嚼した途端、すでに暗くなっている坂本の周りに、心地よい音が響いた。

味は濃いめ。美味しいとは言えないな。


クッキーを食べ終えた坂本は、焚き火にあたり暖をとることにした。

火は、人の心を落ち着かせてくれる。暖かくて心に安らぎが持てる。なんか不思議だ。

手が十分と暖まったのを覚えた坂本は、今日のことについて振り返ることにした。


ーー昼間に倒した、モーリスは。アイツは、この森の警備をする警備兵であるらしい。それは、確実だな。奴の持ち物の中に計画表があった。……それなら、なぜ、この森は警備する必要があるんだ…?国境が近いからか?大きな事故や事件でもあったのか?それとも、ここら辺に隠さなければならないものがあったりとか…

坂本はそこが疑問でたまらなかった。


ーーまあ、どんな理由であろうと、この森が警備を必要とする場所ならば、警備兵は1人だけではなく、もっといるはずだ。ならば、明日は、早く起きてこの森を抜けなければならないな。


そう考えると、坂本は、焚き火の中の、まだ炭化してない薪を取り除き、火力を減らした。

ーーそれじゃあ、寝るか。早起きしないとならないしな。

防寒具を羽織り、丈夫な木の枝の上で坂本は横になった。

枝は、ミシミシと不安な音を出したが、一晩は持つだろうと坂本は考え、眠った。


なんの振動も、音も、その他の衝撃も、受けることなく、坂本は自然と起床することができた。

この地の朝は、日本の朝と同じ感じだ。

坂本は時計に目をやった。

時計は、日本時間の午前9時を指していた。

ーーなるほどな。1日の長さは大体地球と同じ。日本とは、時差がある程度か。そして、呼吸のしやすさから酸素濃度、二酸化炭素濃度に日本とあまり変化はない。重力も変わらないな

この世界は、基本的なつくりが地球と似ている。それが、坂本の最初の諜報情報だ。


坂本は、掛け布団代わりの防寒具を、そのまま身につけ、木の下に降りた。

坂本の朝は、決まっていつも、伸びのストレッチをするところから始まる。

「ふぁああ」

深呼吸混じりのあくびをした。

その息が白かったことから、まだ早い朝だということが分かる。

忘れ物確認のため、再度、木の周りと木の枝を確認した。


「よし、行くか」

坂本は歩き出した。

昨日と変わらない、木々が織りなす景色を横目に、道なき道を歩いて行く。


いや、正確には、その景色は少しずつ変わって行った。

歩いて行くたびに、木々が減っていった。

それに比例して、地面の落ち葉の数も減ってきていた。

坂本は、双眼鏡を取り出し、遠くの景色を見た。

すると、木々の隙間のずっと遠くに、民家が見えてきた。

その景色はまだ冴えない。


だが、民家があるという事実を知った坂本はそこから走り出した。

自分と呼吸と足の回転が同期して速くなっていく。

明るさが増していく。木々の隙間から、暖かい日差しが眼に入ってくる。眩しい。だがそれが嬉しい。


空気がガラッと変わった。森林のジメジメとした空気から、人間が生活するのに適度な湿度に。

そう、ついにたどり着いたのだ。

石で舗装され、木と石でできた家。日本ではなかなか見ることのできない服装…。

異世界の人間が住む街に。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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