第6話 私魔法使えるのかな?
side:庭谷優花
突然ですけど私、女神様の力で異世界転生しました。
ショッピングしながら下校していた時に爆発した店舗から飛んできたガラス片で二人揃って貫かれてしまった。
とんでもなく運が悪いと思ったが女神様の手違いに巻き込んでしまったそうで、そのまま復活としたいがシステム上問題があるそうで。
女神様管轄の世界で偉人ポイントを稼げば力を持ったまま戻れるし願いを1つぐらいは叶えてくれるし、そっちの世界で一生を終えてもいいそうだ。
突然の死に絶望したが恩のある大輝のお母さんを残して逝く訳にはいかない。
大輝もいっしょに死んだし、何故か天音姉さんも巻き込まれたようで、この幼馴染メンツなら魔王でも災害でも解決してやろうじゃない。意気込んだまではよかった。
現地集合で一人増えていた。
幼馴染'sに目で確認するけど誰も知らない人みたい。
「うし、パッと見最年長みたいだから俺からするぞ。」
話を始めてくれるのはうれしいがこっちに投げないで欲しい。幼馴染を含めて自己紹介をするというのは少し恥ずかしい。
案の定3人組の男女の仲を勘違いしているようでうらやましそうな目をしていた。私たちはまだそんな関係ではない。今まで何度言った事か。
おまけに全員が終わった後に三夜沢さんが爆弾を投げ込んだ。"珍しい"仕事をしていてしまったのだ。やっぱり天音姉さんが大暴走した。
「……なんてことをしてくれたんでしょう。」
小声でつぶやいた程度なので聞こえはしなかっただろう。まさに劇的である。さっきまでいた淑女はいったいどこへな顔をして半ば飛び掛るように三夜沢さんの周りをぐるぐる回りだした。
まぁこんな世界に来た以上こうなることは目に見えていたが見えないことにしていただけだ。
魔術長のボッシュさんが止めに入っただけで離れたのでまだヤバイとこまでいっていない。これから説明に入るらしいが彼女は人間らしさを保てるだろうか。
大輝くんも目を輝かせているのである意味天音姉さん並みに役に立たないだろう。ここは私がしっかりしないと。
無理でした。
自動装着の宝石。魔術画面。やっぱり耐えられるわけない。すでにとろけきったような顔で画面を操作している。
……いや、まだ大丈夫。周りの人には危害を加えていないからセーフ。うん、それまでには止めよう。
というより本当にこの画面とやら開くのだろうか?付けるまでは私でも出来るようだ。ただ面前には一向に画面は出てこない。
何かコツがあるのだろうか?力を込めて頭に血が上っても開かない。頭から血を下げて深呼吸して集中しても出ない。
「…え?何もでないんだけど。……このっ!開け!開きなさいよ!……よし!」
おそらく前に出ているであろう場所を軽く殴ると薄氷のような感触がある、殴った部分が反応したように色が付いた。力を込めて殴ると画面が全て表示された。やっぱりこの手に限る。
魔術に通じた人間でも半分ぐらいしか表示させられないようなのでこの開き方でも問題はないだろう。ボッシュさんは少し顔を引きつらせていたけど。
魔術画面には一部の物を除き全てが明るく光っていた。多分光っていないのが使えないようだが名前的に防御や回復系っぽい。ちまちまとした援護が苦手なので攻撃が使えればいいと思っていたので上々だ。
色々確認しているとステータス表示珠が出てきた。
マズイ。さっきまでは自分の事で手一杯で忘れていたがもう隣にいた天音姉さんを見たくない。呼吸音がコホォ…とかになってるし。目とか光ってそう。
三夜沢さんが色々と聞いているけど隣の生命体が怖くて声が遠く聞こえる。すぐに羽交い絞めにしなければと考え直し隣を向くが既に姿がなく、表示球のそばの大輝くんに飛びついていた。
なんとか順番を変えることで惨劇は避けたようだったがもう相当手遅れである。もう活動限界が近いぐらいまで脳が回っていない。
泥沼のように動く知り合いを眺めていると心配そうに小声で聞いてくる初心者がいつの間にか隣にいた。
「アレって治らないのかな?というかいつもあんな感じ?」
「そうですねぇ、あそこまではめったにならないんですけど。
脳の許容量超えてる感じは否めないのでもう1つか2つ好奇心をくすぐるものが加われば気絶するかと。」
「気絶するほどなのか、危ないな。」
そうか、慣れてしまったので忘れていたが知恵熱暴走で気絶はまずい物だった。
三夜沢さんにはこうまで染まって欲しくないがこの人なんだか適応力高そうなんだよなぁ。女神様の説明の場にいなかったのにケロッとしてるし。
「本当にめったにあそこまではいかないんですけどね……。」
嘘である。
めったに(数年に1度)どころか結構な頻度(半月に1度)である。それも元の世界でだ。
こんなびっくりマジカルワールドで万国人間どっきりショーなんかやられた日には1日に数度はなりそうである。
早く魔法の力でなんとかできるように調べよう。魔法世界なんだから何か治すようなものが一つぐらいあるだろう。そう心に誓っていた。
三夜沢さんは少し悩んでいるような体制をした後、"なにか"を体中から右腕に移し、緑色に変化したものを撃ち出しそれは天音姉さんに直撃した。
突然の行動に呆然としていたが、"なにか"が当たった天音姉さんを見ると正常に戻ったように見える。
……あぁ、待て、落ち着け私。まさか私がたった今望んだものを偶然同時期にこっちに来た人間が叶えることができるだろうか。いや、ない。
きっと身動きを止めるような、もしくは歩行幇助のような……あっはい、治療でしたか。そうですか。ありがとうございます。
……いやいやいやいや。そんな急に治るはずがアレには私も天音姉さんの家の人たちも方々に手を尽くしてですね。
「えぇ。すみません勇者様方。ステータス表示ですが三夜沢様、白沢様、庭谷様、新田様の順でよろしいでしょうか?」
「はい」「私達はかまいませんが」
大輝くんの回答にあわせて言ったがこの際順番なんてどうでもいい。
それよりも好奇心が水道管破裂のように湧き出ているだろう天音姉さんが順番をずらされて大丈夫なのだろうか。これであの魔法?が本当に治療+抑制までしているのかがはっきりと
「はい、大丈夫です。」
……嘘。誰?完璧に防いでる。なにこの秘術。
「「三夜沢さん、その魔法を教えてください!」」
食い気味過ぎた気もするけれど、しっかりと言質は獲ったので良し。
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三夜沢さんの計測時に急に地面に現れたヒビが扉から出て行き。
天音姉さんのステータス解説を教国の名を出して拒否した以外は何も問題はなかった。
なんだろう、ステータス表示をすると問題も一緒に起こるのだろうか。次は私の番。何も起こらないでくれますように。そう切に願いながら前に出た。
「では、庭谷様どうぞ。」
『目の前にいるフォスラです。先ほど白沢様にも説明しましたが過去の悲劇の後、改良された表示球は身長、体重、すりーさいずは載せません。
安心してお使いください。そして改良をした先代勇者様に感謝の祈りをお願いいたします。』
改良した勇者様は大変よくわかってる。これを製造した勇者様とやらはいったい何を考えて表示させてしまったのだろうか。
姓名:庭谷 優花
性別:女
年齢:17歳
種族:平人
レベル:1
ステータス:体力B 魔力C 筋力S 知力C 俊敏A 運D
特殊スキル:【大魔導】【魔力変換率・極】【剛拳】【神体】【乙女の勘】
……脳筋、かな?特に後半。大魔導とか変換率とかあるから魔法も使えるようだろうけど、Cなら良い方だし。
確かに来てから体の軽さは感じていたけれど、しっかり指標を出されると納得できる。
フォスラさんがおでこの光の羽を広げて解説を始めた。
「ステータスは見てのとおり素晴らしい前衛型ですね。魔法も普通以上に使えるようになりますね。
【大魔導】はどうやら全属性攻撃魔法の補助とブーストができますね。これは実質基本魔法と三神魔法の魔力変換を持っているようなものですね。
それに加えて【大魔導】は【加速詠唱】【無詠唱補助】【並行処理・極】も併せ持っていますね。
完全詠唱をせずに短縮詠唱でき、ある程度の魔法は無詠唱ででき、10以上の魔法をあわせて使えますね。」
脳筋ではないな。そこまで聞いて魔法が出来ないのはありえなくなった。
「【魔力変換率・極】は少しの魔力で最大限以上の魔法を行使することが出来ますね。
最下級の火球ぐらいの魔力で最上級の天獄炎星ぐらいの威力が出せますね。
……あぁ、砕いて説明すると直径20cmの火球を作る魔力で直径100mの太陽が出来ると思っていただければ。」
……んん?それ、私魔法使えるのかな?ちょっとやってみようか。
「【剛拳】と【神体】も補助とブーストですね。筋力強化で攻撃と防御を底上げ、反応速度や身体操作を向上させます。
この二つだけで赤子が岩を割ると聞きます。
【乙女の勘】は【恋愛感知】と【第六感・極】の併せスキルですね。……ってまさか魔法使おうとしてます?」
「あっわかりました?ところでコレ止まらないみたいなんですけどどうすればいいですかね?」
そう、こっそりかんしゃく玉のようなちょっと爆発する魔法を使おうとイメージしたのだが光の珠が米粒サイズからドンドン大きくなっておりついに手のひらサイズになった。
「……私が障壁を作ります。白沢様、庭谷様へ防御魔法を掛けてもらってもいいですか?最大出力で。
庭谷様、そこまでいくともう安全な方法は小さいうちに爆発させる以外ありません。頑張って耐えてください。」
やってしまった。今手のひらにあるのは相当な危険物体らしい。天音姉さんも焦りながら三夜沢さんにコツを教えてもらって魔法を使っているようだ。
透明な壁が何重にも覆われ、私の体もほんのり光りだした。
「…………もう爆発させて良いんですかね?」
「大丈夫です。これならおそらく全員耐えられますし、城へのダメージもないでしょう。」
GOサインが降りたので手のひらで光っている珠に手刀を落す。するとすさまじい炸裂音とともに地面を揺るがし、辺りには煙が充満した。
誰かはわからないが風で煙を換気し、いるもの全員がお互いに無事を確かめ合っていた。そのなかボッシュさんが前に出てきて、
「申し訳ありませんが何か対策を取るかするまでは許可なく魔法を使用することを禁じます。」
「……いえ、私のほうこそ軽率な行動をし申し訳ありませんでした。」
この程度ですんでよかった。よくないが。
禁止命令を受けながらがっくりし後ろに下がった。
ラナス『爆発魔法って風と火の合わせ技で風強めだけどさ、
火強めだとどうなるの?』
ティオ『とても知ってる側とは思えない発言よ姉さん。』
ラナス『いや、まだ本編で説明ないわけだけどさ、一応よ一応。』
ティオ『火と風の場合は炎熱魔法です。
火土で融解、火水で隔絶、土火で錬金、土水で樹木、土風で砂塵、
水土で地脈、水風で氷結、水火で霧隠、風土で重力、風水で暴風。
これに三神魔法の光闇無も加わりますし、無属性自体が範囲が広いです。
つまりもっと増えます。』
ラナス『はい!解説お疲れ!次回、勇者現る!』
ティオ『たまには解説変わってください。』