第1話 チートとハーレムの異世界転生!どう?
出来上がり次第上げます。ガンバリマス。
俺の名前は三夜沢 和晶。21歳=彼女いない暦、童貞。まだぺーぺーの社会人。
しいて言うなら少し変わった職種をやってるぐらいかな。
たまたま給料日に、あの待ち続けたラノベ。5年ぶりの続刊が発売!
給料日前だったら血の涙を流していたぜ!そんなことを考えながらすみやかに帰宅したあと人目も気にせず若干スキップ気味に走っている。
話が盛り上がりクライマックス一歩手前で作者さんが突然の難病の養生宣言により休刊に入った。しかし、1ヵ月後に作者さんのSNSから親族の手によりリアル失踪が報じられた時はこの世の終わりを感じていた。まぁ直後から色々とセンサーにかかる新刊があったのでゆるやかに立ち直ったが。
そしてほんの数ヶ月前。突然作者さんが戻ってきたと思ったら難病は完治、恐ろしい速度で書きあげ、最終章に入るところから終わるまでの全10冊を一気に完成。
まさかの限定版として10冊を纏めたセットが今日まさに発売なのである。主人公の出生やら複数ヒロインの行く末やらも気になるが今までの伏線全回収もどうなっていることやら。
裏道を走りぬけあまり車の通らない住宅街を選択し、なるべく足を止めないようにあれこれ考察しながらかーなーり浮かれ気分で周りをろくに見ていなかった。
突然だがこの住宅街には一本だけ若干道幅が広い道がある。住宅街の北と南の大通りを繋ぐ道である。
信号がなく大通りから抜け出たかっ飛ばす車が多い故に事故が多発。周辺住民から苦情が多数寄せられるあの十字路で俺はかっ飛ばす大型トラックの音に気付けなかった。そして
道路へ出る寸前に頭を揺さぶられるような嫌な予感がして立ち止まる。目の前約20cm先を大型トラックがけたたましくクラクションを鳴らしながら猛スピードで突き抜けていった。
中二病乙と言われてしまっていた時期もあったが昔から本当に危ないことがある直前に虫の知らせが来る。大きな手により頭をシェイクされるような、それで何度救われたことか。
というより昔から何かと危ないことが起きる。今回のようなことも日常茶飯事だ。
俺は避け切れたが目の前で起こったことに呆然と立ち尽くした。自分だったから良かったもののあの速度でここを通るだなんてやはりおかしいだろ。車のプリントされた名前調べてやろうかとも思ったが。
こんなところでぼーっとしている場合ではなかったと本の事を思い出し再び歩き出した。
この辺りには世間話好きのおばちゃんがいる。家から飛び出してきたらやれ大丈夫か、やれどこの車だで30分は時間をとられてしまう。
早々に立ち去ったのはいい判断だった。歩き出して少したったところで後ろからおばちゃんたちの話し声が聞こえ出した。
住宅街を抜けもうそろそろ商店街。道路は無機質な黒のアスファルトから石レンガを敷いたような道になっており、人もまばらに見えてきた。
いや~それにしてもカップル多いな全員爆発したら商店街ごと吹き飛びそうだ、いったいどこからこんだけ沸いてくるんだろうな。これだから花が咲く頃と海開き後と秋の肌寒くなった辺りとクリスマス付近は嫌いなんだ。
なんて考えながら悔しさを糧に走りを早くしだしていると10mもない先の路地から温厚そうな黒髪のイケメンと一歩ぐらい後ろを歩く笑顔の眩しい美女カップルが歩いてくる。
う~んこういうカップルは何故かほほえましいんだよな。なんて考えてるとそのカップルの後ろから同じく路地を出てきたマスクとサングラスをした挙動が見るからに不審者なデブが手持ちのカバンから出刃包丁を取り出していた。
出し終わったカバンを投げ捨て、そしてカップルのイケメンに向かって弾け出た。
まだあのカップルからは見えていないであろう凶刃が襲いかかろうという瞬間俺は体が反射的に動き、そして、カップルの間を裂くように足を入れイケメンへ横に押すようにおもいっきり足裏で押した。蹴ってはいない。押した。
吹っ飛ぶイケメン、口をあけたままその場で凍ったように止まる美女。そしてそのまま転がってくる岩のような丸い体が刃物をそのまま俺に向けて突っ込み
足で押した勢いに乗せて体を翻し丸岩の突進を間一髪で避けた。標的を見失ったソレは石畳の道に足をもつれさせ綺麗に腹から転んだ。
俺は出刃包丁を離れるように蹴り飛ばしそのまま上に乗り押さえた。臭いが少々厳しいがまさに命がけの状態で構っていられなかった。
美女のほうが携帯から警察に連絡を入れているのが目の隅に止まる。
いままでの経験からいってこのまま押さえていると下手すれば相当な時間が事後処理にかかる。これはマズイ。
家を出る前に本屋の店員に在庫確認をしたが「まだあるにはあるが出るときは出す。」とあまり良くない返事しかもらえなかった。直前まで仕事が忙しいせいで予約も忘れていたのがここに来てこれほど響くとは。
そのまま警察が駆けつけるまで居れないことを素直に言い、復帰したイケメンとそこら辺にいた男性に頼み込みこの場をあとにすることにした。
その際聞いた話によるとなんでも美女のほうを長年狙っていたストーカーだったそうで蹴り飛ばしてしまったのにイケメンさんは快く許してくれた、それどころか助けてくれたお礼に何かしたいと言い出した。そう言われても俺は早く本を買いに行きたいのだ。
「もし誰か困っている人がいたら助けてあげてください。
自分は今間に合ってますので。」
なんか宗教断っているみたいな言い方だなこれ。と思ったのは内緒。まぁイケメンさんは顔を輝かせて了承していたからいいけど。
他にも何かお礼がどうのと言われたが(そろそろ走らないと閉店時間になりそうだ)としか考えていなく覚えていない。
少し息を切らせながら走っていると飲食店が多くなってきた。
もう胸が痛い、ゼーゼー言いながら踏ん張って足を動かす。なにせ本屋まであと数軒先。だがもう体が動きにくい。
街中走ってこれ。メロスとかいったいどんな化物だよ。とわけわからないボケをしながら少し足を止めた。
その時、今までにないほどの嫌な予感が走る。
というか頭の中に警告まで聞こえた。
『今すぐ全力で前か後ろに跳べ!地面に伏せろ!』
そして右側の最近長いこと定休日札のかかった店舗の窓ガラスから見える店舗内がが赤く光ったと同時に
何がと理解する前に体が動いた。全ての力を振り絞るように急激に膝が曲がり地面を蹴り抜いた。
低空を飛行するようにそのまま服や体のことを考えず滑るように地面に着陸した。と同時に今までいた辺りに猛烈な爆風と透明な刃物が飛び散る。
後を追う形で建物内にあったであろう物が道路に向かって散乱した。
最後に店舗に空いた穴から黒い煙が立ち上っていた。這う様に店の前を離れたところで咳き込みうつ伏せから仰向けに体を回した。
火事の時には回りは迅速に動くって本当なんだな。周辺の店舗から人が何事かと出てきて呆然とする人、消火のための機材を探す人、110番する人。
その場で倒れている自分も誰かが担いで動かす。少し遅れて全身に痛みが走る。
……あぁ、これは今日買いに行くのは無理だな。次に増版で入るのは何ヶ月先かな。ア○ゾンに出てないかな。とか漸く諦めていた。
なんとか直撃は避けたがさすがにすぐに動くことはできそうにない。
仰向けに寝かしなおしてもらい、やっと一息と思ったその時。
(ザッ… なんで……れを回避す…………いのか………)
頭に響く声。ラジオの周波数を回していて急に掠めたそんな感じで聞こえ出した。
変声機を使ったような誰の声と判別の付かない。でも、どこかで聞いたことのあるような、懐かしいような不思議と落ち着く声だった。
(これは………………かったけど…………ンの為ですも……うん……………為。仕方な……。あっ……………状態だと肺に刺……………死………いよね……よし!)
何を決断したんだ。何を。仕方ないってなんだよ。
肺がなんだ?そういえば胸の辺りがさっきから熱いが。
「やぁやぁ!ごめんね~。かっずあっきくん♪
苦しくさせないようにだから。ね!」
急に鮮明に聞こえた声に反応して何故俺の名前を知ってるとか、お前は誰だとか色々と考えかけた。
考えかけた時、胸に突然絞り込まれるような苦しさが襲い掛かる。
一声も出すまもなく、息を吸えず、直前までの出来事のせいで指一本動かすまでもなく意識を手放した。
近くにいたおそらく肩を貸して運んでくれていた人が驚いた顔をしながら仰向けに寝かせた自分を覗き込み声をかけてくれる。
それがあっちにいた俺が見た最期の光景。
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目を覚ました。仰向けになったまま首を横に動かすと地平線らしき場所からから一筋の光が差した。
「これプロジェ○トXみたいだな。」
先ほどまでの全身の痛みがなく、自分の存在の確認のためにのんきに思いついたことをそのまま言った。
どうやら死後の世界は本当に実在したようだ。となるとここから先に天国と地獄の分岐点があるはずだがそう思い立ち上がり辺りを見渡す。
すると光っている向こう側から誰かが歩いてくる。誰かはかなり離れた場所におり、足取りに対してかなりな速度で近づいてくることを考えるとアレ浮いてないか?
あちらも俺に気付いたようで瞬きをした一瞬でこちらに歩いてきた人影はもう目の前までいた。
「こんにちは~、貴方が三夜沢和晶さんでよろしいでしょうか?」
突然おっとりめだがすっと聞こえる不思議な声で自分よりかなり小さめの謎の影に話しかけられた。正直光が強すぎて後光のように顔が見えない。
「一応そうだけど。」「うん、よ~し!」
応えに対し被せ気味に目の前の女の子?女性?は大げさに首を振ってからガッツポーズを決めた。可愛い声がぴったりなぐらい幼い行動に思わず呆然とした。
「わたしはね~、貴方の世界とは違う世界の女神様!
すこ~し見ていたんだけど貴方は今日絶対死ぬ運命だった。
貴方みたいに有能な人が亡くなるのはマズイと言う事でこっちの世界で延命処置を計りたいと思います。」
突然指を刺して宣言してきたこの可愛い生物はどうやら女神だったらしい。
「……有能って自分には何のとりえもないのですが。」
当然である。生まれてこの方何もしていない、賞ももらったことないし、最近すこしばかり仕事をしたぐらいである。
「えぇ~何かあるでしょ?……………………うーんと………………あっ!さっき助けたカップルが将来偉人を輩出し続ける家系になるんだ!これこれ!」
何か空中で操作するようなしぐさの後に言われてもなぁ。
「で、端的にいいますと~こっちの世界の暴れん坊を懲らしめてくれればそっちの世界のさっきの時間に復活させてあげられます。
あっ懲らしめるって言っても大丈夫。いいスキル付けて上げるし。他の似た境遇の人たちもいるから~。
なんでこうしなければいけないかと言いますと~復活に必要な偉人ポイントがあなたの場合あとわずか2000ほど足りないのでそれを稼ぐということですね!」
「あの?」
「大丈夫大丈夫。向こうの召喚先の王様も私の知り合いだからだまし討ちは絶対ないよ~。それにほらこっちは一夫多妻制もあるからハーレムも作れるよっ。チートとハーレムの異世界転生!どう?イけるよね!」
怪しさ満点である。ゆったりとした口調なのにすっごい早口、それでいてなぜか聞き逃すことはない。内容を詰め込みすぎだ。とりあえず はい か いいえ からしいのでいいえを選んだらどうなるか聞いてみるか。
「少し聞きたいんですけど。」
「何かな?」
首をかしげてるかわいい動作。というかようやく光に目が慣れてきて姿が見えるようになった。
……なんだこのすっごい美女。ウェーブのかかった腰までの薄い緑色の髪。特盛りの連山。タレ気味の優しい目に柔らかそうな唇。全体的にふわふわした服装のすごい甘そうな小さいお姉さんだった。
「女神さ「ちなみに名前はアミナスね~」アミナス様、断ったば「様付けなんて仰々しいからいいよ~」……断った場合はどうなるのでしょうかアミナスさん。」
食い気味で二度わざわざ呼び方を訂正させられた。というか言ってきた時の目力がすごい。なんでそんなに目が細くなるんですかね。
もうこのアミナス様とやらはろくなモンじゃないこの短期間で思えるものだった。姿は素晴らしいけど。
「断った場合?大丈夫、そっちの世界でちゃーんと輪廻転生するから。あくまでランダムで。もしあの時間に生き返りたいなら。という話しなだけだから。まぁ本来の生き返りなんて何千年、何万年、何億年先かわからないけどね。場所も適当だし。」
冗談じゃない。あの時間でなければ買いそびれた続刊も、よく考えたら来月発売のアレなゲームも、あの新作もできない!もうそろそろ冬マもあるんだぞ!今回先生が力入れて新刊3冊だぞ!
素晴らしく俗物的考えである。数ヶ月前には「やる事ないし我が生涯に悔い無し!」とか言っていたしな。
「アミナスさん!困っている人がいるなら助けるのが当然です!」
うん、半分ぐらいはそう思ってる。半分はダメな発想だけど。
「はい!よろしくお願いします~。でー、はー、これが貴方に与える【スキル】ですよ~。」
自分に向けて差し出すように両手を出し手のひらの中心が光りだす。その光の玉を俺の胸に押し付けるように……入らない。
「……あれ?ん~?おっかっしっいっなっ!っと!うん!しょ!……よし!」
凄い強引に押し込められて気がするが大丈夫なんだろうか。いや、大丈夫ではない。
丸い形をしていた光の玉が半分以上かけているような形まで変形している。
「では、こちらの世界へようこそ~」
何もなかったかのように繕いなおしたアミナスは扉を開けるかのような動作をし、目の前に強烈な光の扉が開かれる。
そして空いた空間がこちらに迫り来るように動き。
―――「召喚成功だ!」「おぉ!勇者様!」「これで助かるぞ!」
明るさにくらんだ目を開くと年配の男声と見るからに豪華な王宮の謁見の間だった。
もうここまで来れば散々見ている夢であると気付く。
最初からまったく抵抗していないが、今後も流れに任せることにする。
その内終わる、これは夢だから。
謎の美女X『後書き脳内放送~!さぁさぁ遂にはじまりました和晶の冒険譚!』
ティオ『遂にってまだ1話ですよ。さらに言うならこれ前日譚で1章ですらありません。』
謎の美女X『細かいことは気にするな~♪さて、次回のお話は~?』
ティオ『私が出ます。姉さんの出番はありません。それほど進みません。の三本です。』
謎の美女X『ちょっと待って!私まだ出れもしないの!?』ティオ『それでは。』