表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
えっ!?もう元の世界に帰れないんですか?  作者: 土人形
プロローグ
1/31

Q.俺、帰れなくなりました。     A.それはおめでとうございます。

初投稿になります。

大変遅筆でもうしわけありませんがゆっくり週1ぐらいで投稿します。予定です。ガンバリマス。


『木灰とデミホーンのフン、初級植物成長促進剤、初級ポーションを調合します。…むにゃ。』


まだ暗い早朝の闇の中、目の前に薄っすら光り透けて表示されている魔術画面を読み上げる抑揚のない女声が直接頭に響く。しかし部屋には自分以外誰もいない。

目に見えない親友、【イマジナリフレンド:ティオ】の能力(スキル)の力だ。

『中級植物成長促進剤を作成できます。宜しいですか?…すぅ。』

ハキハキとしたそれでも若干幼さが残ったような声だが自分の趣味ではない。

……そう趣味ではない。と思う。思いたい。更に幼くても別にいいかな?なんて全く思わない。

一体誰に弁明しているんだと思うがたまにしないとこの声が更に酷いことになるのは一度経験があるので仕方ないことだ。

「・・・いっぺんに複数個調合ができれば楽になるけどなぁ『はい』」

『んぁ…魔力をいただきます。……中級植物成長促進剤ができました。魔術倉庫に格納しまぅ。』

スキル【中級調合師】と【イマジナリフレンド:ティオ】を併用しながら自分は別に調合機を使い初級除草剤の調合を行っていた。

スキルで同じ薬を複数個を調合することもできるらしいが達人の領域まで行き着いた調合師。

またはエルフやドリアードのような薬学に秀でた種族が訓練して手に入るようなものなので、自分のような者(普通の人間)には高嶺の花だろう。

……いや、高嶺の花ならば目指すことぐらいはできるが今の自分ではスキル強化の気配を見ることすらできない。

ソレのおかげで何度も助けられているのでこの状態をいやとは思わないが。


「せめて魔術画面で中級促進剤と同時に『中級除草剤を作る』とかできればいいのに」

ため息をつきながら『少し魔力を込めて』ぼやいてしまった。

魔術画面内での調合なら魔力を普通の調合より使うがとても早く出来上がるため今のように時間に追われている状態なら尚更やりたかった。

勿論いっぺんに複数種類を調合するには更に別の上位スキルがいる。

自分のぼやきに寝るためにオートモードへ切り替えた【イマジナリフレンド】のティオが反応し魔術画面を広げた。

精神体に睡眠がいるのだろうかとも思うがオートモードでも手伝ってくれるだけありがたい。というより大切な友達を昼も夜も働かせるのは流石に忍びない。

『中級除草剤の作成には岩塩、初級植物成長促進剤、グールの血が必要です。』

『魔術倉庫に在庫を確認しました。作成しますか?…すぅ。』

「しまった、またやったか。」

突発的に目の前に薄くだが画面が現れると少し面倒に感じる。

唯でさえ面倒な調合をしているところ、このままでは必要数をかなり下回って朝を迎えてしまう。

村の皆に言った手前できませんでしたすみませんで終わらせたくなかった。

立ち上る焦りと眠気を抑えながらいつものように否定をしよう。

決めて意思を発する直前に滑り込んできた少し明快な声に反応することはできなかった。


「召喚した全勇者様+αへ~魔王討伐により小さく次元の狭間ができましたよ。

 元の世界に帰還します?」


「『いいえ』・・・えっ?」


「わかりました~。和晶さんカーくんへ授けました異能も解除しておきますね。

 そちらに降りている分け身に会う事がありましたらお茶でもしましょう!本当にっありがとうございました。」


ほんわかのんびりな口調とは全く合わない早口で用件だけ伝えて一方的に切る。

この世界の女神アミナスのいつもと変わらない話し方だったが、今回の大事な連絡に関してもそれは変わらなかった。

「アミナス!?」

名前を叫ぶ声は届かずドンドン事を進められる。

女神の流す力が強いのか自分が流されやすいのか、両方か。

そして事態はあっという間に進んだ。胸の辺りから光の球……半々円の形に歪んでしまった元光の球がぐにぐにと頑張って出てきて体から抜けた途端空中に浮かび上がり消えた。


『スキル【 知半能】が消失しました。他スキルの消失はありません。』

『スキル効果によるレベル固定が開放されました。』

『スキル効果によるレベル上限設定が開放されました。』

『スキル効果によるステータス弱体化が解除されました。』

『スキル効果によるスキルランクアップ制限が解除されました。』

『スキル効果によるスキル習得抑制が解除されました。』

『複数の上位スキルが開放されました。魔術画面より確認してください。』

『レアスキルを複数習得、魔術画面より確認してください。』


むなしく響く天の声。

「ちょっ、まっ。ま待ってええええええええええええええ!!

 アミナアアアアアアアス!!』

忌々しいスキルがなくなったとか魔術画面を確認しなければとか少し躊躇いがあったが、声の限り叫んだ。魔力を込めたことに気付かないぐらい思いっきり。

しかし、むなしく響くだけだった。そしてのうきが迫ってくる。

『…突然叫びだしてどうしましたか和晶様。それほどまで乱暴に起こされるぐらいでしたらやはり最初から手伝えばよかったです。』

お、起こしてしまってすまないティオ、でも。俺帰れなくなったみたいなんですけど!

『はぁ、それはおめでとうございます。私としてはこちらに居てくださった方が普通に会話できて楽しいので大変喜ばしいです。ところで和晶様。作業止めてしまって大丈夫ですか?』

ティオの助言を聞いて頭を急いで切り替える。あの女神バカの奴はあとで考えよう。

どうせ分け身がいるんだから都市の教会にでも行けば抗議できる。早くしなければ唯でさえやばい納期が恐ろしいことになる、なっている。猫の手も借りたいわ!こうなったら今から二階で寝てるケルファを起こして土下座して頼み込むしか……。

『…そうですね、今の和晶様なら手を増やすことはできますよ。もっとも2人までですが。』

さきほど色々と天の声でスキルが読み上げられていたがしっかりと聞いていたティオが何か対策が取れるようになったのか。

やるしかないでしょ!どうすればいいんだよティオ。頭の中で急かすように問う。

『外に丁度オオコウモリがいますのでそれを形を保った状態で捕獲して頭に手のひらを当ててください。あとはこちらでします。…あっメスにしてくださいね。』

なんだよそんなことで人手が増えるなら誰だってやるわ。

何するんだろ?唯でさえ眠気でおかしくなっている頭だ。疑問はとりあえず頭の端に置いておき、大急ぎで村内にある5mほどの木で休んでいた3匹のオオコウモリに向かって跳躍、全て素手で殴り落した。

そして一匹だけいたメスの頭部に手のひらを当てる。


『ありがとうございます。では魔力をいただきます。』

『【上級魔力合成】を使用。和晶様の魔力を蝙蝠の魔力に合成します。

 強制的な魔力増幅により種族変化が発生します。

 オオコウモリは吸血鬼に変化しました。

 吸血鬼へ更に魔力を合成します。

 平行して【生体魔力変換:光】【転移魔法】【血操術】を発動します。

 和晶様の血液を一部吸血鬼内に移動、調合。種族進化が発生します。

 吸血鬼は真祖吸血鬼に変化しました。

 更なる【上位魔力合成】【生体魔力変換:精神】【魔術付与:魂】を行います。

 種族進化が発生します。吸魂鬼に変化しました。』


なんか目の前にとんでもない魔物ができてしまっている気がする。

2mはあるデカイ黒い塊が黒い光を放ち人型の黒いドレス白髪の羽が生えた女に。

また光ったと思うと羽の消えた少女に。再度光を放ち煌びやかに輝く銀髪の紅眼の少し幼めな少女に。

それにしても莫大な魔力を使っているが、なんでか知らんが魔力枯渇も抑えることができるようだ。

枯渇どころかここまでのことをしてまだ半分も使っていないとなんとなくわかる。

『手のひらの切り離し時に痛みを伴いますのですみませんが眠ってもらいます。『深き暗い睡魔ディープヒュプノス』【イマジナリフレンド】発動。対象へ魂の移送を発動。』

目の前で神々しく光るぐったりとした吸魂鬼。その光に飲まれ俺の意識は遠く離れていった。

「弾き出した吸魂鬼の魂へ【吸魂】。

 ……よし、これで吸魂鬼ティオ完成しました。

 和晶様、安心して眠ってください。こちらで納期は間に合わせます。」

最期に目に映ったのは優しく微笑む表情と輝く銀髪の向こうにあるアイオライトのような深い藍色の瞳だった。


「さて、ライバルが増えるのはアレですが作業を早く終わらせるため。

 ではラナス姉さんも顕現させますか。」


『やっほー!まだ登場していない謎の美女Xちゃんだよー!』

『いえ、私が名前だけ出してしまっていますよ姉さん。』

『そ・ん・な・こ・とより、次回から今までの回想編に入りま~す。

 具体的に言うと和晶が召喚される前ぐらいからこの話の頭までだね!』

『それが終わってからこの話の続きになりますので申し訳ありませんが

 しばしお付き合いお願いします。』

『それではー!』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ