表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/15

明日へと続く希望

 レイドとの戦いは終わった。それにフィーネは安心する。

 だが、マロンの目的は達成していなかった。


「何をする気?」

「先生を助けてもらう」


 願いを叶えてくれる門。見合った以上の代償さえあれば、リリルを助けてくれる。

 だが、いくらリリルのためとはいえそれを使うのに、ティトは頷けなかった。


「ダメだよ。そんなことしたらマロンが死んじゃう!」


 フィーネももちろん、頷けなかった。

 例えリリルが助かったとしても、マロンが死んでしまえば意味がない。それに、リリルは大きな後悔を抱いて生きることになるだろう。


「マロン、やっぱりあなたがやろうとしていることは――」

「勘違いするな。俺は命を犠牲にしようなんて思っていない」


 マロンはそういって、みんなを押しのけた。

 ゆっくりと門を見上げる。そのまま歩こうとした瞬間、ギブソンに肩を叩かれた。


「お前さん、何を犠牲にするつもりだ?」


 マロンは振り返って笑う。そう、命は犠牲にしない。だが、それに匹敵する何かを犠牲にするつもりだった。

 マロンにとってのそれは、あまりにも大きい代償だ。


「死にはしないさ」


 ギブソンの制止を振り払い、マロンは門の前に立つ。

 そして、願った。先生を助けたいと。そのためなら、大切なものも渡すと。

 門は、頷く。そして、敬意を払った。

 その決意と覚悟に。



◆◆◆◆◆



「以上が、ラフランカ帝国が消えた真相である」


 ギブソンは、見たままのことを口にしていた。それを聞いた学者達はただざわめくだけである。

 ある者は、改めてギブソンを評価していた。

 ある者は、ギブソンの学説にあり得ないと提唱した。

 だが、ギブソンは気にしない。なぜならこれは真実であるからだ。


「物議が交わされていますね、教授」


 そんな中、一人の女性が声をかけてきた。振り向くとそこには、すっかり顔色がよくなったリリルの姿がある。


「久しぶりだ。その様子だと、すっかりよくなったようだな」

「ええ、自慢の弟子達のおかげです」


 その手には、一つの指輪がある。それを見たギブソンは、優しく微笑んでいた。


「初めてのプレゼントは気に入っているようだな」

「これがないと、身体が爆発してしまいますので。まあ、悪くないデザインです」


 マロン達が見つけたアーティファクト。それがリリルの命を繋ぎ止めている。

 しかし、リリルは知らない。それが何を犠牲にして手に入れたものなのかを。



◆◆◆◆◆



「マロン、まだつかないの?」

「もっとゆっくり走ってよー!」

「静かにしろ、お前ら」


 マロンは相棒達を連れてバギーを走らせていた。いつも通り賑やかで、悩みが尽きない。

 だが、そんなことを考えていると突然バギーは煙を上げて止まった。


「な、なんだ?」


 慌てて降りてエンジンを見る。するとなぜかドロドロに溶けていた。

 思いもしない出来事にマロンは固まる。


「ちょっと、なんでエンジンがこうなるのよ?」

「やっぱ安物を買ったからだよ」

「金がないんだ。仕方ないだろ?」

「歩くなんて嫌よ? マロン、責任を取ってよ!」

「僕は頭に乗るー」

「お前らな……」


 マロンは頭を抱えていた。そんな時、そんなマロン達を見てクスリと笑っている少年が目に入った。

 マロンは思わず視線を向ける。しかし、そこには何もいない。


「どうしたの?」


 フィーネの問いかけに、マロンは「何でもない」と答えた。


「そう? でも気をつけなさいよ」

「ああ、わかっているさ」


 〈願望の門〉の影響で味覚を失っていた。もしかすると他にも何かを失っているかもしれない。

 しかし、そんなマロンの目に時折、何かが見える。それはいつも、温かく見守っているような気がしてならなかった。


「歩くぞ」


 道のりは長い。

 人生の終わりにしても、何かを達成するにしても。

 二つ星のトレジャーハンター、マロンはその果てしない道を歩く。

 大切な仲間達と共に。


願いを叶えたことで、味覚を失ったマロン。

だが、後悔はなかった。

次なるロマンを求めて二つ星トレジャーハンターは、旅をするのだった。


◆◆◆◆◆


ご拝読ありがとうございます。

もし機会がありましたら、続編を書いてみたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ