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出会いという名のきっかけ(上)

 広がる荒野。荒んでいる風に、大昔から変わらない空。ポツリポツリと立っている枯れ果てた木々を横目に、縦に長い建物を茶髪の少年は見つめていた。


「ハァ……」


 つい零してしまうため息は、何を表すだろうか。そんな少年を見た白い髪の妖精が、こんなことを口にした。


「そんなに落ち込まないでよ、マロン」


 マロンと呼ばれた少年は、前髪を少し掻いてから頭を抑えた。


「そう言われてもな。久しぶりに来たと思った依頼が、これだぞ?」

「気持ちはわからなくはないけど。でも、もしかしたらってことがあるじゃん」

「ここは調査済みの遺跡。しかも協会に管理されている所だ。そんな可能性があるとは思えないが」

「やらないよりはマシだよ! というか、僕達は仕事を選んでいる場合じゃないし!」


 確かにその通りだ。

 マロンは頭を痛めながら、少し乱れた白いワイシャツを直した。しかし、しわくちゃで仄かに土の色がついているためか、決して綺麗とは言えない。


「貧乏は嫌なもんだ」


 マロンは白い髪の妖精に目を向ける。同じトレジャーハンターの仕事をする相棒は、いつも通りにトンボのような細長い四枚の羽を羽ばたかせていた。


「どうしたの?」

「なんでもないさ、ティト」


 ほんのりと輝いている羽を眺めながら、マロンは相棒である妖精の名前を呼んだ。ティトはどこかキョトンとしながら、進んでいくマロンを見つめる。


「それにしても、何も気配を感じないな」


 入口で遺跡の中を見渡すマロン。少し寂しく感じながら、ゆっくりと足を踏み入れていく。遅れてマロンの後ろを追いかけるティト。僅かに暗くなると、その羽についている金色の鱗粉を振り撒いていた。


「魔獣もいなそうだし、不審者もいなそうだね」

「いたら困るな。まあ、仕事にならないのは確かだが」

「でも僕達の本業って、警備じゃないんだよなぁー」


 マロンは思わず頷きたくなった。そもそもこれは協会の警備担当をしている人間がやることであって、駆け出しトレジャーハンターがやることではない。


「まあ、いい発見ができてないからな」

「確かにそうだけど、なんだか不満だよ」

「俺達はそれだけ貢献できてないんだ。人に役立つ技術も〈アーティファクト〉も見つけてない。それどころか、失敗ばかりだしな」


 ティトはむぅー、と唸った。

 駆け出しトレジャーハンターのマロンとティトは、かつてこの大陸で繁栄そして支配していた〈ラフランカ帝国〉の古代技術を探す仕事をしている。だが、二人はいい発見ができていないうえに、様々な失敗をしていた。


「でも、この前のは仕方ないじゃないか!」

「備え不十分だった俺達の責任だ。とはいえ、まさか道が変化するとは思ってなかったな」


 マロン達は少し前に未調査の遺跡を探索した。だが、いい発見ができなかったうえに、帰り道がなぜか変化してしまって出られなくなってしまった。そんな事態を打開しようと様々な手段を用いる二人だが、どうすることもできなかった。


「結局、道がわからなかった」

「泣く泣く救難信号を出しちゃったし。しかも、何度目だって怒られちゃったし」


 思い出すだけで二人はため息が零れた。これだから未だにランクが一つ星のまま。そう考えただけで、さらに気分が落ち込んでくる。


「もー、こうなったらすっごい発見するぞ!」

「気合が入っているな、ティト」

「気合を入れているんだよ! マロンも気合入れろよ!」


 気合を入れたところでどうなるんだ?

 マロンは少し呆れながらも、暗い通路を進んでいく。だが、思った通りに何にもない。あるのは瓦礫とガラクタと、ゴミらしき何かだけだ。


「ま、こんな所で見つけたら奇跡みたいなもんだ」


 若干の諦めを口から零す。すでに調べ尽くされた遺跡。例えアーティファクトがあったとしても、発見済みの可能性が高い。期待なんてできなかった。


「うおっ!」


 そんな思いで進んでいると、突然マロンの足元が崩れた。そのまま何もできずに落ちていってしまう。


「マローン!」


 ティトの叫び声が遠くから響いた。見渡すとそこは真っ暗な部屋だ。


「なんだよ、ったく」


 少し苛立ちを覚えながら目を凝らして見渡してみる。すると暗闇の奥に仄かに光るものを見つけた。


「大丈夫?」


 マロンがそれを見つめていると、ティトが心配して降りてきた。そのおかげか、若干だけ部屋に明かりが広がった。

 目が慣れてきたということもあり、部屋の全貌がわかる。だからこそマロンは言葉を失ってしまった。

 そこは、見慣れない空間。そしてその空間の奥に一つの箱がある。

 その箱に近づいて覗いてみると、中には一人の少女が眠っていた。


変な部屋へ落ちたマロン達。

そこにあった一つの箱を見て、驚きの声を上げてしまう。


眠っている少女は何なのだろうか?

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