71・戦艦データ完全版
艦名の命名方式
サイレン
多神教の神々から。
クルフス星間共和国
英単語、主に抽象名詞より。
帝国スメラ
生物や架空の生き物。幻獣、魔獣、妖怪など。特に戦艦は強大な力を持つ架空の生き物から命名される。
いずれの国も艦の数が多く、名前が足りなくなる……などという事態に陥っている。その解決策として、艦名の後ろに番号を振って解決を図っている。
イシュタル級高速砲艦
サイレン初の対消滅炉搭載艦。
強力かつ長射程の固定砲と速い船足。これを核融合炉を遙かに上回る対消滅炉を用い、力任せに実現した艦種。
イシュタルは、その一番艦として建造されたが完成に至るまで紆余曲折の連続だった。
設計自体は、動力炉以外は既存技術の集合体であるため、さほどの苦労は無かったが問題は、その建造だった。
既に疲弊しきっていた為、造兵廠が機能せず予定していた砲を搭載できないなど一番艦の建造すら困難を極めた。
サイレン第二艦隊総司令官たるガトー元帥の「とにかく形にしろ!」との言葉で、手に入る火砲をとりあえず搭載し、半ば強引に一番艦イシュタルの偽装を終え完成に至ったわけである。
結果、一番艦イシュタルに搭載された光子砲※は、当初の予定とは大幅に異なる物となっている。
二番艦~五番艦は、艤装も終わっていない状況下で戦闘に投入され、機雷代わりに使われ爆沈。
ある意味、イシュタル級は間に合わなかった決戦兵器と言える。
ガトー元帥の失脚後、その腹心達の一部がサイレンから離反。
元帥復権後に備え軍事力を温存、サイレン分裂後は抗戦派の中核となった。彼らの建造したイシュタル級は、当初の設計通りに完成している。
※注釈
光子砲とは、物質化するまで圧縮された光を撃ち出す砲である。
物質化する事で特性が変化し、光速の九〇~九五パーセント程まで速度は落ちるが、粒子砲の二~三倍の速さで目標まで到達し、その威力は同規模のレーザー砲を一桁以上も上回る。
レーザー光線より強力で、粒子砲より遙かに速い。超長距離砲戦に非常に適した砲である。
発射された圧縮光子は、崩壊しつつ直進する。この崩壊時に光を放つため、光子砲の弾道は光の筋として浮かび上がって見える。
サイレン、クルフス星間共和国、帝国スメラの戦艦、その主力武器である。
イシュタル級一番艦イシュタル(海賊船アスタロス)
全長一二〇〇メートル。重量二〇〇万トン。
主兵装
船首光子砲×二門。単砲身光子砲×四門。砲身分割型電磁加速式複合砲×四門。他、対空防御用レーザー、小口径の電加砲等多数。
他のイシュタル級よりも、高出力な動力炉を搭載している。
艦載機も運用しているが、元より空母としての機能など考えられていなかったため上手く運用できているわけではない。
サイレン第二艦隊の旗艦、パラス・アテネよりニューロ・コンピューターを移植したため、極めて高い旗艦能力……指揮・管制能力を持っている。
船首を覆う女神像は追加装甲の一種。
水泡を含んだ金属でできており、エネルギー波を受けると蒸発し、ビーム兵器に対する攪乱幕となる。
他のイシュタル級にはない、アスタロスのみの装備である。
イシュタルはバビロニアの女神。北欧神話、ギリシャ神話に登場する女神の多くは、少なからずこのイシュタルの影響を受けている。いわば女神の原型である。
アスタロスは、女神イシュタルがキリスト教によって悪魔とされた際の名前ではあるが、長い時間の変遷で女神イシュタルとの関連は、別物と言えるほど希薄になっている。
船首光子砲(要塞砲からの転用)
数十メートルもの砲口を持つ極めて巨大な光子砲。元が要塞砲で艦載が想定されていた物ではなく、連射も利かない。
中心軸さえ貫ければ、無敵級すらも完全に沈黙させられる威力がある事を対アウスタンド戦で実証した。
単砲身光子砲(オーディーン級の物を転用。パラス・アテネの砲とも同型)
長距離砲戦から近距離砲戦まで幅広く使えるアスタロスの主砲。薙ぎ払うような掃射も可能。
パラス・アテネやオーディーン級は、この砲を連装型にして使用している。
砲身分割型・電磁加速式複合砲……通称「電加砲」
近距離砲戦での主役。雑多な弾が撃てる。射撃から着弾まで時間が掛かるが、長距離砲戦でも使用可能。
いわゆるレールガン。電磁砲身と推進剤を組み合わせて二段階で弾体が加速可能。それ故の「複合砲」の呼称である。
砲身が船体にあわせ湾曲しており、船体半ばにも砲口を開く事も可能。船体半ばにも弾倉と装弾装置があり、一つの砲身を分割し砲身の短い二門の砲としても使用可能。
砲身長は折りたたまれた砲身を展開した場合一二〇〇メートル。非展開時は一一〇〇メートル。
砲身分割時は五〇〇メートルの砲身二つ。船首方面は、畳まれた砲身を展開すれば六〇〇メートルとなる。
砲口の直径は五メートルだが、常に直径五メートルの砲弾を撃ち出しているわけではない。直径五メートル以下の磁化された弾体なら、ほぼ何でも撃ち出せる。
砲身展開時の状態を古典的な表現で表すなら、五メートル二四〇口径となる。砲口の直径が五メートル。砲身長が砲口の二四〇倍という意である。
砲身長最大での砲撃ならば、弾速は光速の一パーセントにまで到達する。
イシュタル級六番艦ネメシス
当初の設計通りに完成したイシュタル級。
潜伏中の抗戦派が建造。ネメシス他、数隻のイシュタル級を保有。アスタロスと違い、艦首に女神像は取り付けていない。
ネメシス……ギリシャ神話に登場する女神。本来は義憤の女神であるが、サイレン残党は誤訳である復讐の女神として、この名を冠した。
設計通りに完成した事から、事実上のイシュタル級一番艦とも言える。
搭載コンピューターの性能で劣るため、イシュタルほど高い旗艦能力はない。
イシュタル級六番艦ネメシス
全長一一五〇メートル。重量一九〇万トン。
主兵装
艦首固定型大口径光子砲×四門。二連式光子砲×四門。砲身分割型電磁加速式複合砲×四門。他、対空防御用レーザー、小口径の電加砲等多数。
艦首固定型大口径光子砲
口径十数メートルにも達する大口径の光子砲。イシュタルの船首光子砲ほどの威力はないが、連射も利き柔軟な運用ができる。
四門での全力斉射を行えば、無敵級にも十分通用する威力がある。この固定砲ゆえの高速砲艦の呼称である。
二連式光子砲
より目標を捉えやすくするための二連装である。二発同時命中ならば威力は、イシュタルの主砲と大差はない。
砲身分割型電磁加速式複合砲
イシュタルの物と全くの同型。
アルテミス級高速戦艦
サイレンの主力艦。無敵級の投入まではクルフス艦隊を圧倒できた。
一対一という条件下なら、現状でも同クラスのクルフス艦と互角以上に戦える。
様々なバリエーションが作られたが、これはアルテミス級に高い汎用性があったためだけではなく、サイレンが疲弊し新型艦を開発できなくなった事にも起因している。
これにより、サイレン艦の性能向上は対消滅炉搭載艦の登場まで頭打ちとなった。
サイレン艦隊は、ほぼ、このアルテミス級と、その亜種とも言える艦で構成されている。
イシュタル級は、アルテミス級を原型に開発された。
よって極論を言えば、イシュタル級もアルテミス級の亜種とも言える。
アルテミス級一番艦アルテミス
全長一〇〇〇メートル。重量一八〇万トン。
主兵装
連装式光子砲×四門。艦首固定型電加砲×二門。対空防御用レーザー多数。
連装式光子砲。
アルテミス級の主砲で、ネメシスの主砲より一回り小型である。核融合炉から供給できるエネルギーに限りがあるため、一定の充填時間が必要。
予めエネルギーを充填しておく事もできるが、その状況を長時間維持しておく事はできない……維持可能な時間は、せいぜい一時間である。
艦首固定型電加砲
砲身長八〇〇メートルのレールガン。砲門の直径はイシュタル級と同じ。弾速は光速のコンマ八パーセントほどである。
マルス級戦略戦艦
サイレン第一艦隊司令、ノダ大元帥の乗艦がマルス。第二艦隊司令、ガトー元帥の乗艦がパラス・アテネ。三番艦は計画のみで立ち消え。
コスト高により、性能をダウングレードしたオーディーン級が五隻ほど存在する。
優れた旗艦能力を持つサイレンの大型艦。攻守を補助する二隻の随伴艦を従えている。
全長四八〇〇メートル。重量九八〇〇万トン。
主兵装
連装式光子砲×六門。大口径電磁加速式複合砲×六門。対空防御用レーザー、対空防御用電加砲多数。
連装式光子砲。
この同型砲をイシュタルの主砲に転用された。イシュタルは単砲身の稼働砲として使用。
砲の数が圧倒的に多いため、マルス級の火力はイシュタルを大きく上回る。
大口径電磁加速式複合砲
砲口十メートルにも達する大口径の電加砲。長大な砲身を活かし、直径十メートルもの弾頭を光速の一パーセントにまで加速可能。
随伴艦
マルス級の随伴艦はフォボス、ダイモスの二隻。戦神マルスに従う二頭の猟犬であり火星の抱える二つの衛星の名でもある。
フォボスとダイモスは同型で、マルスの攻防を補助する随伴艦である。
パラス・アテネの随伴艦はイージスとニケ。
イージスは防御を担当すべく索敵能力と対空迎撃に特化した艦。ニケは一撃必殺に特化した砲艦で、パラス・アテネからのエネルギー供給を受け砲撃を行う。
フォボスとダイモス。イージスとニケ。この四隻はアルテミス級を原型とした……いわば改造アルテミス級である。
イージスとニケは、戦闘によって損失。
サイレン第一艦隊司令、ノダ大元帥の乗艦がマルス。第二艦隊司令、ガトー元帥の乗艦がパラス・アテネ。
第三艦隊司令のムラカミ元帥の乗艦はオーディーン級一番艦オーディーン。
オーディーン級戦略艦
マルス級とほぼ同型だが、廉価版的な側面もある。
一番艦オーディーンは随伴艦がないぐらいだが、二番艦以降は搭載されたコンピューターが安価な物となっており、マルス級ほど高い旗艦能力はない。
それ以外は、マルス級とほぼ同じである。
インビンシブル級超大型戦略艦(無敵級)
全長一万メートル。重量一〇億トン。
サイレン・クルフス戦争における最強最大無敵無敗の超大型艦。
卵形をしており、ゴルフボールに似た窪みが艦の表面に無数に存在する。この窪み一つ一つが固定式の光子砲になっており、無敵級は圧縮光子の奔流をネジ曲げ標的を砲撃する。
全砲門からの砲撃、その弾道をネジ曲げ一つの目標に向ける事も可能。この砲撃は『クロスファイア』と呼称されている。十字砲火、集中砲火の意である。
砲門の数は、全部で数百~五百を超えるなど、各インビンシブル級によって数は一定ではない。
レールガンも存在するが、無人偵察機の射出が主で、攻撃には基本的に使われない。
その圧倒的なまでの巨体と、巨体に裏付けされたジェネレーター出力により、単艦で艦隊を蹂躙可能な怪物戦艦である。
このインビンシブル級。戦闘艦の製造技術でサイレンに大きく水を空けられていたクルフスが、力技でサイレンを圧倒すべく造り出した艦種である。
艦を巨大化する事で、その巨体に見合うジェネレーター出力に任せ、性能の不足を力で補う。
このような巨艦を量産できるドックはクルフスにも存在せず、その建造は、恒星クルフスを取り巻くナノマシン群『科人』に丸投げされた。
結果、インビンシブル級は『科人』の端末としての側面を持つ事となった。
また、搭載されているニューロ・コンピューターも高性能で、自己修復を担うナノマシンを利用し、戦局の変化や対戦相手にあわせ自らを改修、最適化させるなど自己進化も可能となった。これにより各インビンシブル級ごとに個性が生じている。
インビンシブル級の中で、最も戦闘経験を積んでいるのはアウスタンドであり、アウスタンドは対サイレン艦……特に対アルテミス級に特化した形に進化している。
インビンシブル級の封印は、インビンシブル級が『科人』の卵としての側面がある事に、クルフス議会が気付いたためである。
自己修復の際にナノマシンを展開すると、ナノマシン・ネットワークが形成されニューロ・コンピューターの機能が拡張される。その際、ふとした切っ掛けで、ニューロ・コンピューターの枷が外れ自我に目覚めるといった事例が、アウスタンドとレブルで確認できたのだ。
そして、自我を持つナノマシン・ネットワークは、いわば『科人』の縮小版である。
エネルギーとナノマシンの原料。
この二つが安定供給される環境ならば、インビンシブル級のニューロ・コンピューターは、自らをナノマシン・ネットワークに置き換え『科人』同様、恒星を覆い尽くす巨大なナノマシン・ニューロ・コンピューターへと成長可能と推測される。ただ、インビンシブル級一隻だけでは条件を満たす事は不可能である
クルフス軍統合司令部並びにクルフス議会に置いてインビンシブル級は、得体の知れない上、自分たちに牙を剥くかも知れない超兵器といった認識である。
余談だが、帝国スメラ・クルフス星間共和国間の戦争に置いて、最高水準のナノマシン技術が搭載されているのが、このインビンシブル級である。
インビンシブルとは無敵の意で、それゆえサイレンや帝国スメラでは無敵級と呼称している。
三番艦アウスタンドは仰天の意。四十二番艦レブルは叛逆の意である。
クルフス第一~第十三艦隊の旗艦を務めるのがインビンシブル級であり、それ以外にも三十隻以上のインビンシブル級が存在している。アウスタンドは第十三艦隊旗艦。廃艦処分されたレブルは第三艦隊に所属する四隻目のインビンシブル級だった。
旧型フォートレス級戦艦(旧要塞級)
全長六五〇メートル。重量六五万トン。
主兵装
対艦粒子砲×五〇門。大口径レーザー砲×一〇〇門。対空レーザー極めて多数。
戦艦と言うより機動要塞的な側面が強い艦種。砲の数は多いが、低火力でサイレン艦に決定打が打てず一方的に蹂躙された。
空間跳躍は可能だが、結構なウラシマ効果を伴うため士官以上の乗員には不人気な艦種。ただ、クルフスはウラシマ効果を度外視し静止時間を基準に兵員の給料を算出するため、下士官や兵レベルの乗員には人気が高い……短い主観時間で高い給料が得られるためだ。
が、それゆえガラの悪い訳ありな乗員が集まりがちで、第八艦隊内で問題が起こると『またフォートレス級か!』などと言われる始末である。
鈍足、低装甲低火力と三重苦の艦種であり、第八艦隊所属のフォートレス級は、クルフス本国に一隻も帰り着けなかった。
ただ、三重苦と言っても、相手がサイレンでさえなければ必要十分な性能はあった。
セイント級打撃戦艦(聖闘士級)
全長一千メートル。重量百九十万トン。
主兵装
単砲身可動式光子砲×二十門。固定式レールガン×六門。対空防御用レーザー多数。
サイレン艦と正面切って打ち合いが可能な艦として開発されたが、一対一でアルテミス級と戦うには、やはり力不足だった。
ハリネズミの如く、艦体に砲を纏った艦種。
電加砲……レールガンによる砲撃は、高確率で迎撃されるため、対聖闘士級ではサイレン艦は、もっぱら光子砲による砲撃で勝負を挑んでいた。
クルフス艦としては比較的、軽快な運動性を誇っている。
対サイレン戦の主力艦。性能の不足を数で押す形で解決した。
フィアレス級戦略艦(不敵級)
全長六五〇〇メートル。重量二億一〇〇〇万トン。
可動式の砲をハリネズミのように纏っている。砲の数は百門前後。他、無人偵察機射出用のレールガンが四門ほど。
光子砲一門当たりの威力は無敵級と同等で、無敵級同様に弾道をネジ曲げる事も可能。
が、出力不足で全問斉射たるクロスファイアは行えない。
開戦時の砲は光子砲ではなく粒子砲だった。
サイレンとの開戦時に導入された『当時の』最新最強艦。
開戦時のクルフスには光子砲の技術はなく、長距離砲戦で一方的にサイレン艦に蹂躙されたがフィアレスは、その巨体と多数の砲による圧倒的なまでの弾幕からサイレン側に恐れられた。
第八艦隊撤退後、鹵獲したサイレン艦の技術。そのテストベッドとしてフィアレスは使われ度重なる改修を受けた。
フィアレス級は、鹵獲したサイレン兵器から得た技術を随時導入していた為、同じフィアレス級でありながら性能にはバラつきがある。
五隻でフィアレス級の建造は打ち切られた。サイレンの技術を取り込む前の古い設計の艦であったため、発展性に乏しいと判断されたためである。
新技術の試験用に使われた一番艦フィアレスは、度重なる改修によりフィアレス級最高の性能を誇るが、サイレンの技術を得る前の古い設計ゆえ性能には限界がある。
クルフス艦に共通する最大の特徴は、ナノマシンを利用する事でのメンテナンス・フリー化である。
ただ、ナノマシン活動の為のエネルギー。それが人体に対し有害であるため、人間の居住区画や活動場所では扱う事ができない。
ガラの悪い乗員が集まりがちな旧フォートレス級の艦内居住区画は、スラム同様……などという事態も頻発した。
対策としてBMI能力者を艦長等の管理者にする頃で綱紀粛正を図ったわけだが、逆に艦長が染まってしまうなどの問題も起こっていた。
このナノマシンによるメンテナンス・フリー化。その究極の形が無敵級ことインビンシブル級である。
サイレン第二艦隊、旗艦パラス・アテネ艦長、スワ中佐の言葉によれば、アウスタンドの溶接痕一つ無い艦体にサイレン側は度肝を抜かれたそうである。
その後、ガトー元帥が奇策を弄し亜光速ミサイルを叩き込み中破させたが、一週間後に修理痕一つ無い姿で戦線へと復帰。
復帰したアウスタンドを見て、ガトー元帥はクルフスには勝てないと悟ったそうだ。
事実、アウスタンドは拿捕したサイレン艦を解析し、自らの抱える動力炉を順次、サイレンと同等クラスの動力炉へと作り替えていた。
アウスタンドは戦闘を重ね経験値を積むだけではなく、敵の技術力を自らに取り込む事で自己進化を重ねていたわけだ。
あのままサイレンとの戦争が続いていれば、アウスタンド一隻によってサイレンは完全に屈服していたと推測される。
サイレンやディアス多星系連邦は疎か、帝国スメラですら、このインビンシブル級の持つナノマシン技術は再現不可能である。
付け加えるならば、クルフスにもインビンシブル級のナノマシン技術を再現できる『人間』は居ない。
ドミニオン級高速打撃戦艦
全長一五〇〇メートル。重量二五〇万トン。
主兵装
艦首固定大型光子砲×六門。連装型光子砲×六門。艦種固定砲身分割型レールガン。固定式対空レーザー。対空防御用レールガン多数。
サリバン少佐が設計したイシュタル級の原型……それを『科人』が形にしたもの。
少佐は、自身の設計図を既製品で再現するため、アルテミス級の艦体を流用できるよう再設計し直しイシュタル級を建造した。
サリバン少佐に言わせればイシュタル級は妥協の産物。対しドミニオンは一切妥協していない。
それゆえ、ドミニオンの性能はイシュタル級を大きく上回る。
……が、サイレンの設計思想が前面に出すぎているため、性能的には申し分ない出来ではあったが、量産化は見送られた。
試験終了後、第十三艦隊に左遷、降格されたブラス准将ことブラス中佐の乗艦に。
サイレン系技術者のお茶目で、アスタロスを真似たような天使型の追加装甲が艦首に取り付けられた。ドミニオン……主天使を象った像である。
ドミニオンとは主権、又は主天使を指す名詞である。
ドミニオンのニューロ・コンピューターにアウスタンドに発生した自我が収まっている事は、今のところ知られてはいない。
クルフスと帝国スメラの戦争。その中期に、このドミニオンを元とした量産艦が計画、艦体が五十ほど造られるまで計画は進んだが再度お蔵入りに。
末期に、その放置された艦体を流用し、デバステーション級無人空母が造られ帝国スメラへと送り込まれた。
このデバステーション級、帝国での呼称は荒廃級である。
オルトロス級高速戦艦
全長九五〇メートル。重量八五万トン。
主兵装
固定式光子砲×二門。可動式単砲身光子砲×四門。砲身長八百メートル電加砲×二門。対空防御用レーザー多数。
帝国スメラの新型艦。
恒星型核融合炉の普段は廃棄されるエネルギーを溜めておける大容量高性能バッテリー……光子バッテリーを搭載した量産艦。
光子バッテリーとは、光子砲の薬室でも一時間前後ならエネルギーを溜めたままにできる……この状態で安定させ、長時間エネルギーを維持できないか? この発想から生まれた超高性能バッテリーである。
オルトロスの場合は、動力炉の最大出力、その五倍ものエネルギーを溜めておく事ができ、必要な際に、それを一度に取り出す事ができる。
端的に言えば、バッテリー併用時のオルトロスの瞬間最大出力は、動力炉とバッテリーを併せる事で最大六倍もの瞬間出力を叩き出せるわけである。
これにより、核融合炉を小型化した上、エネルギーのロスを劇的に減らせるようになったわけだ。
サイレンのアルテミス級より小型ではあるが、その性能は遙か上を行く。
が、帝国としてはクルフスに対抗するべく作った急造戦艦に過ぎない。既存の造船設備でも量産可能……この要求に応えるべく、光子バッテリー以外は特別、帝国としては新しい技術は使っていない。
無敵級が卵形ってのは何となく決めたんですが、辺境軍のラストに名前だけ出て来たバハムート……アレって無敵級が孵化したものだったのかなと。
無敵級に使われているナノマシン技術。コレがないと、たぶんバハムートは完成できないと思う。
だからジーン……というか帝国は無敵級を欲しがっているんでしょう。
ちなみに、私は自分の小説の書き方を『箱庭型執筆法』なんて呼んでます。この舞台、この状況、この面子。さあコイツらはどう動く? そんな感じで書いてますね。
で、この世界観で提示したナノマシンの性能等を踏まえ無敵級の設定を詰めていったら、無敵級って条件次第じゃ『科人』化するじゃんと……
だから、無敵級って帝国との戦争が本格化する前に封印されたかと。
帝国として無敵級を評価した場合、ナノマシン技術以外に特筆すべき要素はないでしょうしね。ナノマシン技術はオーバーテクノロジー過ぎて手に負えないでしょうが。
無敵級が帝国相手に無双できるのは戦争序盤だけですし、序盤を乗り切れば帝国は無敵級を凌駕するような艦を続々と開発していきます。
……序盤で無敵級を大量投入されたら帝国は詰みますね。だから無敵級を封印したわけですが。




