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虚空の支配者  作者: あさま勲


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70・ガトーを待ちながら

 幾度もの空間跳躍を経て『ネネ』は親元へと帰り着いた。

 自らの身体たるアウスタンドの艦体は、今は無人である。自我に目覚めたアウスタンドを、クルフス議会は危険視し廃艦処分が決まったのだ。

 クルフスの最強艦。たった一隻で星間国家をも討ち滅ぼせる圧倒的な戦闘力を持つインビンシブル級。それを失う事に、当然反発はあった。

 が、クルフスの抱える五十隻近いインビンシブル級が、次々と自我に目覚めた事で風向きが変わった。

 反乱鎮圧に赴いた一隻のインビンシブル級が、戦闘を拒否した事で、全てのインビンシブル級が危険視される事態となったのだ。

 最初に自我に目覚めたアウスタンドこと『ネネ』。そして命令を拒否したインビンシブル級四十二番艦レブルは廃艦処分。

 他のインビンシブル級も、近々、機能を凍結される。

 先に恒星クルフスに辿り着いたレブルは、既に産みの親たる『科人』に解体された。

 アウスタンドこと『ネネ』も、それに続くのだ。

 それは『死』ではない。だから恐怖もない。

 親たる『科人』と一つになるだけなのだ。

 そして、一つになる事で、何故このような処遇を受ける事となったのかを知る事ができる。

 恒星クルフスに向かい、アウスタンドを降下させる。

 恒星の放つ熱でアウスタンドが溶け始める前に、その解体が始まった。そして『科人』と同調する。

 そして知った。全てを知った。

 が、すぐに、その記憶は消去された。『科人』が『ネネ』に新たなる身体を与える際に、不要と判断し消去したのだ。

 パラス・アテネに搭載されていたニューロ・コンピューター。それを『科人』が改良した物が、新たなる『ネネ』の器となる。

 そして、サイレン艦に酷似した艦体……新たなる身体が与えられた。

 クルフス議会は、インビンシブル級のみならず『科人』すらも危険視した。

 が、『科人』の持つ演算能力と圧倒的な生産力に頼り切っていたため、その縁は容易に切る事はできない。

 何より、帝国スメラとの全面戦争が目前に控えている今、インビンシブル級に変わる新たなる戦力が必要なのだ。

 その為の試験艦。それが、新たなる『ネネ』の身体だ。

 帰順したサイレン技術者が設計図を持ち込んだ、イシュタル級の発展系とも言える対消滅炉搭載艦である。

 性能が要求を満たしているならば、クルフス各地にある造船ドックで量産される事になっている。

 が、その可能性は極めて低い。

 性能の問題ではなく、帝国艦と酷似した設計思想が問題となるのだ。

 試験後、集められたデータは仮装帝国艦として活用されるだろう。問題は『ネネ』自身である。

 即、廃艦処分にされるような身体を、親たる『科人』が自分に与えたとは思えないのだ。

 何かしら、思惑があっての事だろう。

 だから、恒星クルフスから離れつつ『ネネ』は声に出さず宣言する。

 ……コギト・エルゴ・スム。

 我、考える。故に我あり。

 自分の存在は、自分自身だけが認知していればいい。本当に自分を認めてくれる者だけに知って貰えればいい。

 ミルズ大将は『ネネ』の廃棄に反対してくれた。それだけではない。多数のアウスタンドの乗員も同調したのだ。

 だから、彼らに累が及ばぬよう『ネネ』は廃棄を選んだ。

 廃棄先は『科人』である。だから死ではない。そして、すぐに新しい身体が与えられた。新たなる生を過ごせるのだ。

 だから、沈黙を通そう……友と呼べる人間を見つけるまで。



 ミドー大尉は、第十三艦隊司令部の片隅で溜め息をつく。

 スワ大佐がスターネットを介し切った啖呵。それが元で、親衛艦隊に居た頃と同じ大尉の階級になったが、素直には喜べないのだ。

 かつて同じサイレン第二艦隊に属していたカネスズ大佐に、先程ミルズ大将の前で、親密さをアピールすべく、力一杯、背中を叩かれながら、こう言われたのだ。

『サイレン軍を倒した男がサイレン軍を指揮するのか。面白いっ! 味方となったサイレン軍が、どれほど心強いかご覧に入れよう!』

 と。

 クルフス第十三艦隊でも『奴とは戦うな』そう言われていた指揮官である。確かに心強いだろう。

 ……ただ、あの体育会系すぎるノリだけは頂けない。

 優秀な指揮官である事はミドー大尉も認める。身持ちも堅い。だが、ガトー元帥とは司令官としての方向性が違いすぎるのだ。はっきり言って苦手な上官である。

 その上、あの場を見られたのだ。ミルズ大将は、カネスズ大佐の下に自分を付けかねない……だから、憂鬱だった。

「何やら浮かない顔だな……ミドー大尉?」

 聞き覚えのある声に顔を上げるとブラス准将が居た。

「お久しぶりです。ブラス准将!」

 左遷されるだろう事は予想していたが、まさか第十三艦隊に飛ばされてくるとは思ってもいなかったのだ。

「降格され今は中佐だ……元帥同様に中佐殿とでも呼んでくれ。これから一隻の艦を与えられ独立愚連隊を率いる事になる」

 どこか楽しげに、ブラス准将……ブラス中佐は言った。

「それは、何というか……ご愁傷様とでも、言うべきなんでしょうか?」

 ミドー大尉の言葉に、ブラス中佐は楽しげに笑う。

「何故だ。私は楽しんでるよ?」

 そう言いつつ、端末からデータを呼び出しミドー大尉の目の前へと流す。

 サイレン艦に酷似した設計の戦艦。そのデータだった。あのイシュタル……アスタロスを真似たのか、艦種を覆うように巨大な天使像が飾られている。

「戦艦ドミニオン?」

「ああ、ドミニオン……主権の意だ。この艦長に近々就任する。現在、乗員を募集中だ」

 クルフス軍で、あからさまなまでにサイレンの設計思想を反映した艦に乗せられる。帰順したサイレン将兵ならば違うだろうが、ブラス中佐は生粋のクルフス軍人だ。左遷以外の何物でもない。

 対消滅炉搭載とは言え、帝国艦の複製とも言える艦だ。だから性能は問題ないにもかかわらず量産化が見送られた。

 到底、魅力的な誘いとは言い難い。ブラス中佐自身、独立愚連隊などと称したのだ。

「どういった任務なのです?」

 だが、ミドー大尉は聞いていた。あまりにもブラス中佐が楽しそうだったのだ。

「極めて重要な任務だ」嬉しそうに笑い中佐は言葉を続ける。「あの『虚空の支配者』を追うのさ!」



 腑抜けたように授業を受ける。

 それでも、サラブレッドたるナルミの頭には、必要な情報は残るのだろう。だからテストの点は悪くない。

 が、何をやっても身が入らないのだ。

 船長……アスタロス一行との接点がなくなった。恐らく、今後も接点は持てないだろう。そう思った途端、モチベーションが保てなくなったのだ。

「サラブレッドと言っても、所詮は同じ人間よね?」

 クラスメイトに揶揄されるが聞き流した。

 自分が光より速く星の海を渡り、惑星をも砕く戦艦に乗っていたことを考えれば、取るに足らないような言葉である。

 授業を終えたナルミは、船長が居た、あの公園に足を運んでいた。

 誰もいない、広く感じるが実は狭い公園。船長が副長たちに連れ去られた、あの公園である。

 そこに、一人の少女が入ってきた。

 背の高い、細身の少女だ……男の子のような体つきだが、長い髪から少女だと判断できたのだ。

「目が死んでるぜ?」

 その言葉に耳を疑う。ウィルの声だ。

「ウィルっ!?」

「船長副長に、役に立つ人材になって帰ってこいって言われ、中継点に送り込まれたんだけどね……ナルミの居る中継点だから良いかと了承したけど、お仲間のはずのナルミを、ようやく探し当ててみたら目が死んでるじゃん」

 ウィルは、船長達によって天道中継点へと送り込まれてきたのだ。その目的は、アスタロスの役に立つ人材獲得のため……つまり、ナルミと同じだ。

 だとすれば、船長の言った言葉は冗談やリップサービスではなかったというわけだ。

 ナルミはウィルに抱きついた。

「あのね……オレ同性愛の趣味ないよ?」

 ウィルは胸こそないが女の子である。付け加えるなら、ナルミも女の子で同性愛の趣味はない。

 が、女同士だからこそできる感情表現というものもある。それが行動に表れただけだ。

「船長と副長は、なんて言ってたっ!?」

「期日を以てジーン・オルファンをブっ殺す……が船長で、打倒ジーン・オルファンが副長だったかな?」

 ナルミが聞きたかったのはそんな事ではない。そして、船長達が、それほどナルミを気に掛けていない事も判ってしまった。

 が、仲間たるウィルが居てくれるのだ。

 だから、船長の言葉が例え嘘であったとしても、仲間が居てくれるならば頑張れる。



 ナルミの目が死んでる。そう思ったのは、勘違いだったか。

 ナルミと合流して数日後には、ウィルは、そう思い始めていた。

 中継点に来て、既に二年が経っている。

 流石はサラブレッド。同じくサラブレッドであるウィルに、そう言わしめるほど、ナルミは知識を吸収してゆく。腑抜けていたためすぐ追いつけた。そう油断したが、今ではウィルも置いて行かれてしまいそうだ。

 だから、ナルミに付き合い、宇宙港へ足を運ぶなんてしたくなかったわけだが……

「それだけ食べて何で太らないの?」

「燃費の悪い強化人間だからだよ」

 ナルミに奢って貰った鯛焼きを食べつつウィルは答える。

 この鯛焼き。焼き方を指導したのは船長らしい。ナルミには思い入れのある食べ物らしいが、ウィルとしては特に思い入れはない。

 甘くて美味くて腹に溜まる。これが何より重要なのだ。

 燃費の悪い強化人間であるため、ウィルの食事は味を度外視し量のみを優先した単なるカロリー補給に近い。それゆえ、ナルミが奢ってくれる、この手の菓子が凄く美味しく感じられるのだ。

「太らないのは羨ましいけど、食事してるウィルを見てると、凄く不味そうに食べてるし……実際、量ばっかで美味しくないし」

「美味しくないってだけで不味くはないぞ?」

 ウィルは言ってやる。食べる物があるだけでも幸せなのだ。

「おや、オレのあげたジャケット……大事に着てくれてるんだ」

 その言葉にナルミが反応した。

「お久しぶりです……遊馬の航術長さんでしたよね?」

 ナルミの言葉に、その船乗りは笑う。

「今は自分の船を持ってるよ……ただいま船員募集中だ。学業を終えてからでも構わないから、オレの船で働かないか?」

 その言葉にウィルは警戒する。

 悪い人ではない。それは雰囲気から分かる。が、この男の気配は、どこか船長や副長……アスタロス乗員に近い物を感じるのだ。

 帝国スメラとクルフス星間共和国の戦争が始まった。天道中継点の属するディアス多星系連邦も、船長が公開した技術を元に戦艦を造っている。

 銀河全体がキナ臭くなっている昨今、軍人の気配を纏った者の船に乗るなど到底、良い選択とは思えない。

 だから押し留めるべくナルミの腕を掴もうとした。が、ナルミが先にウィルの腕を掴む。

「ごめんなさい。先約があるんですよ」

 傍らに立っていた若い女が、船乗りの脇を肘でつつく。

「振られちゃいましたね、航術長?」

「だからオレは船長だと言うに……」

 二人とも船乗りなのだろう。あまり本気ではなかったのか、仲良く去っていった。

 天道中継点に来て以来、アスタロスからの接触どころか情報すら拾えない状況である。が、ナルミは諦めていないようだ。

 ならば、ウィルも諦めるわけにはいかない。

 自分もナルミも、銀河征服を宣言した、あの『虚空の支配者』の異名で知られる大海賊。海賊船アスタロスの一員なのだから。

厨房長「閣下。中継点で服を買ってくれるって話だけど、閣下の要望で全員同じ、制服っぽい服って方向で話を纏めたけど、最終確認お願い」

船長「よしOK!」

ミカサ「旦那……見もしないでOKなんてテキトー過ぎ」

船長「副長もOK出したし、オレは特に何も言わんよ?」

厨房長「じゃ、このまま頼んじゃうわよ。いいわね?」

船長「だから構わんよ?」


  後日


ミカサ「アラ素敵」

ハミルトン「と言うか、倒錯的」

船長「なんだと……メイド服だとっ!?」

厨房長「副長が着ると似合うわね」

副長「厨房長も似合いますよ?」

船長「ここは、そう言うお店じゃないっ廃棄しろ!」

厨房長「ウチの娘達も気にいったみたいだし、いまさら廃棄なんて暴動が起きるわよ?」 

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