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虚空の支配者  作者: あさま勲


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51/71

51・砲撃

 ガトーの乗る戦艦イシュタル……宇宙海賊船アスタロスがアウスタンドに正面を向ける。

 アウスタンドと戦い玉砕する気だ。ブラス准将は、そう判断した。

 直前に攪乱幕とダミーバルーンを幾つか展開した。おかげで、正しい観測データが得られなくなった。

 現在、イシュタルは膨大な熱を発している。放出される赤外線から察し、何かを仕掛けてくる兆候だろうが、それが何か見当も付かない。

 船首に向かって突き出された巨大な二門の光子砲……あれを使おうとしているようにも受け取れる。

 だが、単艦ではエネルギーが足りないはずだ。そして、イシュタルを取り巻く艦艇はダミー・バルーン……いわば張りぼてで、エネルギーの供給など、できるはずもない。

 疑問を持った途端、あのイシュタルの船首を飾る女神像。その背から、八枚の昆虫を思わせる翅が広がる。

 膨大な熱を帯び、光を発している所からも放熱板の類だろうが、何故あそこまで熱を持つのか見当も付かない。

「ミドー少尉……どう見る」

 あの『海魔の王』たるガトー元帥の副官を務めた女性士官に問う。サイレンでは大尉だったが、クルフスでの階級は少尉だ。

 艦内に、ミドー少尉の持ち場はない。にも関わらず、フィアレスに乗せたのは、パラス・アテネを始めとする旧サイレン艦艇の乗員に対する人質の意味もあった。

「申し訳ありませんが、見当も付きません」

 ……だろうな。

 ブラス准将は、諦め気味に思う。

 見当が付くほどの秀才ならば、あのガトーが手放さなかっただろう。

 いや、才覚は関係ない。見当が付くほどガトーは、このミドー少尉には腹を割らなかったと言うわけだ。

 つまり、そのレベルの副官でしかなかったと言う事だ。

 映像を眺めつつブラス准将は考える。

 三元帥の仲間割れで、ガトー元帥が失脚。その後、サイレンは分裂し、三元帥が第三位、ムラカミ元帥率いる一部がクルフスの軍門に降った。

 ガトーお抱えだった親衛艦隊も、自らの意思でクルフスの軍門に降ったのだ。おかげで、それに従う形で多くのサイレン将兵も、クルフスに帰順した。

 あの『海魔の王』ことガトーも、いずれはクルフスの軍門に降るかと思いきや、三元帥が第一位、ノダ大元帥率いる艦隊の殿を務め、本隊が逃げる時間稼ぎをした。

 その際の、大元帥との通信は傍受できている。

 ふざけた事に、これを最後の勤めとするから、退職金代わりにイシュタルをくれと言っていたのだ。

 事もあろうに大元帥は、それを認めた。

 どうせ、あそこで死ぬものだとでも思っての約束だろう。だが、ガトーは時間稼ぎを成功させ、逃げ延びたわけだ。

 その後、サイレン再興を掲げ、残党達の親玉にでもなるかと思いきや、それらしい動きも見せず長らく身を潜めていた。そして、ようやく姿を現したと思いきや、先程の銀河征服の宣言である。

 あの男が、一体、何を考えているのか見当も付かない。

「アウスタンドの艦体周辺に光の屈折を確認。クロスファイアの準備に入った模様です」

 アスタロスがアウスタンドに狙いを定めた為、ミルズ大将も受けて立つ気になったようだ。この混成艦隊より先に砲撃を仕掛ける気らしい。

「オモチャとは言え、戦場で銃を突きつけられたわけだ。こちらとの足並みを乱す口実には十分か……全艦艇に通達。本艦隊も砲撃準備に入れ」

 ブラス准将は、あのガトーの一連の行動。それをハッタリだと断定した。

 混成艦隊を構成する全艦艇。並びにアウスタンドからの観測でも、潜宙している艦艇の形跡が見つからないのだ。

 恐らく、混成艦隊を構成するサイレン艦とは戦いたくないのだろう。だから、クルフス軍人しか乗っていないアウスタンドに的を絞った。

 ……どちらと戦っても負ける事は判っているはずだ。だから小細工抜きに、突撃でも仕掛ければよいものを。

 そうは思うが腑に落ちない。

 散々、煮え湯を飲まされた手前、あのガトーの事は徹底的に研究した。確かにハッタリを多用する。その上、露骨なまでのハッタリを罠として使う事もあったのだ。

「サイレンは、反物質の量産に『一応』の成功を収めていました。あるいはイシュタルは、反物質を燃料とする対消滅炉搭載艦なのかも知れません。ならば、あの放熱量にも納得が行きます」

 それまで黙っていた副司令エスティーノ大佐が口を開いた。

 その言葉にブラス准将は考える。

 サイレン崩壊時、撤退するノダ大元帥の艦隊。その殿をガトーが引き受けた際、艤装の終わっていないイシュタル級で艦隊を編成し、足止めに当たったのだ。

 数の不利を補う為か、小惑星を破壊し戦場となる宙域に障害物とするべく岩塊を撒き散らし陣を敷いていた。その岩塊散らばる宙域で、戦端が開かれようという矢先、艦を自爆させたのである。

 結果、爆圧で飛ばされた岩塊が、艦隊に大きな被害をもたらし追跡を不可能としたのだ。

 そして、艦の自爆には、大量の反物質を用いたらしい事も判っている。

 戦争末期のサイレンは、反物質弾を時折使っていた。ゆえに、クルフスは脅威を感じ本気で潰しに入ったのだ。

 核融合より遙かに簡単かつ強大なエネルギーを生み出す対消滅反応。それを戦艦のエネルギー炉に組み込んだら、途方もなく強力な艦が造れる。

 この技術が、帝国スメラに流れようものなら、スメラ攻略の大きな障害となるだろう。それだけは、クルフスとしても避けたかった。

「末期のサイレンは、疲弊しきって新型艦を造る余力などなかった。あの戦艦イシュタルも既存艦であるアルテミス級を原型としただけの砲艦にすぎない」

 ブラス准将は、そう断定する。

 対消滅炉搭載艦の建造に成功していたら、まだサイレンは戦えたのだ。にも関わらず分裂し崩壊した。

 対消滅炉搭載艦は、いわば超兵器である。それ故、サイレン分裂を押し留める強固な楔とできたはずだ。

 サイレンは、クルフスを相手に百年も戦い続けた国家である。

 そんな国家が、戦局を変えられる超兵器。その建造の目処が立っていながら、足並みが揃わず崩壊するなどブラス准将には理解できない。

「戦艦アウスタンドより通信。全砲門での一斉射撃『クロスファイア』を行う。落ち穂拾いは任せる……との事です」

 相手を選ぶ権利は、ガトー率いるアスタロス側にある。ガトーがアウスタンドを選んだ以上は仕方ない。

 モニターの隅に、クロスファイアのカウントダウンが表示される。

「アスタロスが暗幕を展開した模様」

 報告を受けモニターを見ると、アスタロスから少し離れた場所に暗幕が展開していた。ただ、少しと言っても宇宙では、である。距離にして千キロ以上はあるだろう。

 宇宙に展開される巨大な目隠し。それが暗幕である。

 光も電波も一切反射せず吸収する。だが、それが熱に変わる為、赤外線センサーを用いれば存在は確認できる。

 混成艦隊の発するレーダー波を吸収し、暗幕が発熱。それを感知したのだ

「連中は、我らにも仕掛けていたか……先行中の旧サイレン艦艇を、我らと暗幕の軸線上に移動させろ」

 クルフスの軍門に降ったサイレン将兵。彼らが使い物になるのか、それを見極める事が、この混成艦隊の最大の目的である。

 そのため、あえて旧サイレン艦艇を盾とし利用するのだ。



 戦艦フィアレスの司令室。そこでミドー少尉はイシュタルの映像を眺める。

 艦の両舷から飛びだした巨大な二門の光子砲。サイレンが用いた典型的な要塞砲で、あの砲を単艦で扱うにはオーディーン級、もしくはパラス・アテネと同じマルス級クラスの巨艦でなければ無理だ。

 エスティーノ大佐。そしてブラス准将の言葉を考える。

「ガトー閣下は、未だあの巨大な光子砲を手放していません。手放さない理由がある物かと思われます」

 言外に、エスティーノ大佐の意見への同意を示したわけだ。

 扱えもしない火砲など重荷でしかない。それが判らぬガトー元帥ではない。巨大な光子砲を、あえて艦に装備したままである理由。それが必ずあるはずなのだ。

「あの砲、砲身のみの張りぼてという可能性もあるか……仮に本物で使用可能であろうとも、我らがする事は変わらん」

 相手を警戒しすぎ取り逃がす……その愚を犯すわけにはいかない。それは理解できる。

 だから、ミドー少尉は口をつぐむ。

 ブラス准将、エスティーノ大佐。この混成艦隊の司令と副司令を務める大幹部である。いずれも、全ての可能性を考慮して艦隊を動かしているのだ。

 イシュタルの放熱量は、徐々に増大してゆく。女神像の背中から伸びる翅、それが恒星の如く輝いていた。

「あのイシュタルの放熱量……異常と呼べるレベルです!」

 流石に拙いと思ったのだろう。エスティーノ大佐が叫ぶ。

「だから、どうしろと?」

 ブラス准将は他人事のように呟く。

 確かに他人事だろう。狙われているのは自分たち混成艦隊ではなく、第十三艦隊旗艦たるアウスタンドなのだ。

 アウスタンド側も受けて立つ気のようだ。

 クルフスの最強艦たるインビンシブル級である。周辺に展開したダミーバルーン、その全てが本物の戦艦であっても負ける事はない。

 イシュタルを射程に収め次第、アウスタンドは砲撃を行うだろう。

 この状況では、混成艦隊としては傍観するしかない。アウスタンドと比べ砲の射程が短い為、介入できないのだ。

 そして二分後、イシュタルの砲門から光の奔流が放たれた。

 混成艦隊から見て遠ざかってゆく為、赤く見える光の奔流。標的たるアウスタンドには、青い光として見えているはずだ。

 物質化するまで圧縮された光。それを相手に向かって打ち出す光子砲である。

 圧縮され物質化するにあたり光としての性質が変化する為、その速度は光速を下回る。だが、光速の九割以上もの速さで目標へと到達するのだ。

 目視から一秒ほどで、イシュタルの放った圧縮光子の奔流がアウスタンドに到達した。

 直前にアウスタンドが回避機動を取った為、中心を外しはした。だが、確かに艦体を捉えていた。

 アウスタンドを守る障壁は、イシュタルの放った圧縮光子の奔流に数秒耐え、そして貫かれた。

 アウスタンドの艦体から、まるで花火のように八方へと光の筋が伸びる。イシュタルの攻撃で、アウスタンドは致命的とも言える打撃を受けた。そのため光子の制御が不可能になったのだろう。

 それ故、光子砲の薬室内に充填された圧縮光子、この暴発を防ぐ為に開放したわけだ。

「戦艦アウスタンド……沈黙」

 イシュタルの最大砲に、脇腹を貫かれたのだ。もう、戦えるような状態ではない。

「当たりはすれども急所は避けた。大破はすれども沈みはせず……流石はミルズ大将、流石はインビンシブル級と言った所か。当艦隊も砲撃を行う。目標は戦艦イシュタル、並びに周辺艦艇だ」

 ブラス准将の言葉で、標的が表示される。

 砲撃を行ったイシュタル。その周辺を固める艦艇とレーダー反応……ダミーバルーンと暗幕である。混成艦隊を構成する艦艇に、それぞれの標的が指示されているだろう。

「通信を行っているのはイシュタルのみです。あのエネルギー量から察し、イシュタルは対消滅炉搭載艦です。他は砲撃を散らす為の偽装かと。無視して構わないのでは?」

「あの規模の砲撃。必要となるエネルギー量からも単艦で行えるわけがない。そして対消滅炉搭載艦はデータ上でしか確認できていない上、あの戦艦イシュタルとは似ても似付かない巨艦だ。最後にガトーは『海魔の王』だ。単独で動くはずがない」

 エスティーノ大佐は、イシュタルを対消滅炉搭載艦と判断したようだ。だが、その意見をブラス准将は退ける。

 しかし、ミドー少尉は、対消滅炉搭載艦の可能性を考える……つまり、エスティーノ大佐の意見に同意した。

 混成艦隊の着宙時、イシュタルは一隻だった。そして、あれだけのエネルギーを供給できる艦艇を随伴させていたならば、間違いなく探知できているはずだ。

「私は……イシュタルが対消滅炉搭載艦であると考えます。この状況下、いかにガトー閣下と言え、艦隊を隠し運用するなど不可能です」

 状況から察し、そうとしか思えないのだ。

 潜宙と暗幕を駆使し、即興で艦隊を隠す……そんな事ができるはずがない。それが可能ならば、サイレンは負けなかった。

 ガトー元帥は傍目からは、それに近い事をやっていたが、本人曰く『博打』である。

 副官として付き添っていたが、デゴイ風船や暗幕を駆使した待ち伏せは、実際『博打』だった。

 事実、敵の行動を遙か先まで見通しデゴイや暗幕を設置し艦艇を潜宙させるなど、事前に入念な準備が必要不可欠で、空振りに終わる事も多々あったのだ。

 空振りなら、まだ良い。待ち伏せが読まれていた場合、逆に自分たちが窮地に陥る。これは紛れもない『博打』だ。

 そして、今回の遭遇。ガトー元帥にとっても完全に想定外だろう。これを想定し罠を仕掛けていたなら、既に艦隊は半壊状態に陥っていたはずだ。

 更に決定的な、もう一つの要素。

 ガトー元帥は、クルフスとの戦争を、何とかして終わらせようと足掻いていた。

 『百戦無敗』と言われた稀代の名将。それ故、抗戦派の御輿として担ぎ上げられていた事を本人は自覚していた。自身の存在が、戦争を長引かせる一因になってた事を知っていたのだ。

 だから、他二人の三元帥に働きかけ、仲間割れを演じ計画通りに失脚した。

 自分たち親衛艦隊、そのクルフスへの帰順も抗戦派の勢いを削ぐ為の布石だった。

 おかげで、打倒クルフスを掲げ潜伏を続けるサイレン残党を、大幅に減らす事ができたはずだ。

 元帥本人としても、もう戦いたくないのだ。だから、好んでクルフスと事を構えるなどとは考えにくい。

 ブラス准将は、ミドー少尉を一瞥する。

「情報を吟味し、議論している時間などない」

 この混成艦隊の司令官はブラス准将なのだ。そして間もなく戦艦イシュタルが射程に全艦の射程に収まる。

「前方に展開中のセイント級。敵艦隊を射程に捉えるまで十秒。九、八、七……」

 オペレーターがカウントダウンを始める。

 射程の短いセイント級。それを旧サイレン艦艇の前方に展開していれば、アウスタンドと完全に足並みを揃えた砲撃もできただろう。

 だが、ブラス准将は、それをしなかった。

 帰順したサイレン将兵を、全く信用していないのだ。それ故、まずは元サイレン艦を先行させた。

 だが、信用は勝ち取れるだろう。

 ガトー元帥の乗る戦艦イシュタルを狙うのは、パラス・アテネやアルテミス級などの元サイレン艦艇。クルフス艦と比べ砲の数では劣るが、一門当たりの威力と射程では大きく上回る。

 そして、周辺に散らばるデゴイや暗幕。これらを狙うのは数多の砲を持つクルフス艦。強力な砲を持つ元サイレン艦でイシュタルを狙うのは、手堅いやり方だ。

 対消滅炉搭載艦という前提で全長一千二百メートルというイシュタルの規模を考えると、動力炉の出力は全長五千メートル弱のパラス・アテネの半分程度。原型となったアルテミス級の数十倍と、化け物と言える出力を誇る。

 だが、パラス・アテネ並びにアルテミス級五隻の一斉射撃を喰らっては、一溜まりもないだろう。この一斉射撃には、パラス・アテネですら無事では済まない。

 だから、この砲撃でガトー元帥は命を落とす。

 ミドー少尉が思いを巡らせている間にもカウントダウンが進んでゆく。

 そして、カウントダウンが終わる。

「撃て」

 ブラス准将の言葉と同時に、混成艦隊が一斉射撃を行った。

艦艇データ


『アスタロス一行』


海賊船アスタロス

元々は戦艦イシュタルだったが船長が独断と偏見で改名。

バビロニアの女神イシュタルがキリスト教によって悪魔とされた名がアスタロスである……だが、女神イシュタルと悪魔アスタロスの関係は、長い時間と歴史の変遷で、別物と言えるほど希薄になっている。

全長一千二百メートル。重量二百万トン。

要塞砲転用の船首光子砲×二門・主砲……可動式単砲身光子砲×四門

長砲身電磁加速複合砲(電加砲)×四門

砲身を展開すれば砲身長千二百メートルに達する巨大なレールガン。船体半ばにも射出口と弾倉があり砲身を分割し砲身長五百メートルのレールガン二門としても使用可能。

他、対空防御用の小口径電加砲とレーザー砲が多数。

航空機も運用しているが、空母としての能力は低い。だが、旗艦能力は折り紙付き。

サイレンの主力艦、アルテミス級をベースに建造。


アマツ製大型戦闘攻撃機スーパー・ブラックホーク

対消滅炉搭載の大型戦闘攻撃機。単機で空間跳躍が可能。

単機での空間跳躍可能な機体はアイゼルとの戦争中から計画、試作機が造られており、アスタロスから買った反物質製造技術と対消滅炉の技術でようやく、このブラックホークで完成型へと至った。

だが、兵器の主流が小型高速機から大艦巨砲へとシフトした事でお蔵入り。

先行量産機が三機作られただけに留まる。内二機が、ドラグーンと共にアスタロスへと提供された。

後退可変翼で全幅は翼の状態によって変化。

全長:四十五メートル。全幅:四十~三十メートル。

空虚重量:三十トン。

固定装備。対艦反粒子砲×一門。小口径レールガン×二門。

選択装備。対艦レールガン×一~二門。対艦光子砲×一~二門。対空レーザー機銃×二~六門。他、対艦ミサイル、慣性誘導弾など多数。

この機体の前身はスーパー・レッドホーク。核融合炉搭載で、亜光速まで加速できるが空間跳躍には至れない。ミカサの元上官である『神速の魔術師』が最後に乗っていた機体である。


小型戦闘攻撃機ドラグーン

渡り鳥に似た機影の小型戦闘攻撃機。核融合炉搭載で大気圏内、宇宙共に高い機動性を持つ。

翼は放熱板を兼ね、大気圏内では出力を落として運用。

全長:十一メートル。全幅:八.五メートル。空虚重量:十トン。

固定装備無し。

選択装備:対艦粒子砲×一門。対艦レールガン×一門。空対空レーザー×二~六門。空対空コイルガン一~二門。他、ミサイル、慣性誘導弾など多数。

ブラックホーク同様、アマツ製の機体である。



『クルフス混成艦隊+無敵級』


無敵級……インビンシブル級超大型戦略艦

全長一万メートル。重量十億トン。

クルフスの誇る最強最大の戦艦。

卵型をしており表面にゴルフボールを思わせる窪みが無数にある。この窪み一つ一つが光子砲であり、ここから撃ち出される圧縮光子の奔流をネジ曲げ標的を撃ち抜く。

この光子砲は全部で数百門あり、全砲門を用いた集中砲火を『クロスファイア』と呼ぶ。クロスファイアとは十字砲火の他、集中砲火という意味もある。

他、カタパルト兼用のレールガンもあるが、無人偵察機の射出が中心で戦闘ではもっぱら光子砲しか使わない。

全問斉射たる『クロスファイア』には、エネルギーの充填時間が必要で兆候を察する事も可能。

クルフスが抱える大艦隊。第一艦隊~第十三艦隊の旗艦を務めるのがインビンシブル級であり、それ以外にも三十隻以上のインビンシブル級が存在している。

単艦で艦隊を蹂躙可能な怪物戦艦である。


不敵級……フィアレス級大型戦艦

全長六千五百メートル。重量二億一千万トン。

サイレンとの開戦時に導入されたクルフスの旧型戦艦。戦艦フィアレスは第八艦隊の『元』旗艦である。

旧型ながら、その巨体と、それに裏付けされた桁外れの動力炉出力でサイレン軍に恐れられた。

第八艦隊の壊走後、クルフス国内に置いて、鹵獲したサイレン兵器から得た新技術。その試験艦として運用された。

フィアレス級は、鹵獲したサイレン兵器から得た技術を随時導入していた為、同じフィアレス級でありながら性能にはバラつきがある。

新技術の試験用に使われた一番艦フィアレスは、度重なる改修によりフィアレス級最高の性能を誇るが、サイレンの技術を得る前の古い設計ゆえ性能には限界がある。

フィアレス級は五隻建造され、そこで打ち切られた。

艦体をハリネズミのように覆う多数の可動式光子砲が特徴。

インビンシブル級同様、光子砲の弾道を曲げて撃つ事もできるが、全砲門を用いる『クロスファイア』は行えない。

光子砲の砲門数、百門前後。一門当たりの威力はインビンシブル級と同等。

他、レールガンに対空防御用レーザー多数。


聖闘士級……セイント級打撃戦艦。

全長一千メートル。重量百九十万トン。

サイレン艦を意識して作られたクルフスの主力艦。

敵艦に正面を向ける事で投影面積を最小にし、そして全砲門を敵に向ける事ができる。ただ、砲門数はサイレン艦より多く、一門当たりの射程と威力では劣る。

クルフスの主力艦ではあるが、サイレンの主力艦アルテミス級と互角に戦うには二隻以上で挑む必要がある。

単砲身可動式光子砲×二十門。固定式レールガン×六門。対空防御用レーザー多数。


マルス級戦略艦

サイレンの最強艦。

マルスとは戦いの神であり火星の意でもある。パラス・アテネは、このマルス級二番艦で戦女神の意。

コストの問題から二隻のみの建造。

極めて高い旗艦能力を持っていたが、電脳がイシュタルに移植された為、パラス・アテネの旗艦能力は大幅に低下した。

一番艦マルスには、フォボス・ダイモスという二隻の随伴艦が。二番艦のパラス・アテネにはイージス・ニケという随伴艦が存在したが、イージスとニケは戦闘により損失。

全長四千八百メートル。重量九千八百万トン。

主砲:二連装稼働式光子砲×六門。砲身長四千メートル。大口径電加砲×六門。対空防御用レーザー、対空防御用電加砲多数。

マルス級が三隻あれば、無敵級に勝てると船長の談。

マルス級から旗艦能力をオミットしたオーディーン級戦略戦艦が五隻ほど存在する。


アルテミス級高速戦艦

サイレンの主力艦。様々な派生型が存在するが混成艦隊のアルテミス級が基本形である。

一対一での戦闘は、あまり考慮されておらず、艦隊を組んでの一撃離脱が基本戦術である。

砲一門当たりの威力なら、一千万トン級のクルフス艦にも負けない……アルテミスが高火力なのもあるが、クルフス艦が一撃の威力より砲の数を重視する設計思想による物も大きい。

全長一千メートル。重量百八十万トン。

主砲:連装式光子砲×四門。砲身長八百メートル電加砲×二門。対空防御用レーザー多数。



『帝国スメラ』


オルトロス級高速戦艦

帝国スメラの新型艦。

反物質量産技術にも匹敵する帝国の新技術で造られた、光子バッテリーを装備。

従来艦では廃棄される核融合炉の余剰エネルギーを貯める事ができ、必要な際に貯めただけのエネルギーを一気に取り出せる超高性能バッテリー。

この光子バッテリーを用いる事で、最大で動力炉の出力の五倍ものエネルギーを貯める事ができる。

動力炉の出力はアルテミス級の六割ほどしかないが、光子バッテリー併用で瞬間最大出力はアルテミス級の三倍以上にも達する。

アルテミス級同様、艦隊を組んでの一撃離脱が基本戦術である。

全長九百五十メートル。重量八十五万トン。

主砲:固定式光子砲×二門。副砲:可動式単砲身光子砲×四門。砲身長八百メートル電加砲×二門。対空防御用レーザー多数。


高速輸送船『韋駄天』

ジーン・オルファンの輸送船。

動力炉は低出力で武装はないが、光子バッテリーを装備し推進系も帝国の最新型。

外見は旧型輸送船だが、その足の速さはアスタロスにも匹敵する。

輸送船ではあるが、特別、何かを運んでいるというわけではないらしい。

全長九十五メートル。重量千百トン。

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