表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

-9-

 それから……その騒ぎから数年後のことだ。

 我々は直ぐにその場で捕らえられ、一時的に拘束されはしたものの。間もなく、元・早見沢国民やH・S・A会員らが集めた数千万名分にも及ぶ嘆願書が効果を発し、早見沢国家解体を条件に再び自由の身となった。


 そして今や、国民皆の意識は変わり、政治参加が活発化し。平均投票率も八十パーセントをしばしば当たり前のように超えるようにもなり。あかりも私も先ずは、ほぅ……とひと安心をしている。


 そうして、皆が一時期のホリエモン程に娘のことを忘れ始めた頃。私は石垣島近くの孤島で、娘と共に、花粉症対策にと避難ばり平和に過ごしていた。

 んで、そんなとある日の午後。新聞紙を広げながら……私はつい。


「世界の経済活動が及ぼす環境問題が、またまた深刻化しているようだなぁあ~。

しかもついでに、食料問題までもかぁ? こちとら、花粉症だって大変だっつぅーのによぉ。

世界は更に、困ったモンだねえぇ~」

 と悠長に言った。


 そんなところへ、娘あかりは私の前のテーブルの上に珈琲を置きながらこう言う。


「それはまた、重大な社会問題ですね」

 あかりは、『それはイケない』とばかりに真剣な表情を浮かべ、手を『ポン☆』と打ち。

「経済クーデター、起こしますか?」

と真顔で言う。


「経済クーデタぁあー?」

 私は、持っていた新聞紙を思わずポロリと床に落とす。


「取り敢えず活動資金として、父様の少ない銀行預金から黙って借り入れ、株式取引とFXで増やしておきましたから。これを使いましょう!」

「又しても……少ない預金は、余計なお世話だが……どれどれ?」


 6の後に、やたらと0が並びまくっていた……。


「……6000億……いや、まさかの六兆円か?!」

「600兆円です」


「…………」


 またしても、目を丸く点にしていた私を見て。娘は不安気な表情で、「足りませんか?」と聞いてくる。


「……足らん、こともないな……」

 私は最早驚くことも無く、無表情にそう返した。


 そして次に、ふっと笑みを浮かべ、こう付け加える。


「で……取り敢えず、どこの『国ごと』買収する気だよ?」



 石垣島の孤島で、現実有り得ねぇーくらいに高い超高層ビルの最上階に作られた自宅テラスで。私は、あかりにそう愉快に笑顔を向け問うていたのである──。



   ―可憐なる独裁者―【完】  



最後までお付き合い頂きありがとうございました。感謝します。


本作品に対する感想・評価などお待ちしております。今後の作品制作に生かしたいと思います。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ