-8-
※本作品は、ファンタジー『政変』コメディー作品です。
すべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありませんので、あしからず。
その数時間後、国会議事堂を中心に永田町全てを巻き込んだ激しい論争が始まっていた。
「総理、《早見沢国軍》が侵攻して来る今の現状を、どの様にお考えですか? また、どのような対応を予定されているのでしょうか?」
「それについてはですね。出来るだけ早く対応をすべく、既に自衛隊には出動準備を指示し。同時に、国連やアメリカに対しましては自国防衛の努力に関する理解を求めているところです」
「しかし今や、《早見沢国》は他国です。ついこの前、アメリカ大統領とも笑顔の会談をやって理解を得たばかりなのを、まさか総理は御存知ないのですか……? つまり、今となっては、無理筋ではありませんか?」
「ですからそこは、我が国へ今なお侵攻して来ている訳ですから、個別的自衛権をもちまして……」
「侵攻、と言われましても……実際には、武力攻撃を受けた訳ではない上に。相手は、話し合いをと申し出ています。今回のケースだと、それに当てはまらないのではありませんか? 事実、まだ武力行使を受けた訳ではないのです」
「いや、こうしている間にも、相手は東京に向かって来ているんだ! これはもはや、有事だと考えるべきだろう!!」
「ですが相手は、話合いを望んでいる訳ですからね……。
それに、個別的自衛権でと総理は仰いましたが、国際法上は認められていますが、我が国では憲法9条によっていまだ、行使出来ない筈です」
「ですからそこは、憲法解釈をもちまして対応を……場合により、特措法を緊急に用意するなど……」
「ちょっと待って下さい! それだと時間が掛かりすぎます!!」
福田福助総理のなんとも煮え切らない態度に、会場は一気に非難の嵐だ。
「これは、明らかな有事じゃないか! 総理、ハッキリとして下さい!!」
「そうとも言えないぞ! 相手の戦車車両には、ちゃんとナンバープレートだって取り付けられてあるんだ。信号だって、ちゃんと守ってる、って話だ!
これが有事だっていうのなら、自衛隊戦車が走りゃ、みんな有事だろ?
大体、アレが訪れる都市都市で、あいつら拍手喝采だってんだ! それを知らんのか?!」
「屁理屈を言うな!」
「屁理屈だって、立派な理屈だ!」
終いにゃ、子供の喧嘩である。
「そもそも早見沢国軍へ武力行使することについては、憲法上の問題があるんだろ!」
「それは国際法上、国連も認めている個別的自衛権の行使と位置づけさえすれば、解決するのではないのか?!」
「国際法上、認められていたとしても。国内に於ける憲法9条が、明らかにそれを認めていない! 国内法よりも国際法が優先されるのは、非常識です。違いますか?」
「いや、ですからそこは、憲法解釈をもちまして……」
「聞いた話では福祉施設の予算についてだ、と伺って居ります。総理、どうするんですか!?」
「それについてはですね……」
「財源はどうすんだ!」
「折角、早見沢さんが私財を投じて作ってくださったんだ。管理費用くらい、国で出してやれ!」
「財源どうすんだ!」
「だったら、うちにも……同じ福祉施設を……」
「財源どうすんだ!」
「あ、それならうちにも、同じモノ作って下さいよ!」
「財源どうすんだ!」
「それを言うのなら、子育て支援の方も……是非!」
「財源どうすんだ!」
議論はいよいよ、早見沢国軍のコトなど忘れたかのように、多岐へと渡り始め……。
『道路財源どうすんだ』
『財源どうすんだ』
『自衛隊はなにしてんだ』
『財源どうすんだ』
『自衛権がどうだこうだ』
『財源関係ねーな!』
『そんなことよりも、デフレからの脱却!!』
『財源……関係ねーや!』
だとキリもなく、数日後。目の下にクマの国会議員が待つ国会議事堂に娘あかりと私は到着した。
そこでは、警備員や警官隊、自衛隊までもがわんさか守っていたが。〝猫まんま〟の砲門をそこへ向けると。我先に、蜘蛛の子を散らすかのように「お母ちゃ~ん!」と泣き叫び逃げまくり、モーゼの十戒ばりに道が開いた。
その間を、あかりと私は悠々と歩き、遂には国会議事堂内へと入り込み。福田総理の前までズカズカとモデルばりに歩いてゆくと、娘あかりは手をそのテーブルの上にソッと置き、静かにこう切り出し言った。
「──で、どうするのだ?」
警備員の壁を押しのけ、我先にと詰め掛けるマスコミ陣に。総理とあかりと私の三人は、完全包囲され。そのまま報道カメラからパチリパチリ、テレビカメラで撮られまくりである。
そんな中、福助総理は小声で実に申し訳なさそうに、こう言う。
「……未だ、審議中です。ごめんね?」
しかも、只今の議題は『少子化問題について』である。
──オットロシ!
これには、マスコミもズッコケ☆
国民もズッコケ☆
注目していた世界中も、ズッコケ☆
……次いでに、地球侵略にわざわざ来ていたカエル型宇宙人までもが、ズッコケ☆
呆れて、エイリアンまでもが頭を抱え帰っていった……。
こうして、地球の平和は見事に守られたのである。こりゃ良かったんだかどうなんだか……?
◇ ◇ ◇