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※本作品は、ファンタジー『政変』コメディー作品です。

すべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありませんので、あしからず。



 ムサイ艦橋バリの元・市長室の艦長?席にて、資料を読み返していた娘に。ネット掲示板を利用した、直通の三時間も続く直接対話の時間がやってきた。


 昼の二時から、夕方五時までにも及ぶ直接討論会である。


 これ自体はいつも周一で行われている定例行事で、特段変わった行事ではない。

 しかしその日の討論会は、特に白熱した内容であったのは、私のような呑気な男にも十分感じられる程だった。


 その白熱した議論の内容は、思想的暴走とでも言えるのだろうか? 個々に熱心であるだけに、手に負えないコトも時にはあるものだと。流石の呑気な私でさえも、悟らされるくらいのものだった。

 これは歴史に残るだろうなぁ、ともその時は思ったさ。


 

 一つ正しさを立証されると、それに走り易いのが、若さである。

 ネット掲示板での討論会には、多くの若いネットユーザーが訪れる。


 若さばかりではない。深い考えをするのが余り得意でない思慮の浅い者も、これに含まれる。

 中道を好む層も、これに呑まれ易い傾向を時折よく見せるのが、常というモノだ。



 今回、問題となった議題は、前回の『収入別税制法』に関するもので。収入の多い者と、生活保護者との差を更にもっと広げ、より国際競争力を高めるべきだ、という現行法に対する改正要求案だ。


 しかしこれには、どうも裏がありそうだった。


 高収入者に対する減税を求めた意見の発端となった者の紹介ページを確認すると、まさにその『高収入者』に十分該当する者からの書き込みであったことが確認されたからだ。


 つまり、国家的な方向を平たく上から眺め《憂国の念》から出た、尊敬にも値する意見ではなく。実に、単なる個人的な利益に特化した、下卑たる意見であったに過ぎないのではないか? と疑われるものだったからだ。


 それが言葉巧みに覆い尽くされ。気付かれ難く。かつ、流暢に周りのものを巻き込むにも長けていたので、尚更に質が悪い。


 しかしこれに、瞬間的に賛同する意見が、ネット内で多く飛び交った。



 こうした周りの者達の全ては、純粋にこの早見沢国を強くしようとする、熱い思いから生まれてくる熱狂的発想なのは、個々それまでの書き込みの流れから理解するにも易い。

 それら熱意ある意見は、実に評価に値する。が、それ故に。その問題は難解を極めていた。


 正直、個々の論点を批判するのは簡単ではないし、すべきではないだろう。それは分かる。


 娘にとっては、結果として、国益に繋がるのだから有利な展開だともいえる。また、娘がそれ(国益に繋がる)を感じ取り。ここは黙って受け入れ見過ごすだろう、と読んで仕掛けている節が、当の『下卑たる論者』らしき者からは垣間見える。


 例え……その為に、『置き去りにされる弱き者』が生まれたとしても。黙ってさえいれば、そのままそれへ世論の流れが勢いづき行くかと思われた。


 しかしそこへ娘が、静かに俯き……やがて決意に満ちた表情で、一文、こういう書き込みを行ったのだ。

 それが、全ての問題の始まりとなった。



『余り偏りも過ぎるのは、どうかと思うが……?』



 一部を除いた、多くの者が描く国を憂いた真摯な意見を、『偏り過ぎでは?』と批判的な印象を与える形でされたことに対し。しかもそれを書き込んだのが、大統領である私の娘あかりであることを知ったネット討論会に参加していた多くの国民達は、『ショックだった』とのちに感想を述べている……。


 それでも娘は、分かってか分からずにか、更にこう繋げたのだ。



『この前、通ったばかりの法案で。未だ結果すら、何ひとつ出てはおりません。

特に、問題となるモノすら現状では見当たらないのに。これを現時点で無闇に改正するというのは、如何なものでありましょうか?

それにこれは、全体のバランスを含めた上で、皆と共に議論を深く交わし決めた。極めて完成度の高い法案であると、私は信じ。これを《国民投票》に揚げ、更には国民皆の協力により《結果》を得た。大変価値ある法案なのです。

今一度、皆共によく考え。冷静になってみては、如何なものでしょうか?』



 娘はこれまで、断定的な狭い議論の枠を設けたり。ましてやそれを強要したりすることは無く。批判的なことは極力言わず、何事も皆の反応を見てから決める手法を執ってきた。


 《軍事独裁者だ!》と陰口を叩かれながらも。直ぐに大統領選を行ったり、ネット投票やその判断材料とする為のシステムを早々と完成させたり、と。あらゆる批判が浴びせられる中、それでも負けず挫けることもなく手早い対応を迅速かつ根気よく行い、今に至る。



 当初、ネット掲示板には、軍事独裁反政府組織とも思われる組織ぐるみな訪問者が多数現れ。現在でもそれは多数に及ぶが、同時に味方とも思われる者達も、日増しに増え続けていた。


 その者達の味方となる理由としては、娘の行う手法が『よほど民主的ではないのか?』ということからだった。

 その娘が、この日に限って、こういった強いメッセージを発したのだった。



 それは、彼らにとって『ショック』である前に、衝撃的な出来事であっただろう。

 しかし……今回は、この出来事が意外な方向へと向かうきっかけとなるのだった。


 娘の書き込みの後、直ぐに批判的な者達が喜んで、

『ほら、流石は独裁者だwww いつかボロが出るとは思っていたよww』

『たわいもない……所詮、独裁者だわw』

『きょわあ~いw 虐殺されちゃう~んwww 逃げなきゃあああ~あww』


『……ていうか、今日で君らとはさよならだな? 頑張って逃げろよぉお~諸君wwwww』

『お前もな!w』



 などと、あることないこと批判を重ねていた。

 これ自体は、予想も容易い出来事で。職員や娘寄りの国民共々、「あぁ、またか……」「ほら来たよ」といった思いを、皆がPC画面越しに感じていたことだろう。


 しかし間もなく、ある異変に一人の者が気付く。



『あれ? 《アクセス数》五百万いってるよ……』

『ちょwwwww 《来訪者数》二十五万ってマジか?

これってさ、現在進行形でココを覗いているリアルな人数だけ表示した数字なんだよね??』

『これって、昼の討論開始から開設2時間の間にだろ?? 捏造じゃねぇーの?』


『>捏造

独裁者なだけに、五百二十五万分に有り得るなwww』

『確かに、有り得過ぎて笑えんwww て、まあ~すでに笑ってはいるがww』


『wwwwww』


『ちょっと! ここは直接討論用の政治板です。雑談なら他でやってください! みんなの迷惑です!』

『↑お前もな!』


『>ちょっと、ここは直接討論用の政治板です。

独裁国家で民主的討論会なんて、そもそもがワロスw 流石に私の腹筋も、そこまでもたんわw』

『だから、政治以外の話は余所でやってください! 議題を無視しないで!』

『そうこうやっている間に、七百五十万突破www 捏造フル稼働中だにゃあ~w』


『来訪者数も異常に増殖中ジャマイカ? ……三十五万ってなによ?

いくらなんでも捏造すぐるな……今ホントに此処見てんの?

その割には、書き込み数少ないよね……?? やっぱり捏造、ってこと?』


『>その割には書き込み数少ないよね?

結構決まった奴ばっかりが書き込みやっているからな。他はみんな、単に、ROMってんだろ? それに少ない、ったってスレ数見てみろよ。決して、少なくはない』

『……あっさり九百万突破!』


『九百万って……ここの人口軽く超えとるんでね~のか? ……ほんま、アホちゃうんか?』


『アクセス数と人口は余り関係無い。来訪者数=閲覧者数でリアルな数だから、これは関係してくるが……』

『それにしたって、まだ何分も経っとらんのだぞ? 捏造も過ぎると、怒るのを通り越して呆れちまうな……そこは独裁者だから仕方がない、ってことか?w』

『面白い……更新する度に数十万単位で増えちゃってる』

『わ!w ホントだwww』


『おまいら! 余りそうやって捏造に協力するんじゃない♪www

……おっと、ホントーに増えてやがるなwww』

『ただ今、皆で捏造協力中~www』


『ここのスレ、流れが早過ぎて追い付けない……読んでるだけで、もう~必至♪』


『流石に、たったの十五分で1000レスはあんまりだ。記録更新しとる……』

『自動スレ生成……便利すぐるなwww しかし二十三スレって……単純に二万三千レス目……だよね?』

『……あっさり、一千二百万突破!』

『え? こっちは一千四百万だよ?』


『……おいおい。ホントにコレって捏造か? どんだけの人数動員しているんだよ……だんだんと心配になってきたぞwww』

『そこはシステム的に、捏造でしょ?www』


『ですから、政治以外の話はここでしないでください。アクセス数なんて、今は関係ないでしょ!』


『>アクセス数なんて、今は関係ないでしょ!

バカかお前は! これが捏造だったら、大いに問題有りまくりだろが、ボケ!

ちったあー頭使いやがれ、このゆとり!』


『>バカかお前! これが捏造だったら大いに問題有りまくりだろが、ボケ!

それは他の掲示板でやればいい話でしょ。違いますか?』


『>それは他の掲示板でやればいい話でしょ。違いますか?

問題意識無さ過ぎだろ……ボケ。……アホは相手にしちゃおられんなw』

『……アホは言い過ぎ。だけど……確かに問題はある、気はする』

『問題?』


『問題ってあんの?? どこに??? 誰かオレに、ガンダム例えでおせーてwww』


『>問題ってあんの??

ちったあー自分の頭で考えんか! いちいち説明していられるか!』


『>いちいち説明していられるか!

民主主義の原則として、それだと話し合いが成立しない。とはいえ……ガンダム例えネタも、もうー秋田米』

『あっちゅ~まに、二千万超えちまったよ……。早すぎるで! 天井知らずかよ……』

『じき、4ch超えも近いモナ……?』

『既に超えとりゃせんか?w しかし来訪者数は五十万止まりか……こんなもんかな~?』


『ちょww 二千六百万ってwww 時間単位だと、ネズミ算的に増殖中ジャマイカ?w』

『>ネズミ算的

そんな感じかも……それ以上、って気もするが……;』


『>民主主義の原則として、それだと話し合いが成立しない

最近のゆとりは、その理屈を盾に自分の無能ぶりをひた隠しにしている、……と思う。それでいて答えが出ると、ああそうか、と後で分かったクセにシタリ顔でなんか言って偉そうにする、アホばっか。そんなだから育たない。自力が身に付かない。何事も近道は無い、ってことを先ずは知れ。人生、経験してなんぼだ。先の人みたいに、素直にわからないと言えばまだ教えてもやるが。後の奴みたいに、教えて貰って当然かのように言われると、教えていいことでも教えたくなくなるのが「人情」だということくらいは知っといても損は無い、とオレは思う』


『自分の考えも無い者と議論交わしても、幽霊と話してんのと一緒で。答えもなきゃ捕まえようもないから水掛論で終わりクサい、モナ?』

『確かに最近増えているよな……教えて貰えるのが当たり前、みたいに考えている奴……』


『ゆとりが沢山ジャマイカwww』

『……あっさり三千万突破www もうーメチャクチャだぁー……』


『三千万超え、おめ~』

『捏造組の諸君! お疲れさんwww』

『来訪者数は五十二万……う~む??? このアンバランス感、個人的には納得いかん;』


『問題はあなた達の方でしょ! 批判ばかりして、代案も無いクセに! 政治以外の話しや無駄なレスをやるからレスが早く流れ過ぎて訳が分からなくなってる! 

大統領様、このままでは議論が出来ません。この人達をこの掲示板から追い出して下さい!』


『>問題はあなた達の方でしょ。

お前がな』


『つまり、〝問題〟がわからないのかぁあ? 

そりゃあ~解きようが無いから、それこそ相当に問題だなあ~、ゆとりwwwwww


『……ていうか、既に…政治板ていうよりも、雑談板化してる気がしているのはオレだけか?』

『考えてみたら、大統領来てなくない? サボってる??』



【大統領】

『>大統領様、このままでは議論が出来ません。この人達をこの掲示板から追い出して下さい!

……それは出来ません。幅広く意見を聞くのが、ここの趣旨目的なので。それを辞めては、ここの意味が無くなります。よって、自由活発な意見自体はウェルカムです。

……但し、一部過ぎた表現があるようにも窺えますので。議論内容などに対する酷評であれば、構いませんが。個人を叩くだけの目的が濃い、侮辱的表現が余りにも過ぎるようであれば。その者に対しては、出入りを制限することもありますので、今後、各自発言には呉々も注意するよう心掛けて下さい。


>考えてみたら、大統領来てなくない?サボってる??

ちゃんと拝見しておりますよw』



『>幅広く意見を聞くのがここの趣旨目的なので、

……大統領様、分かりました。私の心得違いでした。大変申し訳ありません!』


『>自由活発な意見自体はウェルカムです。

大統領閣下w そりゃあ~有り難い仰せでwww ならば早速一言申そう!

サッサと大統領なんか辞めて、オレ達を本国へ返してくれよwww 頼むからあ~wwwww』

『あーあ……とうとう言っちまったよ……この人w』


『そんなことより、おまーら、今4chが大変だぞ!』


『出入国は原則自由なんだから、勝手にあなただけ出て行ったらいいじゃない?』

『それもいいけどよ……ここの捏造疑惑の決着を見るまでは、とても帰れんなあ~www

こんな楽しいイベント。滅多に無いもんなぁwww』


『4chも、ここと同じような状況みたいだなぁ……』


『アクセス数が捏造だろうとなかろうと、それはそれ。議論は議論として今はやるべき』

『私もそう思う。この人達、そこが分かってないのよ!』


『>4chもここと同じような状況みたいだなあ……

ていうより、ここがネタで数字が跳ねてクサい感じだったよ。……捏造?? どうだろ……なんか頭が混乱してきた』


『まあ待て。ここは冷静に皆で考えて貰いたいので、問題定義くらいはちゃんとしておこうか。

仮にもし、本当にここが捏造となると。これまでの国民投票だって、捏造の疑いが出ちゃうだろ? するとどうなる? これまでの国民投票の結果自体が、『捏造』だったってことになりはしないか? そうなると、この捏造疑惑が晴れない限り、議論をいくら進めても仕方がない、ってことになるんじゃないのか?』

『ちょっと待て! そもそもまだ捏造だと決まった訳でもあるまい? ん? 4ch??』


『捏造だと決めつけたいのよ……この人たち……』


『……だから《仮にもし》、と言っている。別に私自体は決めつけてはいない! よく読め!』

『了解。見落としてますた……; おお! 4chも凄いことになっていた……;』


『……あのぅ~いつの間にか八千万突破しているんですけど?;』


『こっちゃ九千三百万になってますがな……更新する度に千数百万単位て、なんやねん;;』

『断然捏造パワフル稼働中だニャ~~www』


『流石にここ、重くなってきとりゃ~せんか……?』

『……うん。段々に……おも; フリーズも間近い?』


『いやいや、確かここのサーバーにはスパコン三千台が使われていた筈。もしパンクをするとしても、回線の方が先にアボン! じゃね? 4ch? あれれ???』


『そう? うちのパソコンいまだにMEだけど、動作に変化無しw 元々重いからwww 

開くのに、約三分。開いた時には、もう既に新しいスレッドがたってる感じw

4ch? それどころじゃない感じwww』


『そりゃ自慢にもならんなw』


『おいおい、ちょっと待て! オメェー投票用に送られてきた《政府支給品》はどうした?』

『即売りwww』


『……そりゃあーありえんゆとりぶりだぞ、お前www

>即売りwww

一応聞いとくが、それやるとどうなるか知っててやったのか?』

『ん?? なんかあるの?』


『出たwww 流石はゆとりだwwww それくらいの予測くらいはしとけwww』

『…そりゃ罰金に課せられ、当然刑務所行きさ。無論終身刑。最悪死刑。

独裁国家だけに、そこは恐ろしいぞ♪ まあ~自業自得だがなあ~www』

『……;;;;』



【大統領】

『終身刑も死刑もありませんよ。ですが、罰金くらいは有ります。

これについては覚悟下さいね? ちゃんとやってる人、やってない人、差を付けるのは。人の行動原理に鑑みるに、必要なことだと思いますので。あしからず』



『;;;;;;』



【大統領】

『■スパコン:現在のスパコン全体の使用率ですが、三十四%でした。

0.3~0.5%/分で現在も伸び続けております。いつもに比べると、異常な伸びと高さですが。今のところ、システム自体に問題の発生はありませんね。


■回線:言われて調べて見たところ、使用率が八十%を超え九十%に近づいておりました。余りよろしくは無いですねぇ……。重くなり始めている原因は、恐らくコレでしょう。

各自、不要な再更新などは控えるよう協力願います』



 と娘あかりは、簡単な書き込みを行ったが。現場であるこちら側では、予備回線を急遽繋げ、その際に不具合が発生しないかなどの確認作業が急ピッチに行われごった返していた。


「……えらいこっちゃ……」


 直接討論開始から、とうとう三時間半……既に三十分も延長していた。その間娘は、大型ディスプレイに映し出されている川のように流れる掲示板の内容をただただ眺め。重要と感じた部分を、切り取り隔離し素早く保存していた。

 と、そこへ。


「……これは、なんだ?!」

「──!? 凄い……」


 夕方から予定されていた会議になかなか現れない大統領の様子を伺いに来た閣僚が。そのディスプレイの内容を確認して、思わずそう漏らしていたのだ。




『一億も近いな……』

『>一億も近いな……。

……おいおい。経った三時間半でか? うそだろ』


『この異常なまでの急上昇ぶりだけで考えると、僅か一時間の出来事』

『実はオレ、いつかはこうなると思っていたんだ……』


『>実はオレ、いつかはこうなると思っていたんだ……

そもそも国民皆の意見をリアルタイムで聞くなんていうのに無理があったんだと思う。例えば、日本人全員がみんな一言づつでも書いてみたとする。それだけで単純に一億三千万レス……。一通り読むだけで、徹夜確定だよね……? オレだったらその時点で、HPごとポイッ♪w』


『wwwwwwwww』


『来訪者数は五十五万……こっちは思ったほど余り伸びてないぞ? なんでだ??』

『流石の捏造も、来訪者数にまでは手が回らなかったと推測してみるwww』

『なにこの偏った捏造ぶり?w』


『捏造な訳ない。それだけ注目さるてるってだけ! ……と信じたい』

『私も捏造であるとは信じたくない』


『お前らなー。ここの国の人口から考えて、こんだけのアクセス数、普通に考えたらいくわけねーだろ? 

大体来訪者数が五十万足らずで一億八百万アクセスって、どんだけのアクセスノルマなんだよ。計算してみろ。笑うぞwww それくらいは分かってくれよな? な?』


『……確かに。凄いアクセス数だとは思うけど……』

『はい!w 論破♪』


『きゃははwww それにニャ~、こんだけ言われてて未だにこの件で釈明の一言も無いっていうのも、普通おかしいって思う筈なんだけどにゃ~?』


『それはそうと……一気に、三億五千万超えww このままだとギネスにも載るんぢゃね?w』

『てか、既にギネスもんぢゃねーか?ww 捏造してなきゃだけど……w』


『大統領様、もし捏造じゃないのならハッキリとそう仰って下さい。お願いします!』



 それを受け……娘は、背後に立つ閣僚らを厳しい表情で見回した。

 そんな娘に対し閣僚らは、「そんな指示は出していない!」とばかりに、顔を左右に激しく振った。


 それを見て、娘あかりは確信的に頷くと。再び大型ディスプレイの方を向き、素早く打ち込む。



【大統領】

『来訪者数、アクセス数共に、捏造などではありません。そのような指示は出しておりませんので』



『>捏造ではありません。

らしいよ?』

『犯人が、警察から「お前が犯人だろ!」と言われて、どれくらいの犯人が「はい、そうですw」なんて素直に吐くと思うか? 

小学生でも分かりそうな回答だww 役所総出で間違いなくやってんだって!』



 そんな書き込みを見て、閣僚らは「なんだと!」とばかりに吠え怒りを露わにしたが。うちの娘がそれを、サッと制した。



『オレん家の兄が、実は役所勤めなんだけど。今日は寝転んで、テレビ見て、たまにここ覗いている感じ。

ここの惨状にさっき、ナンじゃコリャ? と驚いてたくらいな感じ。

あれって演技だた、のかな??』


『>4chもここと同じような状況みたいだな……

ホントだ! ていうか、日本国からここの掲示板見られんの? 書き込みも自由だったん??

知らなかった……』

『確か……閲覧は、可。書き込みは、不可。だた……と思う』


『サンクス!』


『結構みんな普通にスルーしているけど。一度、4chを覗いてみたらいい。オモロいことになってるからwww まあ今は、サーバダウン中でどの道入れんけどなwww』

『ホントだw 鯖ダウンしまくっておるwww』


『……どれどれ?』



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 4ch画面  真っ暗……

 モナ~がペコペコ


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



『あれって……ここと関係あんの?』

『はあっ? 関係ねぇーだろ!』


『わかんねーが、書き込みみる限りぢゃ。ネタはこの掲示板だたからね。サラッと読んでみると、参加したい、って書き込みもあったくらいだからなぁあ~……』

『みんな物好きすぐるwwww』

『そうか? オレは意外とこの現状を楽しんでいるがwww』

『実はオレもw』


『今、アクセス数と来訪者数のギャップに関する謎が解けたんだが……どうやらアクセス数は、国内外問わず全てカウントされている。ところが、来訪者数の方は、書き込みも可能な《国内からの訪問者のみ》、カウントされている。

どうやらそういうことのようだ』


『ということは……来訪者数の六十万人はガチ? 

て、ほぼ全員が参加してるってコトか?』

『だと思う……』


『オレの知り合いが今海外に居るんだけど。海外でもここ、注目されているらしいよ』

『なんで?』


『新しい民主政治の形だ、と評価されたり、批判されたりしているらしい』

『新しい、民主政治の形……? アホか。単なる混乱の火種の始まりじゃねぇ~か!』


『確かにそうだと思います! 皆さん、冷静に考えてみて下さい。これまでこんなことが可能でしたか? いえ、可能だったのに。これまでの政治家達はそれをやろうともしなかったのです。

でも、私達の大統領は違います。

これまでの常識に捕らわれない、私達の為になる努力をなされている。そうは思いませんか?』



 この後も冷静な書き込み投稿が複数人からあがり始め、国内の来訪者数に対して書き込む人数が少な過ぎやしないか? 既に、56億アクセスを超えているのだぞ! 遠慮しないでドンドン意見を出して貰いたい、等という書き込みも現れ、直接討論開始から約五時間……既に二時間も延長していた。



 その間娘あかりは、大型ディスプレイに映し出されている川のように流れる掲示板の内容をただただ眺めているばかりであった。


 そして、ふと数枚の手紙に目をやり。口元に笑みを浮かべ、こう漏らした。


「もぅそろそろ……十分、なのかもしれないですねぇ?」

「……」


 その時の娘あかりの表情には、寂しさと嬉しさのようなものが。複雑に含まれ絡まれているように、この私には窺えた。

 そして間もなくのコトである。

 日本中……いや、世界中から目まぐるしくも殺到していたアクセスにより。その総アクセス数は3000億を軽く超え、三千台もあるサーバーがついには一気にダウンした。


 その瞬間、世界中でこんな一言をみんなが漏らしたのだと聞く。



『──あ!!』



 まあ……噂でだがなぁ~。



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