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※本作品は、ファンタジー『政変』コメディー作品です。

すべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありませんので、あしからず。




 それじゃあ~困るのが、日本国の政治家達だ。

 大統領選で、てっきり落選するモンかと思い鼻ほじりながらのんびり様子を窺っていた、ってのに。ナント意外なコトにも圧勝。

 しかも、『上手く行く訳がない』と思われていた政策すらも。今じゃ国民に支持されている、と聞く。


 勿論、財源が《個人通帳の6000億》と限界はあるものの。あんな小さな街だけに、まだまだ1年や2年はこのまま行けそうな雰囲気と来たモンだ。

 あんな財源無視の御都合政策をやられたとあっちゃ~、ラノベ万歳なマニアやお茶の間の国民は兎も角として。これまで真面目な政策をやって来た政治家等からしたら、決して面白くも楽しんで居られる状況でもなかったのだろう?


 そんな訳かどうかは分からんが、国会で今、熱い論議が交わされていた。

 つまり、『テレビ中継なう』だ。


「たったの一年……。しかも、限定期間付きの蜂蜜に漬け込まれた国民が。あの国の解体後、再び我々の同朋として戻って来た際の不満は、今からでも十分に想像が付くことだと思われますが。

総理、あなたはこの件について。どのようにお考えなのでしょうか?

もし、お考えがあるのであれば。それを是非、我々と国民にここでお聞かせ頂きたい!」

「総理大臣、福田福助君」


 出頭から、野党議員はやる気満々だ。

 それに対し、福田福助総理は軽くため息をつき。それから立ち上がり、相手議員に対し落ち着いた口調で答弁をする。


「それについてはですね。御存知の通り、国連の決議を取り付けまして、早急な解決を果たすべく行動を只今致して居る所であります」

「その、行動とは? 具体的に願います!」


 相手議員は、ムダにやる気満々だ。

 が、福田福助総理はやはり落ち着いた表情で口を開く。


「場合によっては、個別的自衛権の発動も視野に入れて居る、そういうことです」


 会場は一気にざわめいた。


「これは……驚いた。つまり、我が同朋である相手に『銃剣を突きつける』と? そういう解釈で宜しいのですね?」


 関ヶ原よろしく『ヨッシャ首を取った!』とばかりに、相手議員は声を張り上げ言い。

 対し、福田福助総理はまたしても吐息をつき。自らの気持ちを落ち着かせた様子で、答弁をする。


「同朋に、では無く。あくまでも、限定した相手と場所を選んで、行います」

「総理はそう仰いますが、現実的にそんなことが可能でしょうか? 仮に、アメリカの力を借りトマホークで狙ったとしましょう。

はい、上手く着弾しました。しかし、火の手が上がり飛散した破片が周りの民家を直撃します。負傷者が出ました。更に、相手は報復の為〝猫まんま〟なる特殊戦車で応戦してきました。

被害は更に拡大します……。

総理、常に最悪の場合を想定した作戦を私共は希望しますが。如何にお考えでしょうか?」


 流石の福助総理もそろそろ苛立ちをあらわにし始め、相手議員を厳しい表情で睨みつけ。しかしやはり……自らの気持ちを落ち着かせた様子で口を開く。



「勿論、想定はしていますよ。ただね……それにも限界がある訳ですから。今はただ、『最善を尽くす』と……私から言えるのは、それのみですよ」

「ちょっと総理、待って下さい! つまり、想定はしているが、想定外については、仕方が無い。たまたま被害を被った人達は、仕方が無いのだ。

更に言えば、被害を被った人達はみんな『仕方の無い想定外な人達』なんだから良いんだ。

だから政府に、責任は無い。

総理はそう仰っている訳ですか!?」


 福助総理はその議員に対し、ついに呆れ顔を見せる。


「ふっふっふっ。よくもまあー、そこまでひねくれられるものだと関心をしております。

仮に、あなたがやった場合でも変わりは無いと思いますが。現実社会では、常に想定外なことは起こり得るコトでしょう? そりゃあ~あなたが言うように、〝仕方が無い〟と流石のこの私だってね、そんな風には切り捨てやしませんが。こと、最善を尽くしたあとの事後で起きた災難については。大変に申し訳ありませんが、『ただただお見舞いを申し上げる……』それのみですよ。

今がまさに、『有事の時である』ということを各議員共、先ずはここでご理解頂きたい!

この有事の際、実際にこれから現場で行動をする自衛隊員に対し。そうした必要以上の精神的重荷までも押し付けてしまう形になるのは、果たして国益に適うモノでしょうか?

コイツはちょっと……自衛隊の人たちからすれば、堪ったモンじゃありませんよ。

そうした責任部分については、我々が《政治生命を賭け》、〝全てにおいて引き受ける〟今はもしかすると『お前たちに、それが本当に出来るのか?』と……我々自身が、彼女から試されているのではないのか?

……私は最近になって、日々そのように感じております」


 福助総理の言葉に、国会議事堂内は珍しい程に静まり返る。



「……総理が仰いました通り、私も自衛隊員に無用な責任を押し付けることに対しましては、反対しますが。自衛隊員には、それだけの責務と自覚を持った行動を、常に願いたい次第です……。

また、国を預かる政府に対しましても、同じ思いであります。

では、総理は事後の責任に於いて。自衛隊の引き起こした全責任を自衛隊員に成り代わり、最終的に自らが責任を負う覚悟だ、という解釈で宜しいのですね?」

「………」


 長い沈黙の後、総理大臣福田福助は一旦目を瞑り、再び開いて言う。


「まあー、その方がスッキリとしていて、宜しいんじゃあ~ないんですか?」




「──ほおー!」

 なんか知らんが、それまでテレビをぼんやりとつまらなそうに眺めていた娘あかりだったが。急に瞳を輝かせ、興味を持ち始めた様子だ。




「自衛隊の行動については、早い内から防衛大臣に指示し。最善を尽くすように、と言ってありますので。あとは現場を信じ待つしかない、っていうのが。今の私の立場な訳です。

他に出来ることと言えば……彼らが働き易い環境を整えること、それしかありません。

実際に、武力が必要なのか。武力以外で解決可能なのか……。

無論、武力以外での解決を望むものでありますが。ありとあらゆる可能性の中から、最善と思われる方法を選択し臨みますよ。

それでもし、世論が割れ、ましてや我々の政党が支持を失うことがあるのならば。そりゃあ~私だってね、その責任を取って辞職はするし。国民の審判も当然に仰ぎますよ。

何に致しましても、早見沢国家なるものがこの泰平なる日本にある日突如として出没し。しかもそれは、『独裁国家』である。

それに対する対応を、強く世論は政府に求めている訳ですから。我々としましても、それについては最善の対応を謙虚に……そして、真摯に取る所存でありますからね。まぁー見ていて下さい」




「それは……実に、良い覚悟ですね! 楽しみではないですか♪」

「楽しみぃ~?」


 とても面白くも愉快とも、ましてや楽しんでいられる状況ではないと思うのだが……。

 娘は、なんとも愉快そうに笑顔を浮かべテレビなんぞを見入っている。

 理解不能もいいトコだ。


 仕方なく、私は頭の後ろを掻きながら聞いてみた。


「なぁ、あかり。父さんには今の、とても愉快な内容の議論には思えなかったんだがぁ……。父さんが気づかなかっただけの話で、何か面白いことでも途中で言っていたのかぁ?」

「………」


 しばらくの間、私の顔をぼんやりと眺めていた娘が、そこで急に『ぷっ♪』と吹き出し笑い出した。


「いえいえ。余程、父様の方が面白いですよ♪」

「へ??」


 くっくっと笑い堪えながら言う娘に対し、私も仕方な気に釣られて笑う。



 まぁあ~結局の所、この娘を信じるしかないからなぁ~。

 それから一週間後、日本国の総理大臣から対談の要請が正式に来た。




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