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お仕事コン参加作品です。応援のほど、どうぞよろしくお願いします。


お仕事⇒独裁者(ぇ?



※本作品は、ファンタジー『政変』コメディー作品です。

すべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありませんので、あしからず。



 そこが独裁国家であれ、社会主義国であれ、民主国家であれ、自分や家族など身近で大切な者たちの暮らしが豊かであるのであれば。人は案外、そんな《体制》自体にゃ、実のところ大した関心などないモンだ。


 問題は、例えば専制君主制であるならば、庶民的感覚の薄い君主が政治を取り仕切り、自らに都合の良い行いばかりを誇張し、更には我々庶民の生活をないがしろにし、結果としていくらかなり迷惑が生じ始めたところから。不幸……というか『このまんまじゃ、いけないんでねぇの?』なんて人の思いが交錯し、芽生え産まれ起こる頃より始まんじゃねぇのかぁ?と私しゃ考えている。


 それが例え、今ある一番のシステムだと思われている民主主義体制であったとしても。中身的に、既得権益を強く持ったコンツエルン的ブルジョワジー支配体制が濃厚であったり、腐敗した官僚政治であったり、極端に偏った多様性を認めない大衆迎合主義(全体主義)であれば、それはそれで同じ不幸の始まりなんじゃないのかぁ?と思っている。


 なんか細かい下りなんぞしちまったが、まあ~要するに、つまりはアレだ。


 民主主義であれ、社会主義であれ、独裁国家であれ、そのシステムを動かす人間の『質』というか、理念に『何かしらの欠落』が有れば。どんな体制であろうとも、『なぁ~んの意味も無いんでねぇの?』と私しゃ考えている。


 ──そこで提案だ!


 もし仮に……それが“クリアさえしちゃっていれば”、さてどうなるのか?

 そうだなぁ~例えば具体的に言うと、こんなのなんてどうだろう?


 庶民的感覚が有り、更には食いにも困り、死生の経験をも持ち合わせた“庶民的英雄君主が未来永劫に君臨する”のであれば……だ。

 それって、意外にも望ましいコトだと、君は思わないかい?



 あー…コホン。


 さてぇ……人類が宇宙に飛び出して、はや半世紀以上が経ち。遺伝子研究で人の遺伝情報操作さえも、その気さえありゃ触れてしまえそうな、この御時世。

 そんな訳で、遺伝子をいじくりたおし。完璧っぽい人間を創ろう、なんて途方もない考えを持つ科学者の一人や二人が現れたって、別に不思議な話じゃあ~ないよなぁ~?


 まぁ~そんな訳で今、ここに”出来た”。



「おはよー。あかり」

「お早うございます。父様」


 ぺこりと下げた、現実有り得ねぇーくらいに綺麗な顔立ちの可憐な女の子。見た目は、十六歳ってところだが……。

 今、私のことを『父様』などと言った、この娘。私は決して、この子の『父さん』なんかじゃあ~ないぞぉ──!


 今までの話の流れで大体、想像くらいはつくだろう?


 なに?

 想像がつかない??

 ならばその想像ってなやらを、これから私が君に授けて上げようではないか!


 この子は生まれながらにして、この体。

 しかも歳を取らない。……っていうよりか、細胞分裂の制限を外したもんで、九十歳だろうが百五十歳だろうが、見た目に何の変化もない、っていうご都合設定な訳だ。

 だからといって、《不老不死》という安直な設定じゃあーないぞぉー!

 ざっと、三百歳までが限界じゃなかろうかと思っている。


 それは本当か、って?

 いやいや、根拠なんかまるでないさ。何となく感覚的にそんなもんじゃないのか、と思っただけの話だよ。

 そんなコトは些細なことだ。気にするな、こだわるな。何とかなるさ! それが人生ってモンだ。


 なに?

 話しが段々とズレきてやしないか、って??

 しかも、何でまたそんなムダそうなモンをわざわざ作ったんだよ、だってぇ~?


 それは実に大変申し訳なかったとは思うが。話の流れで、大体分かるだろう~?

 というかお願いだから、察してくれ!

 別にこれで、『美人コンテストを総なめにする』……だの。『芸能界入りさせて一山当てよう』……など。そんな庶民的なことを、考え…………。いや、待てよ……それも案外、悪くはないかなぁ~?


 それでゴージャスな生活をエンジョイ、なんてなぁあ~ナハハ♪



 いや! いや、いやダメだ。ダメだ!

 私の野望は、そんなチンケなことじゃあ~~ない。

 コイツを絶対、君主にしてやる! ……ズバリ、これだ!!


 うんうん。



 そんな訳で、この世界のありとあらゆる情報をこの子には記憶させた。

 記憶させた、と言っても。何もハチマキさせて、詰め込み勉強なんかやらせた訳じゃあーないぞぉ──! 

 脳内にそういったチップを埋め込んだだけだ。

 漫画みたいな話しだが、これが案外と上手くいった。取り敢えず、常識的なことや世界中の言葉は話せる。同じ詰め込みでも、まるで才能発揮すらせんかった私とは対照的な話だなぁ~?

 しかも、その文化的精神にまで精通している。

 更に正義感が熱い。

 やたら熱い!


 まさに、世界の君主になるべくして生まれた感有り、って訳さ。



 そんな独り善がりな思いを、〝当時は〟情熱の限りに思い余って、"勘違い"しまくりの馳せまくり。あれから数年と経った、太平なとある日の午後。

 私しゃ今じゃ当時の思いも熱意もトンと忘れ、薄れちまい、どうとでもよくなり。余生を楽しむが如く、居間で新聞越しにテレビなんぞ眺めながら、呑気にこう零していた訳だ。



「またうちの市長さんが、問題起こしたらしいなあ~っ。……しかも今度は裏金かね? 全く懲りないねぇーっ」


 そんなところへ、娘あかりが私の前のテーブルに珈琲をソッ…と置きながら。


「それは許せませんね」と、無表情に言い。

 次に、『良いコトを思いついた!』とばかりに手を《ポン☆》と打ち。

「クーデター、起こしますか?」なんて突拍子もないことを艶美な笑顔で言う。



「クーデタぁあー?」

 流石の私も、思わず苦笑いだ。


「取り敢えず、軍事費として父様の少ない銀行預金から黙って借り入れ、株取引とFXで増やしておきましたから、これを使って〝やり〟ましょう!」

「少ない預金は余計だが……どれどれ?」



 しかも“黙って借り入れる”なんて、犯罪紛い……というか明らかに犯罪だが。

 私しゃそんな細かなことは気にせず、娘が出した通帳を覗き込んだ。


 なにやら6の後に、やたらと〝0〟が無数に並んでいるが……。



「……まさか。6億かぁ?」

「6000億です」


「…………」

 目が点の丸で、一応確認する私を見て。娘あかりは不安気な表情で、「足りませんか?」と聞いてくる。



「いや……当面、これだけあれば十分だろう……」

 ──というか、十分過ぎるわぁああ──い!

 これだけあれば老後の心配なんぞ、一切なさそうだ♪ これならば娘を無理に君主になんぞしなくても……って、一瞬だけそう思ったが。そう思う私に何か、問題でも……?



 しかし……私がどう心変わりしようが、どう言おうが思おうが。娘自体の君主への野望が変わることはなかった。

 最早、君主への野望など微塵も無い私だが。娘が君主になるというのなら、それに協力しようじゃないか!

 ワッハッハッハッハ! はは……は…はぁあ~…。



「……しかし、どうやってクーデターなんぞ成功させる?」


 娘を君主にするとか言いながら、無計画な私である。

 そもそも計画的な奴ならば、君主にするだの何だのと発想・妄想しておる段階の途中で『無理!』と気づき、頓挫するコトだろう? なんてツッコミは有るにせよ、無いにせよ兎も角として。


「大丈夫です。こんなこともあろうかと、家の庭に隠して置きましたから」


 こんなことを予見するとは、恐れいっちゃうが……。


「隠してた、って。何を?」

「自衛隊、最新鋭10式戦車の改良型」


 そう言って、手のひらサイズのリモコンをピッと押した。

 するってぇーと、庭がせり上がり。マジンガーZバリに、戦車が一両姿を現す。


 一体いつの間に、こんなモンをうちの庭先に用意したんだか??


「ローン36回払い。更に改装費に6億。多少値は張りましたが、戦力としては十分であると確信しております」


 そりゃあー、こんな泰平な日本の小さな市のひとつ陥落させる位なら。これだけで十分、って気はするが……。



「改装費って、何を付けたんだぁ?」

と私が聞くと、珍しくも娘は間を置いて。


「秘密です♪」

とだけ会心の微笑を浮かべ答えた。


 この娘がこういった言い方をする時、その対象となる奴は大抵悲惨な目に遭うんだよ。

 経験上だ。

 もっとも、この場合の対象は市長であろうが……。


 私しゃ市長に対し、多少なりの同情を禁じ得ないねーっ。



  ◇ ◇ ◇



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