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瑚島憧護の囚人生活  作者: 水月さなぎ
Storage dive system
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如月結

 特殊公安部所属の奴隷……もといSDストレージダイバーが外出するには、予め届出を出す必要がある。

 まずはトップである沖浦さんこと鬼軍曹の許可。

 これはまあ割と簡単に出してもらえる。

 次に外出時間と帰宅予定時間、そして目的地を書いた書類を提出。

 そこでようやく公安部そのものからの許可を出してもらえる。

 更には逃走防止の為に遠隔操作で高圧電流が流れる首輪を装着。

 ……犬の首輪かよ。

 この首輪は俺が予め申請した目的地から行動を大きく外した場合に警告音が鳴る仕組みになっている。

 この警告を無視し続けると、特殊公安部の刑事……つまり我らが鬼軍曹が遠慮容赦一切の情けをかけずにぽちっとなをしてくれる。

 高圧電流を身体中に流されて強制気絶&強制送還。

 もちろん強制労働中は二度と外出許可なんて下りないし、脱走者として警戒度も跳ね上がる。

 この首輪があるからこそ俺みたいな者でも監視が付くことなく外出を許可してもらえるのだが、しかしせめて腕輪とかに出来なかったのだろうかとため息が出てしまうのは否めない。

 首輪って……。

 あの鬼軍曹の趣味がバリバリ出てる気がする。

 鞭じゃなくて鎖で俺の身体を嬉々として打ち据えそうだ。


「……うう。思い出したくない」

 鬼軍曹の嬉々としたドSスマイルを思い出しそうになって身震いした。

 くわばらくわばらどころじゃない。

 常時エマージェンシーだ。

 警視庁の真下にある地下鉄を利用して三駅ほど電車に揺られる。

 いくらなんでも交通の便が良すぎるだろうと突っ込みを入れたくなるのだが、その辺りは国の特権という奴らしい。

 ごく稀に刑事が捜査中に捕まえた犯人をパトカーではなく地下鉄に乗せてここまで運んでくるという話まであるのだから色々と終わっている。

「まあ犯人を逃がさなければ連行手段までは問わないんだろうけどさぁ」

 警察に捕まるような犯人と同乗する客の気持ちも少しは考慮して欲しいものだ。

 まあ俺には関係ない話だけどさ。

 ちなみに俺は捕まった訳じゃなくて自首しました。

 目的の人物をぶっ殺してそのまま警察に出頭。

 たまたまそこに居合わせた鬼軍曹からにっこりと微笑まれた直後、手錠ではなくハイキックを食らったのは苦い思い出だ。

 後から問い質してみると、

『ムカついたから蹴った』

 とのこと。

 あれでウルトラキャリアの警視正だというのだから、これはもう警察組織そのものに不信感を抱くべきだと俺は主張したいね。


 苦い記憶を思い出しながら電車を降りた俺は、そのまま地上へと上がる。

 駅から十分ほど歩いた場所に大きな病院がある。

 そこが俺の目的地だ。

 受付で面会申請をしてから、七階にある病室へと向かう。

 七〇五三号室。

 ネームプレートは『如月結きさらぎゆい』。

 扉を開けると、彼女一人がベッドに横たわっている。

 艶やかな黒髪はこの二年間で随分と伸びてしまっている。

 しかし整った容姿であるにもかかわらず、彼女が一番魅力を発揮してくれる意志の強い瞳が開くことはない。

「こんにちは、結」

 俺は壁に立て掛けてあったパイプ椅子を開いてそこに腰かける。

 結の髪にそっと触れる。

 頬をそっと撫でる。

 結を少しでも感じたくて。

 結が生きていることを少しでも実感したくて。

 ここにいない結を繋ぎ止めたくて。

 二年間、眠ったままの結を取り戻したいと焦がれながら。


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