変態さんいらっしゃい
再び捜索開始。
箱探しは根気の要る作業だ。
先ほどのように分かりやすい場所に隠されていることもあれば、普通にうろついているだけでは絶対に見つからないような場所に隠されていることもある。
しかしそこは熟練者の腕の見せ所。
というか単なる慣れでしかないのだが。
「……だからってなぁ」
女子トイレを出てから続いてお隣の男子トイレへ突入。
男子トイレには個室が一個しかないので捜索は楽だ。
一列に並ぶ御用達部分は一目見て目的の物がないことは分かる。
産み落とし御用達の個室扉も開けてみるが、やはり目的の物は存在しなかった。
二個目もトイレにあったらどうしようと思っていたので安心して、念のために個室の横にある掃除用具室の扉を開けたのだが……
「………………」
ありましたよ、二個目。
いやいや、何でこんなとこばっかに存在するかな。
変態さんだからという言葉だけで済ませていい問題では無いような気がする。
というかこいつは俺以外が潜っていたら高確率で変態さんの性癖に染まってしまうのではないだろうか。
枝宮さんがそれを見越して俺に潜らせたのか、それとも他のSDがこぞって拒絶して俺にしわ寄せが来たのかは定かではない。
後者だったら猛烈に悲しいし、前者だったら猛烈に切ない。
掃除用具室の排水溝上に置かれていた箱を嫌々な気分で手に取る。
夢の中なので衛生面を気にする必要はないのだが、それでも気分が滅入る。
箱を開けると、今度こそ本命のようだ。
靴と靴下とストッキングがひしめき合っている空間の記憶が流れ込んでくる。
変態さんのお部屋らしき場所と、そしてベッド。
そして肝心の隠し場所……。
毎日奪い取った靴と靴下とストッキングに囲まれながらハアハアする変態さんの記憶映像。
……マジで勘弁してください。
って、ぎゃあああああっ!
こいつノーズブラッドだけじゃなくてコンデスミルクまでぶちまけやがった!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
早く出たい早く出たい早く出たい!
隠し場所も判明したことだし、とっとと浮上してしまおう!
「クローズド!」
SD時間はフルで九十分間だが、それよりも前に目的を達成した場合は任意で浮上することが出来る。
キーワードは『クローズド』。
嫌悪感と共に俺の意識が変態さんの夢から俺の身体へと浮上する。
早く早く早く!
これ以上は一秒たりともこいつの夢にはいたくない!