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瑚島憧護の囚人生活  作者: 水月さなぎ
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鬼軍曹登場

 記憶を消す。

 忌々しいあの男の記憶を。

 なるの言葉が繰り返される。

 永遠に俺を苛む棘のように、その繰り返しは終わることがない。


「………………」

 あの言葉を聞いてから、俺はしばらくの間不眠症になってしまった。

 考えたくもないのに考えてしまうのだ。

 自分がどうしたいのか。

 自分がどうするべきなのかを。

 答えの出ない解答を探し求めて思考迷路に嵌ってしまう。

 だからいつも朝の目覚めは悲惨なぐらい眠いのだ。

 俺の両眼はまるで接着剤を塗りたくられたかのごとく開くことを拒絶している。

「………………」

 今は恐らく午前七時ぐらいだろう。

 今日の仕事は特にない、はずだ。

 少なくとも事前通達はされていない。

 ならばもう少しぐらい惰眠をむさぼることを許してもらっても構わないだろう。

 特殊公安部のSDはメインの仕事以外では雑用任務を言い渡されたりすることもあるのだが、しかしそれも大抵は午後からだ。

 だから寝る。

 あと五時間ぐらいは寝る。

 寝不足が祟って今はちょうどいいぐらいの眠気だから、きっと起きたらすっきりすることだろう。

 というわけでおやすみなさい……


「起きろこの屑」

「っ!」

 薄い掛布団にくるまった俺を容赦なく転がしてくれやがったのは、恐怖の鬼軍曹だった。

 屑って……

 第一声が屑って……

 朝から絶好調だなぁ鬼軍曹。

「痛い……」

 掛布団を勢いよくはぎ取られた所為で俺はベッドから床に転げ落ちてしまったのだが、しかし鬼軍曹殿はそれだけではまだまだ足りないらしい。

 俺の頭におみ足が。

 鬼軍曹のおみ足が乗っています。

 ぐりぐりと。

 踏み踏みと。

 思いっきり踏まれています。

 これがスカートを穿いている女性ならまだ上を眺めることで眼福効果が得られるのだが、しかし目の前にいる鬼軍曹はパンツスーツがフォーマルファッションなのでその恩恵には与れない。

「おはようございます、沖浦さん」

「おはよう」

「……その足をどけてくれると嬉しいんですけど」

「起きるか?」

 つまり起きなければどけてくれないどころかさらなる攻撃を加えるという意思表示だろう。

 もちろん起きます。

「イエッサ―」

 足をどけられてすぐに直立不動で立ち上がる俺は飼い犬としては躾バッチリなのではないだろうか。

 目の前には鬼軍曹もとい特殊公安部長沖浦理花さん。

 枝宮さんと同世代だと聞いているが、しかしやっぱりこの人も二十代後半から三十代前半にしか見えない。

 しかも美人だ。

 だが美人は美人でも迫力美人というやつで、向かい合っているとどうしても気圧されてしまう。

 起き上がった俺はのそのそと着替えを始める。

 女性がいる前で服を脱いだりしたくはないのだが、しかしこの鬼軍曹はだらしない格好で仕事場に来ることを許してくれるような寛大な心の持ち主ではない。

 そして俺が着替えるまで外に出て待っていてくれるような恥じらいや気遣いの心も所有していない。

 結果としてこちらが恥じらいを捨てて妥協することになる。

 上半身裸、ボクサーパンツ一丁の姿まで見られているのだが、今となっては慣れてしまった。

 最初の方は胸板や腹筋あたりをぺたぺたと触られて焦ったが、しかしその目的は実にシンプルであり、『もう少し筋肉を付けた方がいい。さもなくば十年後に嘆かわしい身体になってしまうぞ』とのことだった。

 インドア派には痛いお言葉だ。あれ以来精神的に凹まされた俺は、一日の内十五分間を筋トレに費やしている。

 めたぼは嫌だ。

「で、今日は何の仕事なんですか?」

 着替えが終わったので改めて仕事内容の確認をする。

 どうせいつもの犯罪者SDSなのだろうが、前もってどんな相手なのかを聞いておくことによって心の準備をすることが出来る。

 鬼軍曹が相手だとどうやっても断るという選択肢はないので、せめて精神防御だけでも固めておこうという腹積もりだ。

「今日は尋問だ」

「尋問!?」

 物騒な言葉に思わず震え上がる。

 この人が言うとマジで洒落にならない。

「……間違えた。事情聴取だ」

「どちらにしても物騒ですけど!?」

 少なくとも最近は問題とか起こしてないし。

 鬼軍曹に調教……じゃなくて尋問もとい事情聴取されるような覚えは全くもってないんですけど!

「枝宮なるに会っただろう?」

「会いましたけど……」

 なるほど。

 尋問で、事情聴取ね。

 納得。

「でも仕事関連でヘマはしてないですし、特殊公安部の仕事で彼女がちょっかいかけてきた事はないんでしょう? あくまでも表向きの仕事に妨害をかけているだけで俺達には関係ないと思うんですけど」

「犬が口答えをするな。黙って従っていればそれでいい」

「……わん」

 逆らえません。

 滅茶苦茶怖い。

 俺は泣く泣く部屋から連れ出されるのだった。


ここで一旦終了です。

もう少し載せたかったのですが第一章の文字制限があるので断念しました。

最後に鬼軍曹が登場です。

彼女は憧護をとことんまで虐めてくれます。多分。

六月以降にのんびり再開予定でありますのでよろしくお願いします。

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