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第八話:好感度零の関係

第八話

 晩冬六花先輩と何となく知り合いになったとしても接点は食堂以外に無かった。

 放課後、何かしら接点があれば…たとえば、部活が一緒とかなら会う機会も増えるだろう。帰宅部である俺は(以前所属していた部活はつぶれました)帰るしかない。道草くってもいいけれど、今月はちょっとピンチだ。

『二年…何組だったかしら…夢川冬治。今すぐ生徒会室に来なさい』

「え…」

 何この怒った声は…俺何かしたか。

「夢川…お前、生徒会長と知り合いだったのか」

「え、あ、ああ…この前な…」

 友人である四季達也がため息をついている。

「そうか…それは…いばらの道を進むんだな。おれは、違うな…お前のクラスメート全員がお前を応援しているよ」

 どういう事だとクラスを見回すとサムズアップしまくりの男子生徒がこっちを見ていた。

「どういうことだってばよ」

「君のあだ名はトイだ。頑張れ」

 なんだ、トイって…どうせならトムの方がよかったぜ。

「それはどういう…」

『こらー呼び出ししたんだからクラスメートと話していないでさっさと来なさい』

「何でばれてんだ…」

 晩冬先輩はエスパーか…そう思っていたら後日クラスメートが『全クラスに盗聴器が仕込まれてる』と教えてくれた。エスパーのほうがまだ良かったかも。

「き、来ましたよ」

 生徒会室なんて滅多に来ない(教室二つ分ある広さ)のでちょっと迷ってしまった。でも、『生徒会室』って書かれてたし、間違いはないよなぁ…生徒会役員の人も場所を教えてくれたし…それにしても、この部屋ロッカー多すぎ。

「遅い。謝罪して」

「す、すんません」

「よろしい…じゃあ早速本題に入るわ」

 座りなさいと言われて大人しく椅子に腰かける。

「えー、えと、それで俺は何で呼び出されたんでしょうか」

「手伝ってほしい事があるの」

「そうなんですか」

 どうせやる事が無いから構わない。お人よしと言う性格じゃないけれどもわざわざ放送してまで俺を呼んだのだ…きっと、他の人には頼めない事なのだろう。

「女子更衣室から私の下着をもって来て頂戴」

「このお願いは確実に人選ミス!」

 気付くのが遅かったのかもしれない。これは、異常な人だ。小説とか、アニメとかの創作ものじゃ良くある展開だろう。でも、現実にやるとアウトだ。

「早く、場所は慣れてそうだからわかるわよね?」

「い、いや、慣れてないっす。そんな女子更衣室に忍び込むなんて出来ません」

「そう、じゃあ私も協力するわ」

「無理っす。先輩が行けばいいじゃないですか」

「…ほんとーに無理?」

 俺の話を聞いていないようだった。

「いくらお金積まれても無理ですよ」

 目の前には威圧感出しまくりの生徒会長…後ろには窓ガラス。こうなったら、飛ぶしかないのか。

「…………ふむ、少しは信頼できそうね」

「は」

 いまいち話が掴めていない俺に晩冬先輩は紙を一枚出してきた。

「これはなんですか」

「読めばわかるわ」

 それはそうだと紙に目を落とす。

「どれどれ…晩冬六花の彼氏(仮)になろう。目的は晩冬六花生徒会長にストーカー行為を行う男子生徒を諦めさせる事…これに協力しろって…こと、ですか」

「その通りよ」

「うぇえー嫌ですよ。何でそんな事を…」

「理由はここに書いているわ。どうする?断るの?」

 どうせ、断っても酷い目に遭いそうだ。それに、困っているのは間違いないみたいだし…うーん、やっぱり手伝ってあげたほうがいいかな。

「わかりましたよ。手伝います」

「優柔不断な男。手伝うんなら最初っから言えばいいのに」

「酷い」

「ちなみに、手伝わなかったら女子更衣室に侵入したところを今度の学園朝礼で発表する所だったわ」

 俺はここで自分がどこに入りこんだのか知る羽目になったのだった。


どうも作者の雨月です。二周目が終わったところで挨拶をば。春は王道的展開で行こう、夏はちょっと変化球で行こう、秋は…先行き見えない闇の当てあるのは光か深淵か…冬は上下関係を強くしていこうと思ってます。至って普通の展開になればいいなぁ…。

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